イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

浅墓なやつら

2009-12-18 21:42:54 | 夜ドラマ

16日放送の『相棒 Season 89話『仮釈放』はちょっと残念な出来でした。今Seasonでいちばん残念、と言うか、惜しいエピソードだったかも。昨年亡くなられた、『相棒』Season 2からの看板監督のひとり・長谷部安春さんジュニアで推理作家のハセベバクシンオーさん、Season 7で好評だった『越境捜査』以来の脚本登板とあって期待したのですけれどね。

26ヶ月の懲役を、10ヶ月残して模範囚として仮釈放を認められ、朗々と誓約文を読み上げ身元引受人の更生施設長(花王おさむさん)に「最高の気分です」と晴れ晴れした表情を見せる山部(大橋てつじさん)。しかしOPタイトル明け、彼は施設から行方をくらましていることが判明、特命係に捜査のお鉢が回ってきました。仮釈の翌日「運転免許再交付の手続きをしたい、どうしても今日中に」とタクシーで出て、その足でレンタカーを借りたまま返却がなかったのです。

実は山部が服役した罪は、職質中の検問突破による公務執行妨害。2年前、同乗していた主犯の村上(永倉大輔さん)とともに覚せい剤取引現場を襲撃してヤクと現金一千万円を強奪、村上の情婦でクラブ嬢の美代子(井上和香さん)に託した直後でした。

夜間検問にひっかかり危険を感じた村上は「おまえはすぐ逃げて、美代子にアレを何とかしろと言え」と山部を下車させ突破させます。すでに薬物既犯で執行猶予中だった村上は、ポケットのヤクを改められ現行犯逮捕実刑に。

一方、兄貴分の村上に言われるまま検問から逃走、美代子のマンションに走った山部ですが、従いません。「村上さんがパクられた、あのヤクが見つかったら再犯だし重罪になる、オレが隠すから出してください、村上さんに頼まれたんだから」と偽って迫り、焦った美代子は自分も薬物犯の一味にされる怖さも手伝って、山部に1kgもの大量の覚せい剤を預けてしまいました。

翌朝山部も自宅アパートで逮捕。こちらは初犯でもあり、村上より半年短い刑期で、別の刑務所で服役しました。

山部は何としても村上より早く出所して、自分しか知らない場所に隠した覚せい剤を確保し売りさばいて海外移住したく模範囚を貫きます。

おさまらないのは面会の美代子から、山部にブツを渡したと聞かされた村上。美代子も覚せい剤を取り返せば大金になると思い山部の出所の時期を探っていましたが、あきらめて面会にも来なくなってしまいました。

業を煮やした村上は同じ刑務所から、先に出所した窃盗犯の高橋(今話のナイスキャラ。寺十吾さん)に「調べて欲しい場所がある」と伝言を託します。高橋がシャバに出たら必ず美代子に一度は会ってみたくなるよう、「オレの女はいい女だ」とさんざん吹いて興味を持たせておきました。

高橋の伝言を受けた美代子、実は覚せい剤と一緒に預かった現金一千万円が手元に残っていたため、村上には「ヤクと一緒に山部に渡した」とウソをついてちゃっかり横領、300万円の宝飾時計を買うなど使い果たした後でもあり、再び欲の皮をつっぱらせ、村上から山部が隠しそうな場所を聞いて片っ端から物色。塀の中と外で、密な連絡を取り合うために2人が考え出したのは、本を差し入れて、中のページの活字にコンパスの針でマークする、点字ならぬ“穴字”の行き来による不正通信でした。

しかし村上が考えついた場所は、美代子が調べてもすべて空振り。そんな状態が3ヶ月ほど続いた頃、彼らが知り得ないうちに、別の刑務所から模範囚演技の甲斐あって山部は仮釈放。いの一番に運転免許再交付を受けレンタカーを借り、自分しか知らないはずの隠し場所に駆けつけますが、実は意外な人物が村上と美代子との不正通信を“横読み”していて………

………このエピソードが残念なのは、こういう一連の欲深小悪党たちの浅知恵応酬物語が、右京さん(水谷豊さん)のいつもながらの冴えわたる推理で、捜査側主語で一本調子にワンウェイでさくさく解かれていくだけになってしまったこと。

