イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

見られてる ずっと

2009-12-23 15:19:30 | お笑い

印象が新鮮なうちに、レヴュっておくとしましょうか、M1グランプリ2009。一応ここまでコマを進めた8組が、今年の若手漫才界を代表する精鋭なわけです。そう思うと、名前と顔が並んだのだけ見た段階では“いまさら感”が漂うのも仕方がなかったですね。

出番順にいくとナイツは、年度は忘れたけど一時の千鳥POISON GIRL BAND同様、トップバッターでだいぶ損しました。最終決戦進出した去年以上にネタは洗練されているし、手練れぶりにますます磨きがかかってはいるのだけれど、この人たちほど“見てて気分が高揚しない”芸風の漫才も珍しいと思う。レヴューのためにVTRを何度か巻き戻していて、この組のネタだけがどうにも「戻って再見するのが楽しみにならない」。このスタイル、耳がどうしても“わざとの言い間違いを聞きとがめる”姿勢になり、ネタが進行すればするほどストレスがたまってくるんですよ。ひととおりシャベくってから出だしに戻るような構成はなかなか考え抜かれていて良かったと思うのですが、笑い飯とは違う意味で、やはりM1向きでないのかも。

南海キャンディーズ04年の衝撃的決勝進出デビュー→翌年連続出場以来4年ぶりの登場。4年の間に、ピンでドラマやCMに出るようになったしずちゃんは、持ち前のガタイを活かしたアクションのキレが目覚ましく向上しているし、こちらもピンでリアクション要員が多くなった山ちゃんも、“飛んでもないモノを食べさせられてひと言”とか“飛んでもない状況に連れて来られてひと言”の経験値が上がり、結果やはりツッコミ語彙、演技力がアップしている。

どちらも初出場時よりヘタにはなってない、うまくなっているのに、なぜか“初出場時よりおもしろくなった”感じがあまりないのは、やはり紹介VTRでも触れられていたように、2人一緒に行動する、時間と場所と経験を共有する”機会が大幅に減ってしまったせいではないでしょうかね。漫才って、話芸ではあるけれど、伊達にコンビ芸もしくはトリオ芸で成立していない。“2人(or3人)いるからこそ”の空気感が芸の一部にもなる。5年前は、非常に失礼な表現ながら“変態メガネのキモブサ男とブス大女”というヴィジュアル自体が空気感の醸成にひと役買っていたし、「この人たちなら、漫才以外芸能界があり得ないだろう」と、一種の背水感もあって、男性だけの他のどのコンビより体当たり、野生動物ファンタジーみたいな芸風と相俟って魅力につながった。

しかし、気がつけばこの5年、ピンでも芸能界でそれなりに通用することを、しずちゃんと山ちゃんそれぞれ本人たちも、観客もわかってしまった。こうなると、久しぶりに2人揃ってネタ演っても、空気が薄いわけです。息が合わないとか漫才的カンが鈍ってるとか、力量の問題ではない。力量ならむしろ向上しているのです。向上しているのに、おもしろさは減った。コンビ芸は往々にしてこういうことがある。

初出場最終ラウンド進出の快挙をなしとげた04年には1st94点つけ、「男女コンビいうと、とかく、女の人を、ブス!とか言うていじめる(いじる)芸になりがちなんやけど、そういうのがないのがいい」と評価して、最終決戦でも唯一この組に投票してくれた(他6人はすべてアンタッチャブルに)中田カウス師匠が、翌05年に続いて、今回も88点しかつけませんでした。感想を聞いてみたかったですね。

東京ダイナマイトは、今回の顔触れではパンクブーブーハライチの次くらいに楽しみにしていたんですが、おとなしかったですね。所属がいつの間にか吉本に変わっていた。サブ司会の上戸彩さんが「(ハチミツ)二郎さん全然動かなかったですね」と思いがけず慧眼に指摘していましたが、もともと松田に比べて動きの大きいタイプではないハチミツにしても、もう少し笑いの起爆スイッチとして機能するネタで勝負してほしかった。おとなしかったというより、“薄かった”と言った方がいいか。採点発表のあと、松田がこれ以上ないくらい生気のない表情だったのも気になりました。

前回出場時04年、最終決戦出場ならず敗退の後、二郎は「ここ(=1st会場)に来る前は優勝できると思ってた、その時の自分を殴りたい」と言っていましたが、今回は来る前に殴って顔が腫れたのかな(もともとか)。

ハリセンボンは、はるかが肺結核復帰明けで会場の空気は温かかったように思いますが、結局は“女性枠要員”の域を出られませんでした。『侍チュート!』などバラエティでメインMC級のランクにまで来ている彼女らを枠要員に持ってこなければならないほど、現在の若手は女性コンビ不作なのか。『爆笑オンエアバトル』では最近ニッチェが頑張っていますが、まだ多ラウンド勝ち上がり制のM1は荷が重そうですしね。

