イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

ヒヤリ・鳩ット体験

2009-12-25 14:02:41 | ニュース

おカネに不自由が無さ過ぎるのも考えものですね。鳩山由紀夫さん、“持ってるもの、入ってくるものを、秘書がいいように処理して整理しといてくれると思ったら、してくれてなかった”では、自分自身がヘタこいてお咎めになっちゃった以上に心外でしょう。適法なやり方であれ違法であれ、自分が額に汗し、あるいは死に物狂いで悪知恵働かせてものにしたおカネだったら、こういうノーズロな、不作為の罪みたいなルーズさにはならないでしょう。

2002年まで遡って、資産126千万円ちょいに対し贈与税6億超だそうです。これが最悪国民の神経を逆撫でしましたね。「払えません」と言うより、「払います」と言ってかえって余計逆撫でしちゃった。鳩山さんにしてみれば、「払うって言ってるのにどうして叩かれるんだ?」と不思議でしょう。この人にそれを解れと要求する自体野暮。

人の上に立ち、人を代表して何かを動かす立場の人でなくそこらの市井の一般人でも、“お金との相性が悪い”人っていると思うのです。おカネに縁がなく一生貧乏暮らしという意味ではなく、努力して、あるいは棚ボタで、潤って不自由ないんだけど、なぜか躓くときはおカネがらみ。人を陥れたり法に触れたりして不当に得たおカネじゃなく正当なおカネなら躓きのもとにはならないと、庶民は思いたいですが、鳩山さんのように、“自分の生まれてない頃から親が持っていて、親から継いだ、譲られただけ”のおカネでも、額が大きくてしかも自分が政治家なんか始めちゃうと、こういうことになるのです。

金持ちの親がおらず、アコギなまねもしないで、こつこつ働いて財をなした人でも、財をたのんで豪邸建てて身内や友人に見せびらかしたり、会社興してカネ目当ての人を大勢雇ったりし始めると、そういう人から足を引っ張られる。裕福や豪勢が身につかない、“自分ひとりと、せいぜい家族の身すぎ世すぎ程度しかおカネはない”状態がいちばん似合って、居心地がいい人っているものです。

鳩山由紀夫さんにしても、金持ちの親を持って生まれただけなら、別に犯罪にはならない。潤沢な仕送りや援助を受けて、科学者になって後進育成のための財団でも作ったのだったら、夕飯どきの公共の電波で仏頂面で釈明文読み上げなんかしなくても済んだでしょう。代議士になんかなるから、党首になんかなるから、おまけにその党がバカみたく選挙大勝ちして政権なんか取るから、こんなことになっちゃった。

後考えですが、一家の中の“政治家・大臣になる担当”を弟の邦夫さんの専任にしていたら、母上の安子さん(旧姓・石橋)も、晩年になってこんな心痛める状況にならなかったのではないかとも思います。由紀夫さんの場合、おカネどうこうより、“政権政党の要職”というポジションとの相性が悪いのかも。

芸能人や芸術家など以上に、政治家って、才能的になれる/なれないではなく“なれるかもしれないけど、なってはいけない人”がいる職業です。

しかし、「この人を政治家にしていいか、よくないか」を決めるのは、民主国家においては一般選挙民の一票の集積なわけです。一票を広く集め、他候補に競り勝たなければ、いくら「オレ政治家」を自称しても政治家と認められません。

日本で、性別・資産を問わず大人すべてに平等に一票の権利が与えられる、完全普通選挙制が始まって65年。いい加減選挙民も、“この人に何をしてほしい、どうあってほしいと望んで一票投じるのか”を考え直さなければならない時期に来ていると思います。

「鳩山さんぐらいリッチで毛並みが良くて、カネに不自由なければ、総選挙や党首選に勝つための政治資金を求めて汚いことはしないだろう」と思って、民主党鳩山首班にオッケーを(求められてないけど)出した国民は多いはず。

