あすかのマンダラ池奮戦記・9
『決戦ミズホノサト!』
決戦を前に、イケスミの体は、もう半分近く実体が無くなっていた……。
と、この時、上手の藪から、あすかが飛び出してくる。
手には件のメモリーカードとコントローラーを握って!
「言ったじゃないか、神を信じろって!」
「あすか!?」
「あすかさん!?」
「今の攻撃は威力偵察なんかじゃない。本格的な攻撃の陽動作戦に過ぎない。主力は南よ! 南に何か途方もなく禍々しい化け物が潜んでここを狙っている。南東の獣道を通っても、ひしひしと感じた!」
「ほんとうか!?」
「言うとおりよ。北に気をとられすぎていた……南に化け物が……今、動き始めた!」
南の山々が、生き物のように蠢動する。
「話は聞いた。消えかかっているんでしょ、イケスミさん。もっかいやろうよ。ほら、コントローラーとメモリーカード!」
「いいのあすか? 今度は命にかかわるぞ……?」
「あたし賢くなったの。二人を見殺しにしても、あの南の化け物は、あたしを認識している。ここをあっさりかたずけたあと、きっとあたしを殺しに来る。知りすぎてしまったかから。そのためには、もっかい依代になって戦ったほうが生き残れる可能性が高い。そう計算できるほどにね……って理屈つけたら納得してくれる?」
「アスカさん……」
「さあ、コントローラーを持って! あたしはメモリーカードを……え!?」
「どうかしたのか?」
「これ、ドラクエⅧ「空と海と呪われし姫君」のメモリーカード……鞄の中でごちゃになったんだ……これは、ラチェットアンドクランクⅢ……ファイナルファンタジー……メタルギアソリッドスリー
……おっかしいなあ……」
「おまえ、度はずれたゲーマーだな……」
「だめ、もう、間に合わない!」
ゴジラの咆哮のような禍つ神の叫び声がこだまする。
「あれ、あいつよ南側に潜んでいた奴!」
「並みの禍つ神ではない……いずれの荒ぶる神か?」
「……あれ、轟八幡だよ。ほら、あの頭の鳥居」
「え、この国の二ノ宮の……(神の咆哮)なんとあさましいお姿に……」
「人間が、よってたかっておもちゃにしちまったんだ。駐車場の経営から、貸しビル、株の売買にスーパーの経営、観光会社に、このごろじゃ専門学校から塾の経営まで手を出しているって話だよ」
「あ、お母さんの言ってた轟塾!?」
「この国の人間は、思いやるって心を失ってしまったんだ。人に対しても、神さまに対しても、自然や、何に対しても……祖先から受け継いだ夢も誇りも恐れも忘れ果てた、アホンダラに!」
「感想言ってる場合じゃないわよ」
「ね、あたしにも何かやらせて! こう持つの?」
百連発の大筒を両脇に抱える。まるで土管を抱えたのび太のようなあすか。
「だめ、普通の人間が持っていたって、ただの竹筒……」
「そんなのやってみなきゃ……」
引き金を引いた気持ちになった瞬間。両脇から百発ずつの鬼の殺気のミサイルが飛び出す。反動でニ回転半ほどひっくりかえったあすか。
「あすか……おまえって……」
「動きが止まった……」
「ちょっと驚いただけさ、じきに……ほら動き出した」
禍つ神の咆哮と地響きに、あすかは立っているのが精一杯。
「くそ!」
「撃つしかないわ、最後まで!」
「撃て撃て撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!」
三人しばらく撃ちまくる、地響きしだいに近くなる!
「弾が少なくなってきた……」
「そろそろ桔梗とあすかちゃんを解放してあげたほうが……」
「やだ! ここで逃げんのはやだ!」
「あたしたちは踏まれても死なないけど、あんたたちは死ぬんだよ!」
「桔梗も離れようとしない!」
「やだ! もうわけわかんないけど、やだ!!」
この時、大きな白い矢がとんできて、轟八幡の胸板を射抜く。大音響とともに轟八幡が倒れる。
「オオガミさまだ! オオガミさまがもどられた!」
「まぶしい!」
「笠松山の向こうから矢を射られたんだ!」
「まぶしくて……」
「間もなく、笠松山を越えられる。それまでに、とどめをさそう!」
「ああ、残った雑魚の禍つ神どももな」
「いくよ!」
「おお!」
「あ、ちょっと待って、あたしも……!」
あすかと、二柱の神は、ミズホノサトを目指した……!
