霜月 亜紀子
葛枯るる幾谷越えてクルス山
秋水を盾とめぐらし耶蘇の谷
身にしむや小さきイエスに釘著く
独活苗に新藁厚き耶蘇の邑
クルス山落葉つもりてやはらかし
蛇瓜の身ののびきつてぶらさがる
白鳥の桂もみぢの香に寝まる
武蔵野やブロンズ像も朽葉色
槻落葉昭和と共に象老いて
暖かき冬に入りけり吉祥寺
コーラスの一音はづす風邪心地
果てし頃晴るる夜学の文化祭
霜月の愚かにぬくく過ぎにけり
青き実に鵯籠城の楠大樹
商戦のちらし戸ごとに時雨けり
秋夕焼け我が影のかく老いにける
真綿被て遠には行かぬ雪ばんば