富士屋ホテル本館。神奈川県箱根町宮ノ下
2014(平成26)年6月9日
富士屋ホテルの富士屋ホテルのHPや『近代建築ガイドブック[関東編]』(東京建築探偵団著、鹿島出版会、昭和57年、2300円)よると、明治11年(1878年)7月、外国人向けの日本で初めての本格的なリゾートホテルとして開業した。500年もの歴史を持っていた温泉旅館「藤屋」を買収してのことらしい。明治16年の宮ノ下大火により、創建時の建物は焼失、翌年、12室木造平屋の洋館「アイリー」(”鷹の巣“の意)を建てて再発足して以降、次々と増築を重ねて現在の富士屋ホテルの建築群が完成した。
本館は明治24年(1891)に竣工した木造2階建て。富士屋ホテル独特の「全体に洋風の意匠を基調にしながら内外の要所に和風の意匠を加味した特異な建物」(文化遺産オンライン)。『じゃらんカメラ>富士屋ホテル』によると、設計・施工=河原兵次郎、河原徳次郎。
富士屋ホテル事務室。箱根町宮ノ下。2014(平成26)年6月9日
富士屋ホテルのHPの「ホテルヒストリー」に「1923(大正12)年:箱根ホテル営業開始。まもなく関東大震災で全壊。富士屋ホテルも被害を受け、翌年夏頃まで営業を休止/台所跡の敷地に二階建一棟(現・本館北側突出部)新築。階上を客室、階下を事務室、社員食堂とする」とある建物かと思う。その記述を見るまでは明治19年に建てられた「ハーミテイジ」かと疑った。アイリーはフォレスト館の裏に移されたようだが、ハーミテイジはこれという情報が見つからない。あるいは取り壊されたか?
2017.05.29追記。『かながわの近代建築』より
『はぐれ鳥うろちょろ記』によれば、ハーミテイジは昭和60年頃取り壊されたという。アイリーとハーミテイジの写真は公開されている写真が少ないようである。『かながわの近代建築』(河合正一著、神奈川合同出版>かもめ文庫、昭和58年、630円)にそれが載っているので紹介する。また、本文にあるアイリーとハーミテージの記述は以下の通り。
さて、今日の富士屋ホテルの基となった建物は、明治十七年、十三客室・木造平屋建て「アイリー」、翌十八年、十四室の日本館棟と食堂・バー・調理室一棟が建てられ、木造二階建て客室十室の「ハーミテージ」が同十九年に造られた。
(中略)
初期のアイリー、ハーミテージは、老巧化したため使用を止めている。
*アイリーが「木造平屋建て」となっているが、1915(大正4)年に2階建てに改修された。