医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

75歳以上の窓口負担が1割から2割へ増えても健康状態は悪化しない

2021年05月16日 | 雑感
先日こんな報道がありました。

以下、共同通信より引用
衆院厚生労働委員会は2021年5月7日、一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法案について、自民、公明両党と日本維新の会、国民民主党の賛成多数で可決した。立憲民主、共産両党は、窓口での支払いが増えると高齢者が受診を控え体調を損ねるとして反対した。
制度改革の目的は、団塊の世代が2022年から75歳以上になり始め膨張する医療費を賄うため。収入のある高齢者に窓口での支払い増を求めることで、医療費を保険料で支える現役世代の負担増を抑える狙い。
自民は同日午前の委員会理事会で採決を提案したが、立民が難色を示し折り合わなかった。自民は十分な審議時間を確保できたとして、午後の質疑終了後に採決に踏み切った。立民、共産両党の議員が「強行採決だ」と渡嘉敷奈緒美委員長(自民)に詰め寄り、怒号が飛び交う中で可決された。立民は、1割負担を維持する代わりに、75歳以上の高所得者の保険料上限を引き上げる対案を提出している。
以上、共同通信より引用


以前、70~74歳の窓口負担が1割から2割へ増えても健康状態は悪化しない研究を紹介しました。

以下は日本経済新聞からの引用です。
窓口負担増の影響を明らかにするには、窓口負担「のみ」が異なるグループを見つけて、受診行動などを比較する必要がある。分析手法については、重岡仁・カナダ・サイモンフレーザー大准教授の論文などを参考にしている。

まず70~74歳の窓口負担の軽減措置見直しで、44年4月以降に生まれた人は2割負担となったのに対し、同年3月以前に生まれた人は1割負担に据え置かれている。このため両グループの窓口負担割合は異なる。次に両グループは、年齢がほぼ一緒であるため、健康状態や就業状態が平均的にはほぼ変わらないとみられる。つまり両グループでは窓口負担「のみ」が異なると考えてよさそうだ。従って、もし両グループを比較して受診行動や健康状態が異なっていれば、それは窓口負担が1割から2割に引き上げられた影響であると結論付けられる。

図1は、人口当たりの外来患者数の対数(縦軸)を1947年3月生まれから41年4月生まれまでの生年月(横軸)に対してプロットしたものだ。生年月が早い、すなわち年齢が高いと外来患者数が増えるという右上がりの関係になるのは自然なことだ。だが点線の前後、すなわち1割負担の44年3月生まれに比べて、2割負担の同年4月生まれの外来患者数が急に減っていることがみてとれる。この減少分が、窓口負担の1割から2割への引き上げの影響を表している。

次に健康状態への影響はどうだろうか。分析には主に厚労省の2016年「国民生活基礎調査」と17年「人口動態調査」を用いた。窓口負担増からそれぞれ約2年2カ月後、最大約3年8カ月後の影響をみている。死亡率や現在の健康状態に関する自己評価など、できるだけ幅広い健康状態に関連する指標を用いて分析した結果、いずれの指標でも影響は確認されなかった。
以上、日本経済新聞より引用

窓口の負担の増加額が適切であると、高齢者はそれだけ健康に留意するためか、もともと健康維持には関係がない受診が多かったのか、理由は色々とあるだろうが、医療機関の窓口での患者の負担額が増加して受診数が減少しても、健康状態は悪化しないのです。

科学的に分析すると立憲民主、共産両党の主張は誤りです。

私は個人的には、日本の医療の持続可能性のためにも、将来の日本を担う若者のために財源を少しでも残す意味でも、70歳~74歳の医療費の負担は3割に引き上げて欲しいです。またそれは、医療機関の過剰な医療を抑制する意味でもあります。

受診数では相関の切片と傾きを比較し、健康状態では相関関係を二次関数でフィットさせるという手法でした。
別所俊一郎先生(東京大学准教授)、古村典洋先生(京都大学特定准教授)、素晴らしい分析をありがとうございました。

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