改心した模範囚と見えた男(山部役の大橋さん、冒頭の誓約場面では清潔感ある男前です)が仮釈放にかけた執念の意味、刑務所に情婦が来ても面会はせず(結構分厚め、活字ぎっしりの)本を差し入れては、さほど日数もおかずにまた引き取って行く不思議な来訪者記録から不正通信の手口がわかる、また皮肉にもいちばん“刑務所の怖さ”を知る立場の人物が不正通信を察知し、通信内容の焦点になっている他刑務所の受刑者の仮釈に網を張って、ブツ横取りをもくろむに至る動機など、「『仮釈放』と題するなら、ここを重点的に面白がりどころにすればいいのに」と思うところが、ぜんぶ右京推理で“通過点”になってしまった。

着眼、アイディアは推理小説が本業の人のホンらしく悪くなかったんですけれど、どっち側にふくらませばドラマとしておもしろくなるかの方法論が違ってしまったか。山部、村上、美代子のどれかが、“ドラマの準主語”を担える、Season 5『せんみつ』平田満さん、Season 4『殺人講義』石橋蓮司さん、同『書き直す女』高畑淳子さんクラスの大物俳優さんだったら叙述も変わってきたかもしれませんね。持ち前の豊満さとあさはかキャラが光った井上和香さんはなかなか好演でしたが。

一方、新入り・神戸(及川光博さん)の回を追うごとの特命順応ぶり、味出し具合はますますおもしろいですね。ナマ死体が苦手なだけじゃなく、死体の鑑識写真も離れて横目で見てるし、もう灰になったのしか埋まってない墓地ですら居心地悪そうなのね。

“欲の皮小悪党たち物語”だった今話、主犯の意外な人物が右京さんから最初に“怪しリストに載せられる”きっかけになったひと言はさすがに神戸、キャッチできなかったようですが、愛すべきコソ泥・高橋の一度ならず二度までもの「クチすべってポロリ」は右京さんと同じタイミングで気づいて、気づけたことが嬉しくて仕方ない様子でした。“和風爬虫類”系の鉄仮面顔・及川さんだからこそ、微妙な表情の表出に思わず注目してしまう。走り出す前は半信半疑でしたが、かなり余人を以て代え難いナイス抜擢だったかもしれません。

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orz …泡、いい!散ろう!

2009-12-16 15:28:54 | 国際・政治

選挙にあまり勝ち過ぎるのも良し悪しですね。この1ヶ月ほど特に、鳩山政権が政権として何ができるか、何をどうするかではなく、“小沢一郎さんの本性露呈鑑賞フェア”になっていますな。

本当に、こんなにわかりやすく“圧倒的多数を率いて、数的優位をかさに着てブイブイ言わせる”ことが好きで好きでたまらない、そのことを隠そうともしない人は珍しいと思う。国会議員140人を含む600人超の大人数で、ジャンボ機数機に分乗して北京入り、なんて騒がれていますが、“軍団”風大集団のハタガシラに立って「オレに付き従って、オレをあがめたてまつってる人間がこんだけいるんだぜぃ」と見せつけるのが至上の喜びで、一生、毎日でもやっていたい人なのでしょう。“小沢ガールズ”なんて冷笑気味に言われていますが、ガールズとかボーイズとか、どうせなら若いほうがいいとか、若くても男のイケメンは目障りだから近くにおかず後ろの方にするとか、そういうことはあんまり考えていなさそう。あくまでアタマカズどれだけ人の壁作れるか、遠くからでも黒山に見えるか、自分がしっかり中心人物に見えるかが命。

小沢さんにしてみれば、この数的圧勝、自民党にいたときから長年待ちに待った、夢にまで見た至福の状況です。毎日有頂天、楽しくて楽しくて仕方がない。「生きててよかった」。そりゃ皇室の政治利用のひとつもやってみたくなりましょうて。

神輿にかついでる、一応党首で一応総理の鳩山由紀夫さんが、「米軍駐留はさせないで、国の外に退去していただいて、なんかあったらこっちから呼んで、飛んできて防衛してもらう」なんて夢物語を公言してはばからない、妖精みたいな人なので、ますます小沢さん、安心して強腰ゴリゴリでいられる。

こういう人って、政治家に限ったことではなく普通一般人の、ご近所町内会、職場にも普通にいます。友達が多い、知り合いが多い、味方が大勢いる、居酒屋やレストラン、ショップに行っても店長店員、常連客がこぞって自分に挨拶し一目置いてくれていることを手柄にしている人。年賀状暑中見舞い、何百枚来た何百枚出すを得々と吹聴する人。検査の入院でもしたら、見舞い客の途絶える時間が5分でもあると落ち着かない人。自分の葬儀には地元でいちばん大きな会場の大きな部屋を確保しておかなければと腐心する人。