しかしリッチなるがゆえに、今般のようなアホアホノーズロっぷりを露呈することにもなる。「すんません、6億すぐ払います」と言えてしまう人が総理でいいのか、民意の代表たる代議士でいいのか。

或いは空ッけつの持たざる人として出て来て、適法違法併せ呑む驚異的な集金力でのし上がって行くような人が望ましいのか。そもそも政治の表舞台で要職に就くのに“集金力”を必要とする土壌自体どうなのか。

毛並みの良さとか、高学歴だからバカじゃなさそうとか、若いからフレッシュ清潔そうだとか、イケメンor美人だから高好感度だとか、あるいはTVタレントとしてよく見かけ切れ味が良くておもしろかったとか、はたまたお父さんやお祖父さんが代々地元に多大な貢献をしてくれた恩義等で一票の投じ先を選ぶ、そんなことを何期か繰り返していたらこんなザマになるよという見本を見せられているのが今日の政治状況だと思います。

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ご存知だね

2009-12-24 22:48:29 | CM

M1グランプリでハライチの「カモシカにベット」を聞いたからというわけではないですが、最近、気がつけば、特に商品広告・企業広告のないNHKで、「まるごと地デジカ」のスポットを見かけることが多くなりました。

……動物学上、カモシカはウシ目(もく)ウシ科の動物で、シカの鯨偶蹄目(くじらぐうていもく)シカ科とはまったく別系統の動物であるとかいうことはコッチに(ドッチだ)おいといて。

地デジ大使・草彅剛さんが諸般の事情で一時休暇に入った頃から顔を見かけるようになった地デジカくん、色白に黄色のレオタード、アンテナ型のツノがチャームポイント。「まるごと、地デジカ。」の声は、アニメちびまる子ちゃんの前田さんの声などでおなじみ浦和めぐみさんだそうです。

これだけ露出が増えれば公式サイトもあるはずと思い、探してみたら、ありますねー。壁紙ダウンロードもできて至れり尽くせり。トップの動画を見ると、二本足直立歩行がなにげにモデルウォーキング。

シカと言えば、地デジカくんよりずっと前からCMで活躍しているのがダイハツムーヴコンテカクカクシカジカくん。貼り絵のような、クレパスのようなタッチのこちらはグレーボディにスクエア黒縁メガネがインテリっぽくてダンディ。公式によると職業は物書きで、声はなんと生瀬勝久さん。ちょっとヴォイスチェンジ加工してあるのか、これはわかりませんでしたね。『トリック』『サラリーマンNEO』でもご活躍ですが月河的には何と言っても平成の切り裂きジャック・浅倉禄郎(@『相棒』)です。

今年の正月期には、「いくら今年の干支が丑(うし)だからって、こういうやり方はどーかと思いますよ」とクールにブーたれながらホルスタイン柄の着ぐるみを着て「カクカク、ウシウシ」と踊ってくれたカクシカくん、来年の正月は「カクカク、トラトラ」かしら。現行オンエア中のヴァージョンでは、「ゲンゼー(減税)、われわれはぁ、エコロジー精神に則り…」と赤ハチマキで宣誓かましてますね。

CMキャラクターって、昔からペットや家畜として日本人にもなじみ深いイヌとかサルとかウマ由来のヤツは従来から結構多かったように思いますが、シカ由来って珍しくないですか。例の奈良県の、物議を醸したイメキャラ以来、封印が解けたのかしら。草食動物ですしね。

当地近隣では、「エコのためマイカー通勤、マイカー外出を減らして公共交通機関を利用しましょう」という趣旨のキャンペーンを今秋から始め、買い物かごをさげた“のってシマウマ”、プレスリーか錦野旦さんかという袖にソーメンのぶら下がった立て衿ジャケでトラボルタ風ポーズを取る“のってコグマ”、ネクタイにショルダーバッグの“のってカエル”のトリオ、人呼んで(誰が呼んだ)“のってこ~ず”TVCM、車内吊りなどに登場しています。

