とりあえず党首選挙が終わった民主党議員、党役員重鎮だか軽鎮だか知らないけど、皆さんマイクカメラ集まった大事なところで「ノーサイド」とか「全員野球」とか、スポーツに喩えるのやめませんか。
庶民性、親しみやすさや、アクティヴさをアピールしようという魂胆でもあるのか。なんか、活字と言ったらスポーツ新聞と週刊現代、週刊ポストのたぐいしか読まないおっさんリーマンみたいに聞こえるんですよ。
「政治家が政治政局を語るのに、野球サッカー、オリンピック比喩は禁止」。誰か法案上げないかな。いやしくもバッジつけて、国の選良を以て任じるなら、囲碁将棋とかチェスとか、柔道剣道空手合気道、せめて国技の(これまた近頃怪しいが)相撲ぐらいを引き合いに出していただかないと。
とにかく、首相だ次期首相だ元首相だとでかい顔してる人たちの言葉、言葉を発する挙措が、ここのところの円高と反比例するようにめっきり安くて安くてしょうがない。
別に野球蹴球系が、囲碁将棋伝統武道に比べて低級だと蔑視するわけではありません。人の上に立つ人、立ってるつもりでいる人たちが、ここぞで、スポーツ新聞の解説コラムか監督インタヴューから拾ってきた系の比喩を選択する、その軽っちい品性がガッカリだよ、ということを言いたかったのでした。
また、いまに始まったことじゃないけど、小沢一郎さんの「これからは一兵卒としてウンヌン」という、あからさまに魂の入ってない軍隊用語もどげしたものか。
もとより骨の髄まで剛腕ゴリ押し体質の人、「アタマがクラシックにできとる」(イタチ浦木@『ゲゲゲの女房』)なんて微笑ましい世界じゃないだけに。
そう言えば、野党になり果てていまや月にいっぺんぐらいしか誰もコメント求めにも行かない自民党の谷垣禎一さんも、10年ほど前の“加藤の乱”で「加藤(紘一)さんは大将なんだから、ひとりで突撃はダメですよ」と泣いて止めていたなあ。結局、政治家の皆さんは脳内が常在戦場、と言えば聞こえがいいけれど、年じゅうヴァーチャル勝負事を繰り広げていないとやってられないのかもしれない。
その中でも感性が“古暗重”の人は軍隊用語、戦争戦略用語がつい出るし、“若軽チョロ”の人はスポーツ新聞系に走るのかも。
『ゲゲゲの女房』は安来から源兵衛さん(大杉漣さん)がミヤコさん(古手川祐子さん)を伴って“来襲”。しげる(向井理さん)を上座において囲んだ夕食の間は一応家長としてしげるを立てていたのでしょうけど、しげるさんが仕事場に、藍子喜子姉妹が勉強部屋にとハケて、娘の布美枝さん(松下奈緒さん)とミヤコさんだけでお茶を飲む段になると「(教員合格した)藍子は大したものだな、さすがウチの家系だ」「しかしムコ殿はあまり喜んどらんようだったな」と“自分が大家長”モード全開。
娘を家から出したくなければ、赴任先が決まる前にとにかく見合いをまとめておいて…って、ここまでアタマが封建クラシックだといっそ笑いますな。進路選び、試験でテンション上がって、努力して出した結果を絶賛してもらえず、そうでなくてもピリピリしている藍子ちゃん(青谷優衣さん)、大学卒業間近のこの年代女子にいちばんナーバスなモチーフである見合いだ結婚だをからませたら、こじれないほうがおかしいっつうの。
おもしろいのは、普通、ここまで家庭内に味方がいない状態になったら、「親の顔見ながらご飯なんか食べたくない」って部屋に引きこもるか、友達の家や下宿に転がり込むかしそうな藍子ちゃんが、しっかり卓袱台についてモリモリ(あまりおいしそうにではなかったけど)食べてたことですね。トラブっても悩んでも、胃袋を満たすことは別勘定。13日(月)放送の特大ホールケーキ一気独占食いといい、“生きることは食べること”の村井家DNAを、しっかり受け継いでいる長女さん、生きることは夢を追うことでもありますからね。普通、“若い娘が親に逆らって好き勝手”といったら男遊びか飲酒薬物援交のたぐいと相場が決まっているものを、藍子ちゃんは「(幼い頃の自分のような)勉強苦手な子の気持ちのわかる先生に」としっかり地に足のついた夢を持って逆らっている分、しげるさんや源兵衛さんより理がある。
もし最悪の場合、都下島嶼部、八丈島や小笠原群島にでも赴任になったら、「お父ちゃんの好きな南方の楽園だよ!」か何か言って水木プロごと引っ越して連れて行っちゃえば。
ドラマも終盤に近づいてきてお疲れ息抜きモードというわけでもないでしょうが、今週は特に漫画チックな映像演出が楽しいですね。雄一さん夫婦(大倉孝二さん愛華みれさん)がイカル絹代ばあちゃん(竹下景子さん)のあたり構わぬ猛烈ぶりを嘆くときに、レストランレジをバン!と叩くイカルさんのカットがヒヨヒヨヒヨ~とフレーム下に揺れ落ちたり、藍子に見合いをの源兵衛×しげる密談が「そげいえばあのとき…」と布美枝さんの回想になると“カメラは見た!”みたいにラウンドでスポット切られたり。
密談中に布美枝さんが「ここにおったの?」と入ってくると「おーおーそげだ、仕事場を見せてもらっておった(激焦)」とわさわさ立ち上がりざま、要りもしないデカ灰皿つかんでちょろちょろし出す源兵衛さん。初上京時に下宿人中森さんの柄杓つかんで振り回しながら説教してた場面同様、大杉漣さんのアドリブなんでしょうけど、テンション上がると手近の物を何でも手にして、噺家さんの扇子よろしくボディランゲージのツールにする人って、結構見かけますよ。源兵衛さん同様、せっかちで、次々思いつくアイディアや主張にクチ言葉が同じ速度で出てきてくれず、「うぁーもう何と言ったらいいんだ、そのホラ、あれだよアレ」みたいに年じゅうイライラつっからかったみたいにしゃべる人に多いタイプ。柄杓でも何でも、持ってアクションつけるとイキオイで表現力がアップするとでも思っちゃうんでしょうね。現場のアドリブで源兵衛さんの性格を的確につかまえる、ベテラン大杉さんさすがです。