しかし民主主義社会においては、やはりいちばん政治家が“任”でしょう。民主主義は多数決、数持ってる者の勝ち。数を束ねる、数を率いることを何より得意とし誇りに思える人にとって、民主国家の政治家以上に向いてる職業はないと思う。

日本は、現存の日本人中、日本一政治家の資質にこってり恵まれた人を、総理ではないけれども総理より力のある、えーと、なんだ…そう、つまり裏の大番長に迎えたのです。こりゃあ良くなるぞ日本。ウナギのぼり青天井。楽しみだねえ。小沢さんで良くならないなら、もうどの日本人を政治トップに持って来ても望み薄でしょう。

ひるがえって、話はミクロになるけど、“数”の話になると、月河はからきしダメだったなあ。社会人一年生、新入社員のときは、叱られたりドヤされたりセクハラされたりしながらも、どうにか泳いでこられましたが、2年めになると「新人をつけるから、アシスタントとして使いながら仕事を教えてやるべし」と言われる。こうなるともうやりにくくてしょうがない。人を使いながら教え、指示を出し、時に駄目出し時に褒め、評価してやり、次の目標を与えまた駄目出し褒めて評価し…という能力が、月河はつくづくありませんでした。

使って教えて指示して評価してやらなければならない部下が増えれば増えるほど行き詰まり、結局、1人だったアシが3人のスタッフになり、5人の部下になり、6人めが増えそうだ…となったところが月河の会社人間としてのエンドになりました。その先も別の業種や勤め先を経験しましたが、部下を率いなければならない職種は一度もなし。おかげで、諸般の都合でやむなく退職、辞職という事態になっても、「お願いだから辞めないで」「淋しくなります」「アナタが必要なんです」なんて言ってくれる子分も手下も配下もシンパも、どこにもひとりもいたためしなし。

比較するのも失礼だけど、小沢さんとは正反対に、“アタマカズ背負ってる、自分の後ろに大勢いる”という状態がわずらわしいんですね。ひとりじゃできない大きな仕事をやってみたいなんてさらさら思わない。自分以外の誰かの分まで責任負うのがとことんヤだというチキン卑怯者。

かと言って、“勝ち馬に乗れ”“寄らば大樹”ともあまり思わないんだな。だから多数決取るような場面で、多数派に入ることも滅多にありません。「世の中どこへ行っても、自分と同じ意見や所感じゃない人のほうが多い」「自分がおもしろい、美味しい、カッコいい、綺麗だと思うもの、世間一般はそう思ってない」が当たり前だと思って、この何十年生きています。

小沢さんがわかりやすく肩で風切っているからそう思うのかもしれないけれど、ここのところの日本人、“勝ち馬にしか乗らない”、なんなら“勝たない馬に乗るくらいなら歩き死ぬ”傾向がいや増しになってはいないでしょうか。小泉劇場のときも、今般の政権交代選挙も片や圧勝、片や惨敗。TV番組も、何てことない格闘技が50%超えるような視聴率取ったかと思うと、取れないドラマはどんなに力作、良作でも、回を追うごとに数字を落とし簡単にひとケタ落ちするようになりました。

「少数意見も尊重する」本当の意味での、大人な民主主義は日本に向かないのかもしれない。一郎小沢功成って万骨枯る、国破れて、破綻して、民滅んで、山河ならぬ小沢だけ在り、みたいにならなければ良いですが。どう見ても、ガチンコ差し勝負の“日本”対“小沢”なら、小沢のほうが勝ち目ありそうなんだな。中国味方につける気満々だし。小沢くん得意の“アタマカズ”なら中国だし。

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FISHとパ・ピ・ヨ・ン

2009-12-14 17:41:06 | 夜ドラマ

NHK『外事警察』はすごいことになっていますね。筋立ての、脚本のどこがすごい、役者さん誰某が、どの場面のどのセリフがすごいと、指差し特定できない総合的な凄さ。

11月半ばから12月半ばまでという変則的なクールでの放送で、NHK土曜のこの枠諸作の中でも、数的にはどれだけお客さんを掴めたか微妙ですが、2009年の連続ドラマの中ではズバ抜けた出来と言っていいと思います。

