goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ジジ・ラモローゾ:013『蕾』

2020-02-08 11:15:38 | 小説5

ジジ・ラモローゾ:013

『蕾』  

 

 

 ジャノメエリカの蕾が膨らんできた。

 

「お祖母ちゃん! お祖母ちゃん!」

 お祖母ちゃんを呼ぶと、膝を庇いながらも急ぎ足で来てくれる。あ、ごめんと思った時にはドアを開けてる。わたしの声で『何かいいことがあったんだ』と思っているお祖母ちゃんの目は、もうニコニコと笑ってる。だから『急がせてごめん』を言いそびれた。

「ほらほら、蕾が膨らんできたよ!」

 お祖母ちゃんと顔を並べてジャノメエリカを観察……お祖母ちゃんの温もりを頬っぺたに感じる。嬉しい。

 満員電車とかで人の体温を感じると気持ちが悪い。

 授業中に先生が回ってきて、わたしが何かにつっかえていたりすると五十センチくらいに近づいてくることがある。むろん指導をするためだから文句なんか言わないんだけど、その近さで先生の体温を感じるのは気持ちが悪い。当然、その空間の空気を一緒に吸ってるわけだから、先生が吐いた空気を吸うワケ。短時間なら息を詰める。だって、先生がわたしの体の中に入って来るみたいで、どうしようもなく気持ち悪いから。

 ちょっと長くなったりしたら、あとで深呼吸を何度もして、新しい空気で肺を清める。

「そうね、少しだけ膨らんできたね」

 そう言って、わたしの顔を見る。その時に、ほんの0,5秒お祖母ちゃんはわたしの胸を見た(`#Д#´)!

「あ、あ……(`#Д#´)」

「セーターほころんでる。脱ぎなさい、繕ってあげるから」

「あ、そかそか(#*´ω`*#)」

「ん?」

「あ、なんでもないよ」

 繕ってもらう間、パソコンを見る。

 

 

『ジージのファイル』

 ジージは運動が苦手だった。だから、高校の最後の授業が終わった時『もうこれで一生体育の授業を受けなくて済む!』と喜んだ。

 教師になってからも、ジージは社会科だから関係ないと思っていた。

 でもね、担任を持っているとそうもいかないんだ。

 45人も生徒がいると、運動が嫌いな奴が居て体育祭を休むやつが出てくるんだよ。特にリレーとかに当ってるとズルをかますやつがね。

 そう言う時は、クラスの他の生徒に「代わりに走ってくれないか?」と頼むんだ。

 でもね、リレーは嫌われる。仕方がないからジージが走るんだよ。だれか走らないと穴が出来ちゃうからね。だれも文句を言わない、言わないどころか喜んでる。

 50メートルと200メートルに休まれた時は大変だったよ。バトンを100メートルに渡したら、すぐに次のリレー地点へ行って、100の生徒からバトンをもらって走るんだ。

 足がもつれて本部テント前(校長とかエライサンのテント)でズッコケて、みんなに笑われた。

 あくる日授業に行ったら黒板にこけた時の様子がマンガで書かれていた。

 生徒と一緒になってワハハハと笑うんだ。笑って、それから写真に撮る。描いたやつと、それからクラス全員と。なんか、面白くなってきた(^▽^)/

 でも、それって、授業だけ教えてるクラスでね。

 自分のクラスは……ま、機会があったら書くよ。

 

 繕ってもらったセーターを着てパンを買いに行く。サンドイッチを作ろうと思ってね。

 パン屋さんの事も書きたいんだけど、それは、また今度ね。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ここは世田谷豪徳寺 5話《レイア姫のパンツ》

2020-02-08 06:07:48 | 小説3
ここは世田谷豪徳寺・5
《レイア姫のパンツ》   
 
 
 

「ねえ、こんなドジな子がいるよ」
 四限が終わって佐久間まくさが、スマホ片手にぐずぐずしているあたしの席に来た。
 
 う……!
 
 かろうじて悲鳴にはならなかった。
「アクシデントなんだろうけど、警戒心ってか、用心しなさすぎ、この子。同じ帝都の子として恥ずかしい」
 スマホには、ガードマンの誘導灯にスカートをひっかけられ、派手にめくれて瞬間おパンツがむき出しになった写真が載っていた。後ろ姿なので、制服から学校が分かるだけだった。
 
 これは、あたしだ……!
 
