ぼくの近代建築コレクション
東京の都心と下町を中心に、戦前に建てられた古い建物の写真を投稿していきます。
 





近三ビル。中央区日本橋室町4-5(現4-1)
上:1986(昭和61)年2月16日
左:1985(昭和60)年8月4日

近三(きんさん)ビルは村野藤吾が設計し、1931(昭和6)年に竣工したビル。施工は竹中工務店、竣工時はRC造7階建地下1建、現在のビルの前面約半分の部分だった。呉服問屋だった森五商店の社屋として建てられた。
村野藤吾は戦後の活躍が有名だと思うが、1918年に渡辺節建築事務所に入って活動し、1929年に独立して最初の作品が金三ビルである。村野藤吾の重要な作品になるのは当然だが、建築史の上からも重要な建物である。

三幸エステート>都市の記憶>近三ビルヂング』、『金三ビル/金三商事』、『新建築2018.4』などを参照すると、竣工時は「近三ビルヂング」といったらしい。「森五ビル」の名称は通称ということになる。
「森五商店」とは元禄年間に近江八幡商人に奉公していた森五郎兵衛が独立してつけた店名。1714(正徳4)年に江戸に出店、1745(延享5)年に屋号を近江屋三左衛門とする。これが「近三」の由来。『中央区沿革図集[日本橋編]』(中央区立図書館発行)に収録されている「大正元年日本橋区地籍地図」に、同じ場所(当時は本石町二丁目)に「森近江屋呉服店」と記載がある。

1956(昭和31)年10月、北側に8階地下1階の新館を増築。1959(昭和34)年8月、南側の旧館に8階と塔屋3階を増築した。1965(昭和40)年には内部レイアウトの大規模な変更、そして1992(平成4)年には外壁タイルの張り替えをしている。
こうして何度も改修しながら、歴史的な建築物を現役のオフィスビルとして使っているのである。

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