
神戸市立博物館。兵庫県神戸市中央区京町24。1992(平成4)年8月5日
旧居留地のほぼ中心にある神戸市立博物館は、1935(昭和10)年に横浜正金銀行神戸支店として建てられた。設計=桜井建築事務所(桜井小太郎)、施行=竹中工務店、鉄筋コンクリート造3階建。『近代建築ガイドブック[関西編]』(昭和59年、鹿島出版会、2800円)には、その外観の特徴が次のように記されている。
「鉄筋コンクリート造の上に、御影石張仕上げで、建物の四隅をルスチカ仕上げとし、その間を東正面にフルーティング付のドリス式エンゲージド・コラム、南面はドリス式のピラスターが1階から3階まで、それぞれ6本並び、その上にギリシャ神殿風のエンタプレチャーが廻っているさまは見事である。これらの柱の間に大きな縦長窓が造りこまれ、石造の建物特有の重苦しさをやわらげている。」
ぼくには聞き慣れない用語がでてくる。ルスチカ(ルスティカ)=粗面積み。石造建築で,壁の表面を滑らかにせず,目地(継目)を際だたせたり,石材面を突出させたり,凹凸を目だたせて,荒々しく力強い表情をもたせる技法。フルーティング=溝彫り。古代建築において、柱身に縦方向に刻まれた溝。柱の垂直感を強める。エンゲージド・コラム=壁付けの柱。柱の半分以上が壁に入っている。ピラスター=付け柱。エンタプレチュアー(エンタブラチュア)=円柱によって支えられる水平な部位。
建築時期が遅いため、1916(大正5)年建築の「第一勧銀神戸支店」(栄町3、1995年解体)と比べると、だいぶ簡略化されているようだが、古典様式に特徴的な堂々とした感じは実に存在感がある。
写真右の「オリエンタルホテル」は1964年(昭和39年)に建った神戸を代表するホテル。1870年(明治3年)に創業以来、ホテルの所有者も場所も何度か変ったが、4代目の建物。1995年(平成7年)の阪神淡路大震災で被害を受け休業していたが、その跡地に「神戸旧居留地25番館」(2010年1月竣工)が建つとそこで再開した。ただしそのホテルは名前だけを継承したものという。結局、オリエンタルホテルは阪神淡路大震災のため廃業したと言えそうだ。

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