とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

翼をください

2012-02-02 23:09:39 | 日記
翼をください




William-Adolphe_Bouguereau_(1825-1905)_-_Song_of_the_Angels_(1881)

 私は子どものころ空を飛んだ夢を何度も見た。
 翼、ツバサ。いや、そのときを思い出してみても背中に翼は生えていなかった。ひたすら腕をバタバタさせていた。気流に乗ると、腕を激しく動かさなくても高く飛べた。鳥の目で眼下に広がる景色を楽しんだ。風景がカラーのときもあった。そのときの快感ははっきりと体が覚えている。しかし、年をとるに従ってそういう夢を見なくなった。代わりに悪夢というか、何かでしくじった夢を多く見るようになった。
 天使のような翼があればどこへでも行ける。どこへ行きたいのか。天国?? まさか。私は天国に行けるかどうかわからない。現実的な問題として、危機から脱出することができる。生き延びることができる。
 空き家、廃屋願望から飛翔願望へと方向転換したの? そうかもしれない。誰かの唄う「翼をください」を聴いていて、そういう願望が湧きあがってきたのである。飛行機が苦手となった私は外国へも行けない。妻との海外旅行ができない。娘に会いにもいけない。ああ、翼がほしい。

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