ガリのはるかは天然、太めの春菜が毒入りで進行して来て、最後にはるかが一番毒のきついことを言って終了…という流れも、もうそろそろ慣れられてきたか。なんとなく、前回07年初出場時、彼女らの明るさと“品”を高く評価し、「女の漫才師は、恋人ができると漫才がつまらなくなる(から気をつけて)」とコメント、審査員中最高の93点をくれた上沼恵美子さんが、今年熱愛発覚があったはるかにどう言うか、その興味だけで決勝に残されたような感じもしました。

あとは順不同で。今回の決勝進出組中群を抜いて若い(両者23歳)ハライチ。今年の4『爆笑トライアウト』から『オンバト』本戦オンエアにこぎつけて以降、ワンスタイルながらどんどん押して来ている感がありましたが、さすがにM1決勝となると硬さが出ましたね。でもノリツッコミ担当澤部のつかみ「(会場・審査員ともに目立って反応が良かった笑い飯の後で)CMはさんで良かったですね」、無茶振り担当岩井の、審査後の「笑い飯優勝でしょ?」など、ネタ本編以外の部分でも味は出したし、結果9組中5位、初出場としては上々のデビューではないでしょうか。特にオール巨人師匠がパンクブーブーナイツに次ぐ89点くれたことは糧にしていいと思う。

澤部の独特の演技力もさることながら、いまはうすらニヤニヤしてるだけの岩井が“カエルのツラにションベン顔”キャラをもっと磨いて来れば、先輩組の誰にもいないユニークなコンビとして頭角をあらわしそうです。先輩の笑い飯がひとつ前の出番で、「お父ちゃんボクもうトリ嫌いや」と流れを変えたところですかさず「トリ進一だよ」と球種も変えてくる玄人芸ぶりを見せましたが、芸歴にして6年以上後輩のこの組も「控えめなフック」を二度使って、二度めに澤部が「変わらず」を付け加えるという出し入れ巧者ぶりを披露しました。ボケの数が多く隙間なく詰まって連射してればいいってもんではない、長めのネタの漫才においてはこの出し入れ、緩急舵取りのバランス感覚が大事。「カモシカにベット」はBedではなく、ルーレットのBet(賭け)だったのね。

モンスターエンジンは、昨年同様、神々の遊びを封印してオーソドックスな漫才にすると意外なほど味がない。「別にこんな古くさいことやらなくても、神々やれば簡単に笑い取れるのに」と思ってしまう。中田カウス師匠は「ちょっと品がなかったかな」と評していましたが、男コンビでカップルや夫婦役を演るコント漫才は向き不向きがあり、この人たちは向かないんだと思う。そういうネタ選びセンスも含めて意外に味がなかった。

番組進行としては、審査委員長島田紳助さんのスタンドプレイがちょっと疑問でした。特に笑い飯に関して、1stのネタ後の時点で「100点出したらこの後(以降出番の組の出来が上回っても、100点以上はつけられないから)困る、でも困ってもいいと思うくらい、いま感動してる」まで言ってしまうと会場の空気が完全に変わってしまう。メインMC経験も豊富な紳助さんがそれくらいわからないはずはないと思うのですが。「上沼(恵美子)さんも100点出したいと思ってるはず」なんて大きなお世話でしょうに。現に上沼さんは、この日の彼女の最高98点を与えた3組がまるっと最終進出を果たしており(4位以下の順位もすべてこの人の点順通り)、ジャッジャーとしての眼力は紳助さんよりはるかに優秀なわけです。

敗者復活で戻って来たNON STYLEいじりも、松本人志さんがウケ狙いで言ったのであろう「去年はオードリーに決勝で負け…」に乗っかって延ばすなど、審査委員長の地位濫用にも見える悪ノリが目につきました。もともとが吉本興業主体で運営されている催しだけに、“同じ吉本の先輩後輩の付き合いで好悪が決まり、審査にも影響しているのではないか”と、催し自体が痛くもない(のか?)ハラをさぐられることにもなる。

純粋に“若手でいちばんおもろいヤツを決める”というM1草創の志を大切にし、漫才界の発展に資したい気持ちがまだ幾許かでもあるなら、紳助さん自重が必要ですよ。女性マネへの暴力騒動でほんの一時期ちょっと大人しくしていたと思ったら、ヘキサゴン効果か事件以前を上回る増長ぶり、そろそろ“ネタとして、キャラとして図々しいヤツ”と半笑いで流せない域に来ている。先輩芸人さんたちも金持ちケンカせずと諦観しないで、もっとしっかり締めてやってくださいよ。

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