医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

他人を信頼する事に関係する物質

2005年06月03日 | 総合
今日付けのNatureに発表されました。(Nature. 2005;435:673)
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★☆☆☆☆)

オキシトシンという体内に通常存在する物質の鼻腔内噴霧をうけた29人に投資ゲームをしてもらったところ、噴霧をうけていない者に較べて匿名の委託人に預ける金額が多かったそうです。そして委託人を人ではなくコンピューターに変えた場合は預ける金額は噴霧をうけていない者と差はありませんでした。これらの結果から、オキシトシンという物質には人間関係における信頼を高める作用がある事がわかりました。そしてコンピューターが相手の場合には預ける金額が多くならない事は、単に危険に対する認識が甘くなったためではないとも結論しています。

オキシトシンは脳内の視床下部というところから分泌されるもので、母乳の分泌や分娩の際の子宮の収縮に関与していますが、同時に以前から動物におけるつがいや母子関係の形成、異性との結びつきに関与している事が指摘されていました。人間でそれらの社会的な行動に関与している事が認められたのはこの報告が初めてです。また、ウイリアムズ症候群とよばれる遺伝子疾患の子供たちが他人に恐れも抱かずに近づくのはオキシトシンの過剰分泌に関与しているのではないかとも推測しています。報告では、選挙の候補者の演説中に聴衆にオキシトシンを噴霧することなどの悪用例もあげています。

対象人数が29人で「Nature」に掲載されてしまうのは、研究の独創性とアイデアの勝利だという気がします。
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