何と言うか、動物モチーフで二本足直立させると、それだけで絵的に人間ぽくなって、メッセージをしゃべらせたり商品名を言わせたりしやすいんでしょうね。

NHK朝ドラ『ウェルかめ』“かめっ太くん”もえらく人気らしく、「本編は興味ないけど、あのOPだけは毎朝見てしまう」と言う人が、月河の周囲でも結構います。彼も、二本足でタウンウォッチングしたり坂道をガー登ったりしていますね。

人間の俳優さんタレントさんを使うと、どうしても好悪が分かれるし、嫌われ度の少ない、好感度ランキング上位の安全牌の人を、高ギャラをおして起用すれば、「そこらじゅうの番組、媒体に出まくっている顔なので、何のCMか印象に残りにくい」ということになりかねない。

しかも人間のタレントさんは、まさかという人がまさかのスキャンダルを起こして、好感度どころかCM打ち切らざるを得なくなったりもする。

結局、動物さんをキャラ化してしゃべらせるのがいちばん訴求力が高い。だからいろんな動物が、いろんな広告で、二本足で立ってるわけです。

笑い飯の“鳥人(とりじん)”も、これだからあんだけウケたんだろうなぁ。イメージしやすいですもんね。

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見られてる ずっと

2009-12-23 15:19:30 | お笑い

印象が新鮮なうちに、レヴュっておくとしましょうか、M1グランプリ2009。一応ここまでコマを進めた8組が、今年の若手漫才界を代表する精鋭なわけです。そう思うと、名前と顔が並んだのだけ見た段階では“いまさら感”が漂うのも仕方がなかったですね。

出番順にいくとナイツは、年度は忘れたけど一時の千鳥POISON GIRL BAND同様、トップバッターでだいぶ損しました。最終決戦進出した去年以上にネタは洗練されているし、手練れぶりにますます磨きがかかってはいるのだけれど、この人たちほど“見てて気分が高揚しない”芸風の漫才も珍しいと思う。レヴューのためにVTRを何度か巻き戻していて、この組のネタだけがどうにも「戻って再見するのが楽しみにならない」。このスタイル、耳がどうしても“わざとの言い間違いを聞きとがめる”姿勢になり、ネタが進行すればするほどストレスがたまってくるんですよ。ひととおりシャベくってから出だしに戻るような構成はなかなか考え抜かれていて良かったと思うのですが、笑い飯とは違う意味で、やはりM1向きでないのかも。

南海キャンディーズ04年の衝撃的決勝進出デビュー→翌年連続出場以来4年ぶりの登場。4年の間に、ピンでドラマやCMに出るようになったしずちゃんは、持ち前のガタイを活かしたアクションのキレが目覚ましく向上しているし、こちらもピンでリアクション要員が多くなった山ちゃんも、“飛んでもないモノを食べさせられてひと言”とか“飛んでもない状況に連れて来られてひと言”の経験値が上がり、結果やはりツッコミ語彙、演技力がアップしている。

どちらも初出場時よりヘタにはなってない、うまくなっているのに、なぜか“初出場時よりおもしろくなった”感じがあまりないのは、やはり紹介VTRでも触れられていたように、2人一緒に行動する、時間と場所と経験を共有する”機会が大幅に減ってしまったせいではないでしょうかね。漫才って、話芸ではあるけれど、伊達にコンビ芸もしくはトリオ芸で成立していない。“2人(or3人)いるからこそ”の空気感が芸の一部にもなる。5年前は、非常に失礼な表現ながら“変態メガネのキモブサ男とブス大女”というヴィジュアル自体が空気感の醸成にひと役買っていたし、「この人たちなら、漫才以外芸能界があり得ないだろう」と、一種の背水感もあって、男性だけの他のどのコンビより体当たり、野生動物ファンタジーみたいな芸風と相俟って魅力につながった。

しかし、気がつけばこの5年、ピンでも芸能界でそれなりに通用することを、しずちゃんと山ちゃんそれぞれ本人たちも、観客もわかってしまった。こうなると、久しぶりに2人揃ってネタ演っても、空気が薄いわけです。息が合わないとか漫才的カンが鈍ってるとか、力量の問題ではない。力量ならむしろ向上しているのです。向上しているのに、おもしろさは減った。コンビ芸は往々にしてこういうことがある。

