イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

美しいものは美しい

2008-04-16 20:45:22 | アニメ・コミック・ゲーム

『花衣夢衣』14日(月)~の3週めから金沢篇に入って、それらしい家並みや雪景色などのロケシーンも増えてきました。

昼ドラで屋外ロケ、特に交通整理や多数の通行人エキストラが必要な街頭シーンは、全60余話を通じて数えるほどしかない作品もあります。もちろん製作費と撮影時間と撮影量との三つ巴バトルである昼帯ゆえの制約ですが、ある意味監督さんや編集スタッフの腕の見せどころなんですね。

たとえば資料などとしての有りモノ街頭映像を12秒マクラにしてから“ビルのエントランス”や“邸宅門扉”のセットでのシーンにつなぐと、俳優さんやカメラ録音機材をいっさい“外”にお運びすることなく、スタジオに居っきりで結構な“街頭感”を映像に盛り込むことができる。

その意味では今作、東海テレビ開局50周年記念ドラマにふさわしく、資金やハード面はかなり通常作より潤沢に投入しているなということはすでに画面から窺い知れます。

ただ、「そんなところにおカネ使ってもらっても…」といまいち“有難み”が薄いことも否めません。

月河が日舞や茶の湯や華道書道などの“和”方面の造詣に乏しいので、“和だから高級”“和だからセレブ”“和だから色気がある、情感に富む”といった、“和だからこそ”をプラスに評価する感覚の回路を持っていないせいもある。幼い頃から着物を着るお母さんやお祖母ちゃんが身近にいて、着物にあこがれて育ち、呉服や畳紙の匂いがしただけで胸がときめく…といった女性視聴者なら、そこそこ素直に嬉しい絵柄に仕上がっているドラマかもしれません。

逆にそういう人は、真帆や和美(萩尾みどりさん)らが劇中で着る着物の製品レベルや着付けセンスのアラが見えてあまり楽しめないかな。

こちらはとにかく、和だろうと洋だろうと中華だろうと(←またトータルテンボスか)“人物の情念のぶつかり合いで衝き動かされるダイナミックな物語”をひたすら期待しているので、13日(火)放送の第12話での真帆(尾崎亜衣さん)と将士(眞島秀和さん)との路上遭遇はちょっと説得力が薄い感もありました。

身ひとつで加賀友禅作家である伯父(仮面ライダーぶいすりゃー宮内洋さん)に弟子入りして3年修業ひとすじ、「アンタは姪でも従妹でもない、お弟子さんなんよ」「和美さん(萩尾みどりさん)も生活に困って、真帆をうちに寄越したんやわ」と冷たい伯母に女中仕事まで課される日々の真帆は、米兵レイプの一件以来異性との接触をことさら避けてきたふしも窺えるので、免疫がないゆえに東京から来た垢抜けた御曹司に、迷惑がり戸惑いつつも心が揺れ動いて…というのは結構ありそう。ここまではいい。

昭和28年、戦後の窮乏から復旧しつつある東京から、加賀友禅の仕入れに来た老舗呉服店総領(長兄は戦死?早世して繰り上がり跡取りらしい)、もちろん商用と見学がメインでしょうが、“女主人としてうるさい母の目のとどかない地方でちょっと羽根伸ばしたい”気持ち含みの金沢出張だったはず。旅がもたらすハイテンションは夜目遠目傘の内とは言え、地味で野暮ったく色気封印な真帆に、あっさり目がハートになるかな。

やはり路上でぶつかったときに真帆が取り落として、拾ってあげた白生地の「シボのないなめらかな手触り」に、まず着物・織物のプロとしての“触覚”がラブモードになり、それを大切に抱えていて「少しでも汚れたら使いものにならないんです、気をつけてください(プンプン)」とマジおかんむりな真帆に“これだけの素晴らしい生地の価値を愛しめる感性のひとなら、どんなにセンスある、情こまやかなイイ女だろう”と転移した、というのが正直なところなのでは。

今日(16日)放送の13話では、「とにかくこの店を切り盛りしていけるしっかりしたお嫁さんを早く」と母(田岡美也子さん)からの見合い攻勢で“いい家のご令嬢”に飽き飽きしている描写もあり、偶然出会ったお地味な真帆の“友禅作りで頭がいっぱい、結婚も色恋も念頭にない”雰囲気が新鮮に感じられたのかも。

眞島さん扮する将士、そういう“運命的一目惚れ”の説得力にちょっと欠ける。将士は軽く軟派寄りで、東京人の商家倅らしく、玄人女相手ならば遊び慣れてますよという雰囲気や、おとぼけ浮わっついた調子もあっていいキャラだと思うのに、眞島さんがどちらかと言うととことんシリアス・もの悲しさを背負った役を得意としている、そのギャップも影響しているかもしれない。「ボクとは二度と会いたくないですか?」とテンパった告白の最中に「あ!時計忘れてきちゃった!オヤジの形見なのに!」とズッコケて真帆が思わず噴き出すくだりはいかにもムリヤリでいただけなかった。ボケても可笑しくないし、取ってつけたみたいに笑うほうもどうかしてるだろうと。

主役ふたりのいまいちっぷりに比べて、真帆の従姉に当たる友禅家娘の淳子(民部洋子さん)のわかりやすい意地悪さは実にいいですな。安心して見ていられる。

昨日12話で着ていた、カットワークレースの飾り衿が中原淳一スタイルブック風。加賀友禅の家のひとり娘なのに洋服ばっかり、という時点で“人生に何の目標も持たない、頃合いみてそこそこの嫁入りする以外親から期待もされてない、ヒマもてあましたプー娘”感ありあり。真帆の兄弟子で色入れ担当の安藤(長谷川朝晴さん)にラブだけど振り向いてもらえない…という状況のようですが、一応当時としては恵まれた境遇のお嬢さんなのにビタ一文幸せそうに見えず、羨ましくも思えない感じがよく出ている。

演じる民部さん、他局のドラマで拝見したことあるようなないようなですが、劇中で“この人物を快からず、敵意を持っている”って設定与えられると役者さん、俄然精彩を増しますね。真帆も澪(尾崎由衣さん)も、和美なり万平(斉木しげるさん)なりに噛みつくシーンはやたら元気がよく声も出ていたもの。

将士の病弱な弟・祐輔に『仮面ライダー555の善良一般人代表・溝呂木賢さん。この枠では『新・風のロンド』のヴァイオリニスト以来2年ぶりで、役に合わせて?減量して頬もコケさせ青白めのメイクでの登場ですが、真帆&澪ヒロイン姉妹の相手役には、むしろこちらのほうがお似合いの年格好。ちょっとボケたりズッコケたりの芝居も『555』以来得意そうで、心臓を患って寝たり起きたり動きの少なそうな役どころはもったいなかったかな。

まぁキャスティングは決まってしまったことなんで、“コノ人じゃなくアノ人だったら…”なんて無駄な妄想してもしょうがない。現行キャストでどれだけ見せてくれるかです。

コメント
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