『決戦ミズホノサト!』

決戦を前に、イケスミの体は、もう半分近く実体が無くなっていた……。
と、この時、上手の藪から、あすかが飛び出してくる。
手には件のメモリーカードとコントローラーを握って!
「言ったじゃないか、神を信じろって!」
「あすか!?」
「あすかさん!?」
「今の攻撃は威力偵察なんかじゃない。本格的な攻撃の陽動作戦に過ぎない。主力は南よ! 南に何か途方もなく禍々しい化け物が潜んでここを狙っている。南東の獣道を通っても、ひしひしと感じた!」
「ほんとうか!?」
「言うとおりよ。北に気をとられすぎていた……南に化け物が……今、動き始めた!」
南の山々が、生き物のように蠢動する。
「話は聞いた。消えかかっているんでしょ、イケスミさん。もっかいやろうよ。ほら、コントローラーとメモリーカード!」
「いいのあすか? 今度は命にかかわるぞ……?」
「あたし賢くなったの。二人を見殺しにしても、あの南の化け物は、あたしを認識している。ここをあっさりかたずけたあと、きっとあたしを殺しに来る。知りすぎてしまったかから。そのためには、もっかい依代になって戦ったほうが生き残れる可能性が高い。そう計算できるほどにね……って理屈つけたら納得してくれる?」
「アスカさん……」
「さあ、コントローラーを持って! あたしはメモリーカードを……え!?」
「どうかしたのか?」
「これ、ドラクエⅧ「空と海と呪われし姫君」のメモリーカード……鞄の中でごちゃになったんだ……これは、ラチェットアンドクランクⅢ……ファイナルファンタジー……メタルギアソリッドスリー
……おっかしいなあ……」
「おまえ、度はずれたゲーマーだな……」
「だめ、もう、間に合わない!」
ゴジラの咆哮のような禍つ神の叫び声がこだまする。
「あれ、あいつよ南側に潜んでいた奴!」
「並みの禍つ神ではない……いずれの荒ぶる神か?」
「……あれ、轟八幡だよ。ほら、あの頭の鳥居」
「え、この国の二ノ宮の……(神の咆哮)なんとあさましいお姿に……」
「人間が、よってたかっておもちゃにしちまったんだ。駐車場の経営から、貸しビル、株の売買にスーパーの経営、観光会社に、このごろじゃ専門学校から塾の経営まで手を出しているって話だよ」
「あ、お母さんの言ってた轟塾!?」
「この国の人間は、思いやるって心を失ってしまったんだ。人に対しても、神さまに対しても、自然や、何に対しても……祖先から受け継いだ夢も誇りも恐れも忘れ果てた、アホンダラに!」
「感想言ってる場合じゃないわよ」
「ね、あたしにも何かやらせて! こう持つの?」
百連発の大筒を両脇に抱える。まるで土管を抱えたのび太のようなあすか。
「だめ、普通の人間が持っていたって、ただの竹筒……」
「そんなのやってみなきゃ……」
引き金を引いた気持ちになった瞬間。両脇から百発ずつの鬼の殺気のミサイルが飛び出す。反動でニ回転半ほどひっくりかえったあすか。
「あすか……おまえって……」
「動きが止まった……」
「ちょっと驚いただけさ、じきに……ほら動き出した」
禍つ神の咆哮と地響きに、あすかは立っているのが精一杯。
「くそ!」
「撃つしかないわ、最後まで!」
「撃て撃て撃て! 撃って撃って撃ちまくれ!」
三人しばらく撃ちまくる、地響きしだいに近くなる!
「弾が少なくなってきた……」
「そろそろ桔梗とあすかちゃんを解放してあげたほうが……」
「やだ! ここで逃げんのはやだ!」
「あたしたちは踏まれても死なないけど、あんたたちは死ぬんだよ!」
「桔梗も離れようとしない!」
「やだ! もうわけわかんないけど、やだ!!」
この時、大きな白い矢がとんできて、轟八幡の胸板を射抜く。大音響とともに轟八幡が倒れる。
「オオガミさまだ! オオガミさまがもどられた!」
「まぶしい!」
「笠松山の向こうから矢を射られたんだ!」
「まぶしくて……」
「間もなく、笠松山を越えられる。それまでに、とどめをさそう!」
「ああ、残った雑魚の禍つ神どももな」
「いくよ!」
「おお!」
「あ、ちょっと待って、あたしも……!」
あすかと、二柱の神は、ミズホノサトを目指した……!