初出場最終ラウンド進出の快挙をなしとげた04年には1st94点つけ、「男女コンビいうと、とかく、女の人を、ブス!とか言うていじめる(いじる)芸になりがちなんやけど、そういうのがないのがいい」と評価して、最終決戦でも唯一この組に投票してくれた(他6人はすべてアンタッチャブルに)中田カウス師匠が、翌05年に続いて、今回も88点しかつけませんでした。感想を聞いてみたかったですね。

東京ダイナマイトは、今回の顔触れではパンクブーブーハライチの次くらいに楽しみにしていたんですが、おとなしかったですね。所属がいつの間にか吉本に変わっていた。サブ司会の上戸彩さんが「(ハチミツ)二郎さん全然動かなかったですね」と思いがけず慧眼に指摘していましたが、もともと松田に比べて動きの大きいタイプではないハチミツにしても、もう少し笑いの起爆スイッチとして機能するネタで勝負してほしかった。おとなしかったというより、“薄かった”と言った方がいいか。採点発表のあと、松田がこれ以上ないくらい生気のない表情だったのも気になりました。

前回出場時04年、最終決戦出場ならず敗退の後、二郎は「ここ(=1st会場)に来る前は優勝できると思ってた、その時の自分を殴りたい」と言っていましたが、今回は来る前に殴って顔が腫れたのかな(もともとか)。

ハリセンボンは、はるかが肺結核復帰明けで会場の空気は温かかったように思いますが、結局は“女性枠要員”の域を出られませんでした。『侍チュート!』などバラエティでメインMC級のランクにまで来ている彼女らを枠要員に持ってこなければならないほど、現在の若手は女性コンビ不作なのか。『爆笑オンエアバトル』では最近ニッチェが頑張っていますが、まだ多ラウンド勝ち上がり制のM1は荷が重そうですしね。

ガリのはるかは天然、太めの春菜が毒入りで進行して来て、最後にはるかが一番毒のきついことを言って終了…という流れも、もうそろそろ慣れられてきたか。なんとなく、前回07年初出場時、彼女らの明るさと“品”を高く評価し、「女の漫才師は、恋人ができると漫才がつまらなくなる(から気をつけて)」とコメント、審査員中最高の93点をくれた上沼恵美子さんが、今年熱愛発覚があったはるかにどう言うか、その興味だけで決勝に残されたような感じもしました。

あとは順不同で。今回の決勝進出組中群を抜いて若い(両者23歳)ハライチ。今年の4『爆笑トライアウト』から『オンバト』本戦オンエアにこぎつけて以降、ワンスタイルながらどんどん押して来ている感がありましたが、さすがにM1決勝となると硬さが出ましたね。でもノリツッコミ担当澤部のつかみ「(会場・審査員ともに目立って反応が良かった笑い飯の後で)CMはさんで良かったですね」、無茶振り担当岩井の、審査後の「笑い飯優勝でしょ?」など、ネタ本編以外の部分でも味は出したし、結果9組中5位、初出場としては上々のデビューではないでしょうか。特にオール巨人師匠がパンクブーブーナイツに次ぐ89点くれたことは糧にしていいと思う。

澤部の独特の演技力もさることながら、いまはうすらニヤニヤしてるだけの岩井が“カエルのツラにションベン顔”キャラをもっと磨いて来れば、先輩組の誰にもいないユニークなコンビとして頭角をあらわしそうです。先輩の笑い飯がひとつ前の出番で、「お父ちゃんボクもうトリ嫌いや」と流れを変えたところですかさず「トリ進一だよ」と球種も変えてくる玄人芸ぶりを見せましたが、芸歴にして6年以上後輩のこの組も「控えめなフック」を二度使って、二度めに澤部が「変わらず」を付け加えるという出し入れ巧者ぶりを披露しました。ボケの数が多く隙間なく詰まって連射してればいいってもんではない、長めのネタの漫才においてはこの出し入れ、緩急舵取りのバランス感覚が大事。「カモシカにベット」はBedではなく、ルーレットのBet(賭け)だったのね。

