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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

【晩秋の散策】写真展、そして美江寺観音と旧県庁舎

2012-11-03 16:57:38 | よしなしごと
 知人が出品しているという写真展を観にゆきました。
 その知人のものも含めて、皆さん上手いものです。
 対象の面白さ、アングルの面白さ、そしてなんといっても陰影の面白さ・・・なるほどと感心して見て回りました。

 受付の人と挨拶代わりに少し会話をしました。
 「これらの作品のうち、昔ながらの銀塩とデジの割合はどうなんでしょう」
 と、私。
 「そうですね、もう大半がデジですね」
 と、その人。

 そうか、銀塩でなければ写真展に応募できなかった昔とはすっかり様子が変わったのだ。
 私も出してみようかな。
 とはいえ、私は、デジと銀塩の二股派で、どこかへ出かけるときは2つのカメラを持って行ったりします。それが重いんです。

   
               内側から見た山門と私の守護仏     
 
 写真展を観て、夕方からの会合までに時間があるのを利用して、近くを散策することにしました。
 まずは美江寺観音です。
 説明によると、「養老3年(719年)、元正天皇の勅願により本巣郡十六条(現在の瑞穂市美江寺)に空海の師である勤操を開山として創設された」とありますから1,300年以上の歴史ですね。
 それが「その後、戦国期に至り、天文年間(1532-55年)、 斉藤道三が稲葉山城を築いた際に現在の場所に移し、 城下の鎮護に当たらせた」とあるから、この地(岐阜)へ来てからは500年ということになります。
 
 本尊の「乾漆十一面観音立像」は国の重要文化財ですが、一年に一度、4月18日にご開帳とのことです。
 そういえば、飲食業をしている頃、市場へ仕入れに行くと、「カンノン」という符丁は「18」を意味したことを思い出しました。「18日といえば観音様の祭日」というのが一般化していたのですね。
 ついでながら「テンジン」というのは「25」のことで、これは天神様、すなわち菅原道真の命日、3月25日によるものだそうです。

 脱線ついでですが、市場の符丁に桁はありません。18円でも1万8千円でも「カンノン」、250円でも2,500円でも「テンジン」です。その桁や単位は「ジョーシキ」で判断しろということでしょうね。
 こうして思い出すと、市場の符丁もなかなか粋で面白いと思います。

   
               ぼけ封じ観音 よろしくお願いいたします。

 話を戻しましょう。
 ご本尊よりも興味のあるものがありました。
 「ぼけ封じ観音」です。
 日頃、「ぼけるが勝ち」とうそぶいてはいるものの、やはりそう簡単にはボケられません。
 極彩色の翁と嫗の小さな立像の間に、黄金の観音様がそびえています。
 ボケそうになったら、このキッチュな黄金の観音様を思い出すことにしましょう。

 
                   旧県庁舎 正面全体図

 まだ少し時間があったので、すぐ近くの旧岐阜県庁に立ち寄ってみました。
 司町といういかにもそれらしい所にあるこの建物は、3代目の県庁舎で、完成は1918年(大正13年)といいますから私よりも20歳ほど年上です。当時の記録によれば、鉄筋3階建て、工費約150万円、工期1年7ヶ月とありますから、今の私がタイムスリップして当時に行ったら建てることが出来る金額です。

 現在は岐阜県総合庁舎として使われているこの建物、県庁として使われていた折には社会見学かなんかの他には訪れたことはありません。というのは1966年には現在の岐阜市薮田に新庁舎ができ、引っ越してしまったからです。
 この新庁舎ができる折には、そのロケーションが岐阜市と現在の瑞穂市との間の田園地帯で、当時の知事M氏のお膝元であったために、いろいろな噂が飛び交いました。たとえば、その近辺の土地をM氏とその一族で買い占めてあったという話などです。

   
                 正面玄関部分とひなびた看板

 さて旧庁舎の方ですが、文献によれば、
 「デザインはモダニズム的志向が見受けられる。立体美、重厚な表現に配慮されていると共に装飾などは最小限に抑えている。また、天窓にステンドグラスを採用し、槍ヶ岳、焼岳、穂高岳、乗鞍岳などの飛騨山脈(北アルプス)を図案化している。平面形は単純なE字形プランであるが、内外装の仕上は素晴らしいという。特に旧知事室、旧会議室等の暖炉や、食堂、手洗所等の大理石装飾は矢橋大理石商店からの寄贈品である。正面玄関などに使用されている大理石は金生山(大垣市)産の石で、古生代二枚貝のシカマイアの化石を含み、学術的にも貴重である。」
 と、あります。

 
             二階への大階段と踊り場の手すり(ここで電池切れ)

 まず外観を撮し、入り口の案内所の女性に「内部を撮影させてただいてもよろしいですか」とたずねたら、「どうぞ」と快く承知してくれました。
 しめたとばかり、まずは一階から二階へ通じる大階段などを撮影し始めたときです。非情にもわが携帯は「ジー」と不気味な警戒音を発し、電池切れを告げたのでした。

 先ほどの女性の顔に、「おや、もうお帰りですか」という表情が浮かんでいたのですが、「ありがとうございました」と挨拶をして泣く泣くその場を辞したのでした。
 一足飛びに晩秋というか初冬に至った街をかろうじて照らしていた弱々しい日差しが、今や黄昏へと至ろうとしていました。
 そしていつの間にか、落ち葉の舞い散る風情が似合う季節になったことを実感したのでした。

コメント (2)
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