イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

もーアッタマってきた

2009-12-21 16:34:11 | お笑い

おめでとうパンクブーブーM1グランプリ2009優勝

先々週だったか、お昼の『スクランブル』に、「今年の決勝進出組が決まりました!」と8組が飛び入り紹介されたとき、ハライチ以外は“いまさら感”の強い顔触れだなぁ…と微量落胆して視聴意欲がかなり下がってしまったのですが、中でいちばん「この人たちが実力妥当だし、取らせてあげたい」と素直に思えたのが彼らでした。

3年ほど前、しばらくご無沙汰していた『爆笑オンエアバトル』視聴復帰したとき、テンポ的にもネタのクオリティ面でも、それ以前とは別組かと思うほどの上達ぶりでわくわくさせてくれたし、新ネタを見る機会があるたび、度肝抜くほどの派手さや新奇さはないけれど、ネタ毎、ネタ見せ毎の出来不出来の少なさ、いま最もM1チャンピオンにふさわしい組ではないかと思っていました。審査員7人全員一致選出のチャンプは、06年のチュートリアル以来ではないでしょうか。

何よりボケの佐藤の、毎度の“自信満々のウザ迷惑キャラ”が、毎ネタ実にいい匙加減なんだな。「“堂々とズレてる”可笑しさは認めるけど、それにしてもマジうざい」と拒否感不快感を覚えるちょっと手前に、距離としては本当にちょっとだけなんだけど、でも確固と踏み止まっている。これ、本当に微妙だと思うのです。全然芸風違うのに引き合いに出して悪いけど、“押し”“主張”型のボケ、『オンバト』常連組で言えば、ランチランチ上々軍団、ネタによってはハマカーンタイムマシーン3辺りも、おもしろさ可笑しさをウザさが踏み越えてしまうことがある。パンクブーブーの場合、ツッコミ黒瀬の、“何だかんだで御している”感とのバランスもいい。

最終決戦の“陶芸家に弟子入り志願”ネタは昨季の『オンバト』チャンピオンファイナルでも見て二度めの視聴でしたが、非常に計算されたブラッシュアップで、前回視聴時の軽く2倍は笑えました。前回は、陶芸家でなくても、武術家でも小説家でも何でもよかったのでは?と思ったのですが、「先生の皿がマジ、ツボ」で見事に固定した。これで一気に演じられている世界が具体性を帯び、“笑いやすく”なった。

オール巨人師匠の笑い飯評ではないですが、ある状況を設定して小芝居仕立てで進行するコント漫才の場合特に、“状況、情景が目に浮かぶ”ということが大事なのです。本式のコントと違って、背景セットや置き道具持ち道具、扮装が漫才は無いですから、高座落語と同じ、観客視聴者の想像力への挑戦になる。「先生のところがウチからいちばん近いんです」は、「ひょっとしたらアパートの隣の部屋なんじゃ?」と決勝1stラウンドのネタと地続きに想像してしまいました。

1stのこの“騒音隣人”ネタが手堅かったのも最終決戦への追い風になりましたね。後半、2人で指さし合って悪態の応酬になったときは、『オンバト』08年ファイナルでのプラスマイナスの悪夢が脳裏をよぎったのですが、“悪態は悪態でも、佐藤の悪態があまりに特殊”(→なおかつこの後「出て行け!そしてその目で世界を見て来い!」と、結局悪態と真逆に収束する)というバイパス的可笑しさで、これまた見事に掬い取った。月河がこの人たちを好評価したい理由はこういうところにあるのです。にぎやかでテンポがいいだけでなく、バランス感覚がいいんですね。こういう組は、安定して笑えるから「コイツらおもしろいよ」と人に安心して薦められるし、ラテ欄に名前があるととりあえず見てみようと思う。

過去のM1チャンプの中では、サンドウィッチマンのようなワイルドな瞬発力は感じられませんが、アンタッチャブルのような高原状の安定感は確実にある。今季新システムで進行中の『オンエアバトル』でも視聴者投票1位組にコマを進めているし、引き続き健闘を期待です。

1stの“鳥人(とりじん)”ネタが強烈で、同ラウンド2位のパンブーに17点差をつけ、瞬間風速的には優勝当確ムードで会場を席捲した笑い飯に関しては、審査員松本人志さん島田紳助さんが「燃え尽きた」「(最終決戦用の)ネタ2本めは無い」とそれこそネタ的に予測していた通り…というわけでもなく、要するに(パンブーと対照的に)ネタ毎の完成度の上下動が激し過ぎ、M1決勝の二段構えのシステムに適していないのだと思う。1st紹介Vにもうたわれていた前人未到の8年連続決勝進出も未だ無冠は、すべて“同レベルのネタ、演りデキを2本続けられなかった”の歴史なわけです。

しかし、1stで「(鳥人)だいたいわかったから、やらしてくれや、それ」と西田が言ったとき会場から沸いた拍手こそがこの人たちの財産です。出来そうに思うのに他組が誰もやらない“交代Wボケ”は、さぁこっからソレやるぞという素振りだけでこれだけウケる、オンリーワンの看板になった。2本に1本ハズれだとしても、ひとつも看板に瑕をつけるものではない。マルク・シャガール画伯がこのネタ、吹き替えででも視聴したら、感動して“タキシードを着た鳥人が、ぼんやり見えるインコを子供にプレゼントする”絵を一枚描いてくれて、いまごろルーブル美術館に展示されてますよ。もう『オンバト』は出てくれないかな。

……あと、トリ進一やテバ(手羽)真一が出てくるなら、「トリ繁久彌や、トリ光子を迎えに行く途中や」ってのもやってほしかっ……………不謹慎ですね。自主トリ下げ。

昨年チャンピオンでありながら敗者復活戦に回り、1st3位に食い込んで最終進出の意地を見せたNON STYLEに関しては、“意地を見せた”に尽きるでしょう。03年優勝のフットボールアワーが04年、05年と不出場で勝ち抜けかと思ったら06年に再び挑戦して来たときにはあまり肯定的に受け止められませんでしたが、ノンスタは連続挑戦だけに“好ましい貪欲さ”を感じる。若手若手と呼ばれつつもじんわり露出を増やしてTVの中での居場所もそれなりに作った組が、念願かなってネタで大きなタイトルを取ると、今度はTVでのネタ披露の機会が減りバラエティMCやフリートーク賑やかし役に回されがちな地合いが、ここ56年続く中、上沼恵美子さんらに「フリートークがダメ」とからかわれながら「ほんならずっとネタで押したる」という負けん気を見せたと思いたい。2本が2本ともツッコミ井上のナルシストイキリ&ボケ石田の細長体型モーションネタで押したのも、結果勝てなかったけれど、06年のチュートリアルを髣髴させる思い切りのよさでした。来年はフリートークも頑張ろうね。

最終進出ならなかった他6組も、“いまさら感”は漂いつつもそれなりに味は出し、一見しただけで敗退決定と思える組はありませんでした。彼らに関してはまた後日。

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