モンスターエンジンは、昨年同様、神々の遊びを封印してオーソドックスな漫才にすると意外なほど味がない。「別にこんな古くさいことやらなくても、神々やれば簡単に笑い取れるのに」と思ってしまう。中田カウス師匠は「ちょっと品がなかったかな」と評していましたが、男コンビでカップルや夫婦役を演るコント漫才は向き不向きがあり、この人たちは向かないんだと思う。そういうネタ選びセンスも含めて意外に味がなかった。

番組進行としては、審査委員長島田紳助さんのスタンドプレイがちょっと疑問でした。特に笑い飯に関して、1stのネタ後の時点で「100点出したらこの後(以降出番の組の出来が上回っても、100点以上はつけられないから)困る、でも困ってもいいと思うくらい、いま感動してる」まで言ってしまうと会場の空気が完全に変わってしまう。メインMC経験も豊富な紳助さんがそれくらいわからないはずはないと思うのですが。「上沼(恵美子)さんも100点出したいと思ってるはず」なんて大きなお世話でしょうに。現に上沼さんは、この日の彼女の最高98点を与えた3組がまるっと最終進出を果たしており(4位以下の順位もすべてこの人の点順通り)、ジャッジャーとしての眼力は紳助さんよりはるかに優秀なわけです。

敗者復活で戻って来たNON STYLEいじりも、松本人志さんがウケ狙いで言ったのであろう「去年はオードリーに決勝で負け…」に乗っかって延ばすなど、審査委員長の地位濫用にも見える悪ノリが目につきました。もともとが吉本興業主体で運営されている催しだけに、“同じ吉本の先輩後輩の付き合いで好悪が決まり、審査にも影響しているのではないか”と、催し自体が痛くもない(のか?)ハラをさぐられることにもなる。

純粋に“若手でいちばんおもろいヤツを決める”というM1草創の志を大切にし、漫才界の発展に資したい気持ちがまだ幾許かでもあるなら、紳助さん自重が必要ですよ。女性マネへの暴力騒動でほんの一時期ちょっと大人しくしていたと思ったら、ヘキサゴン効果か事件以前を上回る増長ぶり、そろそろ“ネタとして、キャラとして図々しいヤツ”と半笑いで流せない域に来ている。先輩芸人さんたちも金持ちケンカせずと諦観しないで、もっとしっかり締めてやってくださいよ。

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もーアッタマってきた

2009-12-21 16:34:11 | お笑い

おめでとうパンクブーブーM1グランプリ2009優勝

先々週だったか、お昼の『スクランブル』に、「今年の決勝進出組が決まりました!」と8組が飛び入り紹介されたとき、ハライチ以外は“いまさら感”の強い顔触れだなぁ…と微量落胆して視聴意欲がかなり下がってしまったのですが、中でいちばん「この人たちが実力妥当だし、取らせてあげたい」と素直に思えたのが彼らでした。

3年ほど前、しばらくご無沙汰していた『爆笑オンエアバトル』視聴復帰したとき、テンポ的にもネタのクオリティ面でも、それ以前とは別組かと思うほどの上達ぶりでわくわくさせてくれたし、新ネタを見る機会があるたび、度肝抜くほどの派手さや新奇さはないけれど、ネタ毎、ネタ見せ毎の出来不出来の少なさ、いま最もM1チャンピオンにふさわしい組ではないかと思っていました。審査員7人全員一致選出のチャンプは、06年のチュートリアル以来ではないでしょうか。