「どうかしたん? さくら、顔が青いで」
「なんでもないよ!」
「あら、こんどは赤くなった……」
 恵里奈まで寄ってきた。
「これ……」
 まくさがスマホの画面を恵里奈に見せた。
「あらら……」
「学校のサイトで、画像出したら、これがトップに出てきたの」
 あたしは、ゆでだこみたくなった。
「ちょっとちっこくて、わからんなあ」
 恵里奈は、なんとタブレットを持ち出した。バレー部なんで得点やらフォーメーションなんかの記録用に持っているのだ。
「あ、この子のパンツ、レイア姫だ!」
 恵里奈は、人差し指と親指で拡大して確認した。
「レイア姫?」
「スターウォーズに出てくるお姫さま……ん……豪徳寺一丁目」
 恵里奈は電柱の住居表示を拡大……なんかすんなよ!
「さくら、豪徳寺だったわよね……?」
「ひょっとして………………」
 
「「さくらあ!?」」
 
 あたしは、赤のまま壊れた信号みたいになった。
 
「さくらの油断もあるけど、こんなシャメ撮るやつ最低や!」
 恵里奈は憤慨して、タブレットを操作した。
「なにやってんの?」
 まくさが覗き込んだ。
「削除要請や。友だちとしても、帝都の生徒としても許されへん!」
「ごめん……」
「さくらのこととちゃうよ。この写真撮った奴!」
「すぐに削除できるの?」
「ちょっと時間はかかるやろけど……拡散してんとええねんけどな」
「「で、さくら……」」
 
 尋問みたく、親友二人に事情を聞かれた。

 まず、あたしの不用心さを指摘された。水道工事中とは言え、一メートル半は道幅が残っている。わざわざ、ガードマンのニイチャンの側を通ったうかつさ。それから、三十メートルも前からガードマンのニイチャンを見つめた神経質さ。
「さくらは、どっちか言うとカイラシイ子やねんさかい。そんな子が帝都の制服で見つめられたら、若いニイチャンやったら緊張すんで」
 それから、薄着に感心された。
「この寒いのに、スカートの下パンツだけ?」
「モコモコすんのやだから」
 あたしは、暑さには弱いが寒さには強い。それが裏目に出た。
「そやけど、さくらて、かたちのええお尻してんなあ。一回比べあいしょうか!?」
 そう言うと、バレーのセッターは部活の準備に走っていった。
 
 まくさと二人で食堂に向かう
 
「……ねえ、このクリスマス、温泉でも行かない?」
 まくさが、食堂のラーメンをすすり、スマホに視線を落として提案してきた。
「そんなお金ないよ」
「交通費だけでいいのよ」
「え、なんで?」
「お父さんの会社のなんだけど、箱根の保養所のクーポンが残ってんの。いまお父さんがメール打ってきた」
「あ、それなら行く行く!」
 で、クリスマスの予定が瞬間で決まってしまった。もう例のシャメのことは忘れていた。
 しかし、現実は、まだ序の口でしかなかったのよね……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・34「部室棟が見える窓」

2020-02-08 06:06:57 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)34
「部室棟が見える窓」                       




 へーーここがタコ部屋やねんなあーー!

「よかったら入りませんか」
 千歳が勧めると「うん、ありがとう! よっこらせ!」と、ミリーは窓から入って来た。
「あ、ごめん!」
「わ! あわわわ……」
 間近に着地したミリーは、狭い床にタタラを踏んで、延ばした両手で千歳の胸を掴んでしまった。
「いや、ほんまにごめん!」
「あ、あ、ごめんはいいですから、手をど、ど、どけてください」
「ごめんごめん!」
 慌ててどけた手を、握ったり開いたりするミリー。
「自分以外の女の子のオッパイ初めて触った……アハハ、なんやったら、うちのオッパイ触ってみる?」
 胸を突きだしたミリーに、両手をブンブン振ってイラナイイラナイをする千歳。
「今からお茶にするから、空いてるとこ座れや」
「うん、おおきに!」
「えと、紅茶とコーヒーどちらにします?」
「うちはコーヒー、あったらミルクも砂糖も」
「おれもコーヒー」
「あたしは紅茶」
「はい、じゃ、これお茶うけです」
 
 千歳は器用に身体を捻って、背もたれの後ろからお菓子の袋を三つばかり取り出した。

「千歳の車いすって、いろんなものが付いてるのねえ」
「電動アシストにしたんで、ちょっと余裕なんです」
「えー、そうやったんか、気いつけへんかった」
「へー、どれどれ」
「あ、やだ、じろじろ見ないでくださいよー」
「そだね、ここ狭いから、今度、広いところで見せてよね!」
「え、あ、えと……」
「千歳、お湯が噴いてる!」
「わ、あわわわ」

 いつのまにか、狭さが距離の近さになり嬉しくなってきた。

「ここから、部室棟がよう見えるんやねえ……」
 コーヒーカップを両手で包むようにして、ミリーが呟いた。
「部室棟たすかってよかったねえ」
「ほんまや、こんどばっかりはアカンかと思たもんな」
「汚い建物としか思ってなかったけど、すごいものだったのね」
「わたしもビックリです、なんかの縁でしょうねえ、ひいお祖父さまの設計だなんてね……」
「補強すんねんやろか、解体修理するんやろか」
「ここから、ゆっくりと見届けですねー」
 