1980年代後半、月河がレンタルビデオで外国映画鑑賞盛りの頃、「アメリカのポリス・アクションやクライムストーリーには、よくよく“警察上層部がラスボス”設定が多いな」と思ったものでした。正義の主人公はたいてい下っ端か、出世コースに乗れない、暴力上等、酒バクチ上等のはみ出し野郎。かつ夫婦仲、家庭は破綻。

それはいいのですが、『外事』は“組織の身内に敵”をはるかに飛び越えて、“誰が誰に対して敵やら味方やら”、さらには“最大の敵はおのれ自身”の域にまで踏み込む、犯罪ものドラマの極北に挑戦している。どっちに転ぶか、どこから敵が現われるか、誰が豹変するか、片時も目が離せない。この緊張感は、95年『沙粧妙子 最後の事件』以来です。

渡部篤郎さん、『ストーカー ~逃げきれぬ愛~』(97年)、『ラビリンス』(99年)、藤田まことさん版『剣客商売』(98年~2000年)ぐらいしかちゃんと見たことはありませんが、演技力や存在感には何の文句もないものの、如何せんあの独特の声色と口調ですからね。どっちかと言うと勘弁してほしい俳優さんのひとりでした。

しかし今作は唯一無二のキャスティングですね。通り一遍の多重人格とかそういう意味ではなく、幾重にも重層した人間形成が、あるときはラッキョウの皮を剥くようにべろりと、あるときは貴婦人のドレスをひるがえすようにちらりと、垣間見えてはまた隠れる、隠れても隠れるたびに赤裸々になっていく。演出や撮影の妙ももちろんですが、やはり渡部さんの見せ方が素晴らしい。TVの、地上波の、土曜ゴールデンタイムの、連続ドラマではきわめて稀に見る、入魂の演技と言ってもいい。入魂過ぎて、観てるこっちも始終息苦しくなったり血圧上がったりしますが、それでも目が離せないんだな。こういう感覚も『沙粧妙子』の浅野温子さん以来です。

そう言えば、鉄条網や廃工場を思わせるダークインディゴな風景に赤い花が一輪咲く、EDクレジットの映像も『沙粧妙子』を連想させるところがあります。敵を欺くには先ず味方から…という公安の世界は“己の敵は己”の剣豪や求道者の物語にも似ている。

渡部さんの住本、『ラビリンス』の野崎先生みたいに「誰でもいつかは飛びたてる…」なんてつぶやくのどかなエンドを迎えられるかしら。

次回第6話(1219日予定)が惜しくも最終話ですが、“テロの恐怖をも商品に変える”テロより怖い大きな力が真の敵だったという展開になりそう。甘っちょろめで青めで安めながら人間らしい、女性らしい共感性で住本に添う交通課警官上がりの新人外事・陽菜(ひな)を演じる尾野真千子さんの、ノロマくさくうざったくなる寸前で踏みとどまった背筋の伸び方も好感度大です。

以前にもここで書きましたが、脚本古沢良太さんは『相棒』で、テンプレートにはまらない独特の構成と味のある、かつ速度感緊迫感にも富んだエピソードを幾つも書いておられます。『外事』でこれだけ鉱脈掘りあてたのを目の当たりにすると、何としても『相棒』に帰ってきてほしいと思ってしまいますが、今Seasonは無理かなぁ。

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かくし芸大会か!

2009-12-12 19:40:04 | スポーツ

先週の何曜日だったか、NHK BS‐1でフィギュアスケートの、今季のNHK杯を再放送していましたが、安藤美姫選手のフリーのクレオパトラ、アレ少しバリ島ダンス入ってませんかね。

どうも日本選手のフィギュアの、特に女子の振り付けってともすれば“エキゾティシズム”(欧米から見たオリエンタル”に走ってスベる傾向にあるんじゃないでしょうか。

スケートだけに“滑る”のはしょうがないのか(←コレ言うと思った人、パソコンの前で挙手)(…ハイ下げてよし)。

たぶん根底に「美しいと思ってもらえなければ上位が望めないのがフィギュアスケートだ」→「しかし、欧米金髪長身美女基準では、胴長短足で頭のでかい日本人のプロポ、目鼻立ちがちっこくて地味な容貌は不利だ」→答え一発「欧米人が別建てで見てくれる“エキゾティシズム”“オリエンタル”で目くらまし」という計算があるのだと思う。