何よりボケの佐藤の、毎度の“自信満々のウザ迷惑キャラ”が、毎ネタ実にいい匙加減なんだな。「“堂々とズレてる”可笑しさは認めるけど、それにしてもマジうざい」と拒否感不快感を覚えるちょっと手前に、距離としては本当にちょっとだけなんだけど、でも確固と踏み止まっている。これ、本当に微妙だと思うのです。全然芸風違うのに引き合いに出して悪いけど、“押し”“主張”型のボケ、『オンバト』常連組で言えば、ランチランチ上々軍団、ネタによってはハマカーンタイムマシーン3辺りも、おもしろさ可笑しさをウザさが踏み越えてしまうことがある。パンクブーブーの場合、ツッコミ黒瀬の、“何だかんだで御している”感とのバランスもいい。

最終決戦の“陶芸家に弟子入り志願”ネタは昨季の『オンバト』チャンピオンファイナルでも見て二度めの視聴でしたが、非常に計算されたブラッシュアップで、前回視聴時の軽く2倍は笑えました。前回は、陶芸家でなくても、武術家でも小説家でも何でもよかったのでは?と思ったのですが、「先生の皿がマジ、ツボ」で見事に固定した。これで一気に演じられている世界が具体性を帯び、“笑いやすく”なった。

オール巨人師匠の笑い飯評ではないですが、ある状況を設定して小芝居仕立てで進行するコント漫才の場合特に、“状況、情景が目に浮かぶ”ということが大事なのです。本式のコントと違って、背景セットや置き道具持ち道具、扮装が漫才は無いですから、高座落語と同じ、観客視聴者の想像力への挑戦になる。「先生のところがウチからいちばん近いんです」は、「ひょっとしたらアパートの隣の部屋なんじゃ?」と決勝1stラウンドのネタと地続きに想像してしまいました。

1stのこの“騒音隣人”ネタが手堅かったのも最終決戦への追い風になりましたね。後半、2人で指さし合って悪態の応酬になったときは、『オンバト』08年ファイナルでのプラスマイナスの悪夢が脳裏をよぎったのですが、“悪態は悪態でも、佐藤の悪態があまりに特殊”(→なおかつこの後「出て行け!そしてその目で世界を見て来い!」と、結局悪態と真逆に収束する)というバイパス的可笑しさで、これまた見事に掬い取った。月河がこの人たちを好評価したい理由はこういうところにあるのです。にぎやかでテンポがいいだけでなく、バランス感覚がいいんですね。こういう組は、安定して笑えるから「コイツらおもしろいよ」と人に安心して薦められるし、ラテ欄に名前があるととりあえず見てみようと思う。

過去のM1チャンプの中では、サンドウィッチマンのようなワイルドな瞬発力は感じられませんが、アンタッチャブルのような高原状の安定感は確実にある。今季新システムで進行中の『オンエアバトル』でも視聴者投票1位組にコマを進めているし、引き続き健闘を期待です。

1stの“鳥人(とりじん)”ネタが強烈で、同ラウンド2位のパンブーに17点差をつけ、瞬間風速的には優勝当確ムードで会場を席捲した笑い飯に関しては、審査員松本人志さん島田紳助さんが「燃え尽きた」「(最終決戦用の)ネタ2本めは無い」とそれこそネタ的に予測していた通り…というわけでもなく、要するに(パンブーと対照的に)ネタ毎の完成度の上下動が激し過ぎ、M1決勝の二段構えのシステムに適していないのだと思う。1st紹介Vにもうたわれていた前人未到の8年連続決勝進出も未だ無冠は、すべて“同レベルのネタ、演りデキを2本続けられなかった”の歴史なわけです。

しかし、1stで「(鳥人)だいたいわかったから、やらしてくれや、それ」と西田が言ったとき会場から沸いた拍手こそがこの人たちの財産です。出来そうに思うのに他組が誰もやらない“交代Wボケ”は、さぁこっからソレやるぞという素振りだけでこれだけウケる、オンリーワンの看板になった。2本に1本ハズれだとしても、ひとつも看板に瑕をつけるものではない。マルク・シャガール画伯がこのネタ、吹き替えででも視聴したら、感動して“タキシードを着た鳥人が、ぼんやり見えるインコを子供にプレゼントする”絵を一枚描いてくれて、いまごろルーブル美術館に展示されてますよ。もう『オンバト』は出てくれないかな。