 そこまで聞いて、ミリーが振り返った。

「ね、うち、演劇部に入れてくれへんやろか?」

「「「え!?」」」

「部室棟が、どないなっていくか、ここから見てみとなってきたよって」

「お、おう!」
「いいじゃん!」
「ぜひとも!」

 演劇部が四人になった……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不思議の国のアリス・25『番外編1・天保山山岳救助隊・1』

2020-02-08 05:53:25 | 不思議の国のアリス
不思議の国のアリス
『番外編1・天保山山岳救助隊・1』        


 
 アリスは、この秋から大学生になった。そして早々に問題を抱えてしまった。

 期待して受けた哲学の先生が鬱病で講義に出てこられなくなったのである。最初の講義で女性のアシスタントが事情だけ説明して「当分メドがたちません」と、お手上げのジェスチャーをして行ってしまった。

 このままでは、自分の大学生活の始まりにケチがつくと思い、憤慨半分、興味半分で、その哲学のクラーク先生の家を訪ねた。

「訪ねてきてくれたのは嬉しいが、君にはボクの悩みは解消できないよ」
「先生は、いったい何に悩んでいるんですか?」
 アリスは、ダージリンの紅茶を半分飲んだところで聞いてみた。
「……本質的には一つだが、具象的には二つある」
 さすがに哲学の先生だけあって、言うことが哲学的だった。

 クラーク先生の悩みを聞いて、さすがにアリスは、答が出なかった。

 先生は、その専門とする東洋哲学の本質はゼロにあると思っていた。そのゼロが宗教化したものが仏教であり、小乗仏教では大日如来をもって、その本質であるとし。大乗仏教では往生(死ぬこと)でゼロ、つまり西方浄土にいけるとしている。
 クラーク先生は、主に小乗仏教の研究をテーマとしてきた。その小乗仏教の最高の到達点である解脱が分からなくなってきた。これが一つ。

 もう一つは、趣味の登山である。昨年先生はチョモランマの征服に成功した。つまり、世界最高の山を登ってしまったのである。でも、思っていたような達成感は無かった。その時、先生は感じたのである。趣味と思っていたが、自分は山に登ることによって、解脱の境地に至ろうとしていた。
 そのことに気づいたとき、自信を喪失してしまった。けっきょく自分は、知識としてしか哲学を会得していない、初心者とも言えないニセモノ学者ではないかと。

 アリスは、思いあまって隣のTANAKAさんのオバアチャンに相談しに行った。

「なんや、むつかしいことは、よう分からへんけど、その先生は、比叡山のぼんさんみたいなことをしてはったんやな。うちは浄土真宗やよってに、死んだら御浄土いうことで納得してるけどな。う~ん、これは。アリスが持ち込んできた問題で、いっちゃん難しいなあ」
 ちなみにTANAKAさんのオバアチャンは大阪出身の一世なので、オバアチャンから日本語を習ったアリスも、すごい大阪弁を喋る。
「オバアチャンでもあかんか……しゃあないなあ」

 半ばあきらめかけていたころに、オバアチャンが、こう言った。

「ウチが好きやった役者さんに森重久弥いう人がおってな」
「モリシゲヒサヤ?」
「ああ、アリスちゃんには分からんかいなあ」
「そのオジイサンやったら、とうに亡くなってはるけど、宮崎アニメの『もののけ姫』で、オオコトヌシの声やってはるよ」
 ひ孫のミリーが、リビングから声を掛けた。
「ああ、それ知ってるわ。イノシシの親分みたいな」
「せや、その森重はんが言うてた。役者はピンとキリだけ知ってたらええて」
「あ……」
「その先生、高い山ばっかり登ってはるみたいやけど、低い山登ってみたらええんちゃうかな!?」
「それ、ええかもしれへんな!」
「せやけど、世界でいっちゃん低い山て、どこやろ……」
 ミリーがパソコンで検索し始めた。
「そら、大阪の天保山やで!」
 ミリーが検索しおわる前にバアチャンが叫んだ。
「……ほんまや、パソコンでも、そない出てくる」

 で、アリスは、クラーク先生に電話をした。

「先生、世界一の山が残ってますよ!」
「山については、アリスには負けないよ。チョモランマが……」
「違いますよ。世界で一番低い山です!」
「おー、その発想はいい!」

 どうやら、先生の冷めた心に火が点いたようだ。

「で、その山は、どんな秘境なんだね!? どこの国にあるんだね!?」
「日本の大阪にあります。TENPOUZAN MT!」

 と、かくして、アリスは数か月ぶりに、大阪に行くことになった!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする