とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

ここは・・・? !

2014-05-14 22:27:37 | 日記
ここは・・・? !





 おい、おい、私をどこへ連れて行こうとするのか。いつの間にか私の体が霧のようになって輪郭がぼやけてきました。墓の中の空き家が住み心地がよかったのに、どこかへ飛んで行きつつありました。おーい、園田はどこに居るんだ。返事してくれ。妻も治子も千恵子も三朗もすべて呼びました。返事はありません。次第に私の体は気体のようになって、自分でもしかと見えなくなったのです。そして、また暗黒の世界の中に落ちて行きました。ブラックホールの中に吸い込まれていくのか、いや、負の重責する世界か。負だって ?  だとしたらとことん戦おう。私の意識はそう覚悟していました。長い、長い暗いトンネルのようなものが私を包んでいました。
 そして、その底へどしんと落ちた感覚が体を捕らえました。ここはどこだ。目を凝らして見ていると、闇の世界の奥から少しずつ光が差してきて、周りのものの輪郭が現れてきました。

 
 ここは、どこだ。誰か答えてくれ。おい、誰かいないのか。ここはどこだ。・・・ん、ここは、いつか来たことが・・・。確かに私が以前見つけたあの空き家の居間でした。

 誰か、誰か居ませんか。・・・何度も問いかけると、奥の部屋から誰かが現れました。

 陶山さん、ここの家の居心地はどうですか。

 あっ、貴方は長柄さんじゃないですか。

 いえ、私は、管理人の新田です。私の名前を忘れたのですか。

 貴方こそ・・・、私は畝本です。

 いや、貴方は陶山さんです。間違いありません。

 そんな・・・。

 ここの合鍵を貴方に渡しました。

 鍵 ?

もう返したはず。

 いや、いや、持ってらっしゃる、そこの内ポケット。

 ポケット ?

そうです。

 ほ、ほんとだ、ありました。

 ということは、貴方は陶山さんに違いありません。

 ご縁市場は・・・。

 ご縁市場 ?

そうです。昔の小学校です。

 廃校になった小学校はありますが、ご縁市場とは言いませんね。

 ここはどこですか。

 長野です。諏訪市です。

 諏訪 ?

諏訪神社のあるところです。

 タケミナカタだ。

 よくご存知ですね。

 奥方はヤサカトメの神です。

 タケミナカタが私を呼んだ・・・。

 面白いことを仰いますね。

 私は出雲から来ました。

 ええっ、貴方は諏訪のお方のはず・・・。

 違います。出雲で死んで、ここに・・・。

 そんな、貴方は、れっきとした諏訪の人です。

 庭に椋の木があるはずです。

 ええ、あります、あります。大変な老木です。推定樹齢一千年とか言います。

 それから、ここの家の家族はどこに・・・。

 それが、死に絶えました。私が、親戚の私が家の管理をしています。ある日、貴方がふらりとやって来て、家を貸せてくれと仰ったんですよ。庭の草の掃除をしていただいて、感謝してます。

 えっ、そ、そうですか。

 とぼけたっていけません。ほら、綺麗になった庭がそこに・・・。・・・私は、動揺する心を支えきれずになっていました。

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