……あと、トリ進一やテバ(手羽)真一が出てくるなら、「トリ繁久彌や、トリ光子を迎えに行く途中や」ってのもやってほしかっ……………不謹慎ですね。自主トリ下げ。

昨年チャンピオンでありながら敗者復活戦に回り、1st3位に食い込んで最終進出の意地を見せたNON STYLEに関しては、“意地を見せた”に尽きるでしょう。03年優勝のフットボールアワーが04年、05年と不出場で勝ち抜けかと思ったら06年に再び挑戦して来たときにはあまり肯定的に受け止められませんでしたが、ノンスタは連続挑戦だけに“好ましい貪欲さ”を感じる。若手若手と呼ばれつつもじんわり露出を増やしてTVの中での居場所もそれなりに作った組が、念願かなってネタで大きなタイトルを取ると、今度はTVでのネタ披露の機会が減りバラエティMCやフリートーク賑やかし役に回されがちな地合いが、ここ56年続く中、上沼恵美子さんらに「フリートークがダメ」とからかわれながら「ほんならずっとネタで押したる」という負けん気を見せたと思いたい。2本が2本ともツッコミ井上のナルシストイキリ&ボケ石田の細長体型モーションネタで押したのも、結果勝てなかったけれど、06年のチュートリアルを髣髴させる思い切りのよさでした。来年はフリートークも頑張ろうね。

最終進出ならなかった他6組も、“いまさら感”は漂いつつもそれなりに味は出し、一見しただけで敗退決定と思える組はありませんでした。彼らに関してはまた後日。

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青磁ん君子

2009-12-19 20:02:57 | 夜ドラマ

『不毛地帯』はどうも困ったことになってきました。“戦争と日本人”という骨太な軸に、男のビジネス成り上がりサバイバルバトル風味で肉付けした、大人のストーリーを期待して録画視聴していたのですけれど、全国の視聴者の“困り声”が聞こえてきそうな案配です。

 別にいいんですけどね、壹岐(唐沢寿明さん)は妻を亡くして男やもめ、千里(小雪さん)は能役者との長年の婚約を解消してフリー、何の障害もありません。

 壹岐に視点を寄せて見ると、千里は非業の自決を遂げたかつての上官(中村敦夫さん)の遺児。千里の兄・清輝(佐々木蔵之介さん)は、階級や所属こそ違いますが同じ日本軍将校として、南方で大勢の部下を戦死させた自責の念から、肺結核に冒されながら山に籠って厳しい仏門修行で自らを痛めつけており、壹岐にしてみれば“世が世なら自分だったかもしれない”男をふたり家族に持つ女性が千里です。言わば自分の娘のような、妹のような存在。

壹岐と千里の間は、一般的な孤独な男女の惹かれ合いではなく、“戦争で家族が受けたダメージ”という影をともに背負う同士という側面もあります。向き合っているのではなく、同じ方向に延びる影を背に、同じ方向に向いている。

ソ連軍に「戦争責任は昭和天皇にあると証言せよ」と強要され自決した秋津中将は、壹岐にとって“自分もそうすべきだった”というリグレットと、“生きて秋津さんの無念を、終戦後の日本で晴らし、ご遺族を見守り支えねば”という責任感とを刺戟される、永遠の遺影。

その秋津の娘・千里が婚約を解消して女性としての幸せを先送りし、ニューヨークにまで追いかけてきてくれた以上、壹岐は受け容れ、気持ちにこたえてやらないわけにはいかない。千里と夫とのひそかな交流にやきもきしたまま亡くなった妻・佳子(和久井映見さん)への気遣いももちろん失っていないのだけれど、壹岐にとって千里は、異性として愛しいとかそそられるというのとは違う、“冷厳にはねつけ拒否すること能わざる”存在なのです。