確かに安藤選手の顔立ち、浅黒めの肌色に、リズ・テイラー風つり目メイク、黒×ターコイズ×金のエジプシャンなコスチュームはよく似合うと言えなくもない。

しかしなあ。何となく、現代の若い日本人選手や、日本人観客層が一般的にイメージする“美しい、かわいい、セクシー”に比べて、フィギュアスケートのプログラムを考える人たち(コーチ、監督、振付師?)のそっちのセンスって、30年か40年ぐらい遅れている感じがするのです。

いまに始まったことではなく、92年のアルベールビル五輪でも、伊藤みどり選手がパッツンパッツンの体型にポニーテイルで、ラフマニノフをバレエ風に演っていました。ダークワインの沈んだ色調のコスチュームともども、どう考えても伊藤選手のイメージに合ったチョイスとは言い難く、なぜもっと彼女の持ち前の健康さや、はじける元気さの活きるイメージに作らなかったんだろう?と不思議でした(結果このフリーで大巻き返ししての銀メダルでしたが)。

当時のみどりさんと言えば女子選手では世界的にも少ないトリプルアクセル・ジャンパーだったのですが、やはり彼女の図抜けた身体能力をもってしても「大人の女性らしい美しさを出さねば」という“芸術点”縛りからは自由になれなかった。

男子なんか50年以上遅れてますよ。織田信成選手のチャップリンって。本人22歳、知らないだろう。日本人で、あれを「カッコいい、おもしろい」と感じるのは、戦前の浅草が主娯楽だった年代だけじゃないですか。

が、そう言えば、94年のリレハンメル五輪では当時世界選手権4連覇中だったカナダのカート・ブラウニング選手が『カサブランカ』を使ったし、一時日本でも大変な人気だったフランスのフィリップ・キャンデロロ選手は『ゴッドファーザー』でした。前回トリノ五輪だったかその前のソルトレイクシティだったかでは、名前忘れたけど『ウエストサイド物語』の選手もいたような。

“困った(or演技アイディアに詰まった)ときの名作映画ヒーロー”という鉄則みたいなものが、男子のフィギュアにはあるのかな。

ってことは、そのうち、胸に三角囲みの“S”つけてマントひるがえしたり、赤地に蜘蛛の巣格子柄のぴたぴたボディスーツ着たり、いっそアイスホッケーマスクにパーカーでノコギリを持った選手が銀盤を躍動する日も近いかもしれませんね(………)。

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ワサビ多めに

2009-12-11 20:39:39 | 夜ドラマ

『相棒Season 88話『消えた乗客』は、前週の予告映像で予断持って期待したような“バスジャックもの”“(移動する準密室としての)バスもの”と言うより、普通に“意外な犯人もの”と言ったほうがいい転帰になりました。

そこへ着地するまでに、Season 1『人間消失』にもあったメリー・セレスト号ばりの集団失踪ミステリー?→身代金目当ての集団誘拐?と“大ぶり”に一転二転させてから、犯人と思われる男と、運転手との接点を見つけて焦点が絞られていく過程は、意外犯人ものミステリとしてなかなか悪くなかったと思います。

月河はSeason 2『同時多発誘拐』が印象深かったため、“被害者の中に首謀者が必ずいるはず”とはなから思っていたので、自力で逃げたという保険外交員・恵(中川安奈さん)が絶対怪しいと見てしまい、結果ハズレではなかったけれど、ちょっと拍子抜け。

“乗り合い移動密室もの”の古典・オリエント急行ばりに、犯人も運転手も乗客たちも全員グル(たとえばバス会社社長脅迫目的とか)という展開もある時点までは予想しましたが、乗客が恵と犯人を入れてたった4人では迫力がなく、この可能性は早々に捨てました。これ路線なら少なくとも総勢10人、なんなら立ち乗りもいるくらい満席のバスでないと絵的な意外性が出ません。

