とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

29 光のせめぎ合い

2015-06-01 00:41:26 | 日記


 光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、光の束、ヒカリノタバ・・・。


 海中で、数え切れない光の束のせめぎ合いが起こりました。私は、いや、ワタシは、その中で、束と束の間で、喘いでいました。

 「ああっ、ワタシは弾かれる」

 確かに、ワタシは、その光の中で、光たりえていませんでした。では、闇、ヤミ ? そう呼べるのかも私にはわかりませんでした。
 ただ、どこかへ堕ちて行く感覚だけがワタシにありました。どこへ ? 海の底の方の遥かな地平のようなところでした。

 「ああっ、ワタシは、もう人間ではないかも知れない」

 そう思った瞬間、ワタシをすくい上げる大きな力が加わりました。ワタシは、果てしない地上に叩き上げられました。

 「ここはどこだ ?」

ワタシは、辺りを見回しました。

 「陸には違いない。しかし、もと居たところとは全然違う。しかも、細長い物体になっている。おや、これは何だ。鉄線 ? いや、触るとピリピリする。電線だ。・・・ワタシは電柱になった。ははっ、面白い。・・・いや、悲しいと言った方がいいのか・・・」

 ワタシには、そういう判断ができなくなっていました。

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