そして千里が、父の最期に最も近くにいた人として、ほとんど父自身と重ね合わせる存在として壹岐を仰ぐのも、また自然。そして三十路に入っても独身で求道者的に(千里の場合は陶芸)生きることを選んだ女性が、擬似父、擬似兄のイメージで見る男性に自分を曝け出す場合、“身も心も捧げる”“抱いてください”というタームでしか、表出する言語を持たないということはあると思うのです。

千里が陶芸でなく、たとえば現代風のキャリアウーマンのように、外国語が堪能とかビジネスに有用な才を持っていたならば、“慕う男を仕事でサポートし、かけがえのない存在と思ってもらう”という道がありますが、軍人の父のもと戦前教育で育った娘の千里には、その面では壹岐と接点は持てません。佳子が健在の間は、自分の母もそうだった軍人の妻への敬意と遠慮があったし、“壹岐さんを好ましく思っているけれど、やましいことは決してない”と自認したいがための、ことさら潔白な言動をつらぬきましたが、いまや壹岐は異国で、家事はメイド頼みの独身生活を送るやもめです。千里としては“いま行かなければ、いま告白しなければ、一生後悔する”という彼女なりの覚悟がある。

そして壹岐は、他ならぬ秋津千里の目に覚悟を見てとれば、拒否することはできません。彼女を拒否することは自分の娘、自分の妹を拒否することであり、ひいては非運の上官を拒否することであり、彼と共有した日本国の尊厳、己の己たるプライドを否定することにもつながる。

………ただの、トウのたった男女が借り上げ社宅のアパートメントで抱き合ったりキスしたりしてるだけではない、こういう重い重い“戦争漬け、もしくは戦争の傷の後処理で青春を過ごした”世代の心理のアヤ、小説として味読するならばじゅうぶん伝わってくるし納得もできるのです。

ただねぇ、残念ながら、映像、なかんずく、TVのドラマなわけですよ。どうしても「こっ恥ずかしい…」「見苦しい…」感が拭えない。血中オンナ濃度がきわめて低い月河でさえこう感じるのですから、世の一般的な主婦や、働くOLさんならもっと不潔感や拒否感を覚えるのではないでしょうか。

ドラマでも映画でも、主要キャストのひとりのミスキャスト“単体”で作品がまるごと壊れることはないと思っている月河ですが、今作の小雪さんの千里役はどうにもフォローの余地が見当たりません。可憐さや、内的な陰翳のひだがほとんど感じられない。小雪さんが演技しているのをちゃんと見たのは映画の『ラスト・サムライ』だけですが、持ち前のモデル仕込みのスタイルを活かしてちゃんと機能していたし、TVのドラマで、主役級でずいぶん好評な作もあったはず。今作に限って、製作陣から彼女への役の読み込ませ方が足りないのか、演出が彼女パートだけ力不足なのか、逆に手を抜いてるのか、とにかくえらくデクノボウで邪魔くさい女に見えてしまう。千里が内に背負っているであろうもの、覚悟を決めざるを得なかった動機であろうものに比べて、表情や挙措が、単調にもほどがある。

妻役の和久井映見さんに比べて、割烹前掛けの似合う糟糠感や地味さが少なく、凛としてモダンな感じの人をということでの起用かもしれませんが、もうちょっと誰かいなかったかな…と思います。せっかくの2クール大作の大役なのに小雪さん自身もプラスにならなくてもったいない。

男性陣では里井の岸部一徳さんが依然、群を抜いていいですな。“次期社長”がチラつくと途端にわかりやすく相好が崩れる卑しさ加減もさることながら、心臓に爆弾を抱えている設定なんだろうけど、あのホラー演技ですよ。見ました?胸突き破ってエイリアンみたいの出てくるかと思った。さもなきゃクズかごに顔突っ込んで、上げたら顔面緑色に変わってるとか。

いつも思うんですけど、俳優さんって、酒飲まないでベロンベロンな演技したり、痛くもカユくもないのに断末魔演技したりするんですよね。それが仕事、プロとは言えすごいなと思います。

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