運転手中島(松田洋治さん)が、高校教師時代の同僚恋人由紀(浜丘麻矢さん)の硫化水素自殺はストーカー男(平野貴大さん)による逆恨み偽装殺人だったことを、たまたま乗客が他にいない夜の便に乗り合わせた恵との世間話で知り、犯人と思われるストーカー男の氏名で偽IDカードを作って、恵と口裏を合わせてバスジャック集団誘拐を偽装、警察に男を手配させ見つけさせ逮捕させ、当然(偽装ジャックですから)証拠不十分で釈放されたところを襲って復讐…という計画。口裏合わせ協力してもらったと中島は思っていた、その恵のほうにもう一枚上手(うわて)の魂胆があって…というラッキョウの皮的構成もまずまずだったのですが、惜しむらくは“大ぶり”の発端から、“小ぶり”なストーカー私怨殺人へと、Google Earth的に下方収斂する落差の料理ぶりがいまいち。小さな発端の背後に巨悪が糸を引いていたというクレッシェンドな顛末より、料理のしようではずっと物語的ダイナミズムのあるお話になったはずなのですが、ややもったいなかった。作劇としていささか高度な要求かもしれないけれど、以前にもここで書いたように『相棒』でバスがらみというと期待値ハードル上がってしまいますからね。

むしろ今回は、2年前の被害者だった由紀の“本命は同性の恵”“恵を忘れようとして同職場教員仲間の中島と交際するも、趣味のダイビングスクールでバイト指導員にストーキングされ逆恨み殺害さる”“死後真相を知った中島も恵も、それぞれにストーカー男に復讐を企図”という、小ぶりな竜巻の芯のような人生に皮肉と痛ましさを見るべきかも。

男性と恋愛し結婚する普通の女性の幸福を望まず、ある程度世間を欺いてでも本当に愛する恵と、戸籍や法制の外で添い遂げることができればそれがいちばんよかったのでしょうが、まだ若く将来の長い由紀としては、先に老いて行く、しかも自分より収入の不安定な外交員の恵しかパートナーのいない人生は不安だったのでしょう。

「何としても異性とパートナーシップを築き普通の女性の人生に変えたい」と焦っていた由紀の、どこか尋常でない挙措が、不幸にもストーカーを近づける契機になってしまった。“何かから逃げよう、否定しようと必死”なたたずまいは、まじめで堅物で思い込んだら一途な理系教師マインドの中島にも、たまらなく愛おしく見えたかもしれない。切羽詰った、心理的に窮境にある人間にはある種の色気が漂うものです。

堅気の女性ひとりと男性ひとりを本気にさせ、不まじめなフリーター男をもそそった女性が、自覚なく自分の周囲に捲き起こしてしまった磁場の強さゆえに殺害され、本気の2人に復讐心を起こさせ、引き会わせ、利用し利用されの犯行に至らしめた。クレジットに役名も出ない、二転三転どんでん返し話のきっかけ担当だけみたいな扱いでしたが、この由紀という女性に視点を据えると、独特の興趣が湧いて来るエピでした。

レギュラー視聴の“相棒ラー”にとっては、神戸くん(及川光博さん)待望の花の里デビューが、右京さん(水谷豊さん)の「おやおや」であっさりめに終了したのも物足りなかったか。今Season1話『カナリアの娘』ラストで神戸が「機会は積極的に作らないと、ね」と右京に“連れてって攻勢”かけていたのを受けてのやりとりなどもありましたが、どうでしょう、サウンドトラックに『花の里ブルース』という佳曲もあることだし、一度、「右京さんが来店できず不在の間に、或る事件がらみで花の里にレギュラー関係者が入れ替わり立ち代わり千客万来する」というエピソードを作ってもらえないでしょうか。

花の里経験済みの小野田官房長、鑑識米沢さん(六角精児さん)、捜一伊丹(川原和久さん)、陣川警部補(原田龍二さん)、たまきさん(益戸育江さん)の正体は知っているが花の里は知らない組織犯罪対策5課角田課長(山西惇さん)はもちろん、その他捜一の残り二名も、大小コンビも、なぜか大河内監察官(神保悟志さん)も五月雨式に次々来る。

で、たまきさんは一貫してすっとぼけてにこやかに接客だけしている。知っている人は知っているなりに気をつかって、あるいはニヤニヤと、知らない人は知らないから当然、“特命杉下警部の行きつけ”という事実と、女将の正体に触れない。

で、結局現時点で知らない人には知られないまま、事件は解決して全員撤収、誰もいなくなったところにご本尊右京さんが「大変だったようですねえ」と現われる(←もちろん事件解決はこの人の推理のたまもの)…たまきさん「いいえ、楽しかったですよ、なんだかおもしろい人たちばかりで」

…要するに、“花の里が実質、作戦参謀本部になるのに、なっている間じゅう右京さん(だけ)が来店しない”という状況で一話できないかなと。そろそろ、花の里という“場所が主役”のエピもあっていいと思うので。

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