イエローフローライトを探して

何度も言うけど、
本当にブログなんかはじめるつもりじゃなかった。

これに関しては心の距離

2007-06-17 15:10:55 | スポーツ

 『爆笑オンエアバトル』を何週か続けて観ていて、つくづく思うのは「コレ、厳密には、あくまでも“ネタ番組”であって、“お笑い番組”じゃないんだよな」ということ。

 01年5月に、地元収録で一度、客席審査員になったときに知ったのですが、放送時のオンエア順って、現場での演技順通りではないんですよね。

 現場での演技と言うかネタ見せ順はガチ抽籤ですが、放送においては、その日の最高kb獲得者を最初に持ってくることだけが決まっていて、あとはTV番組としてバランスがいいように、切って、入れ替えて、つないで編集されている。

 たとえば、オンエア組の中にピンが2人いたら、2人続かないように、コントコントの後に漫才漫才と続かないように、あるいはもっと繊細に、コントの中でもドタバタ系同士、シュール系同士が続かないように…など、視聴者が観やすく、より面白がれるように、(悪く言えば)加工がほどこされる。

 これはTV番組制作の態度としては正しいのですが、このために視聴者は、生きた現場での客席の“温ったまり具合”のカーブを、放送では共有できないわけ。

 放送だけ見ていて、「この人たちの、この程度のネタが、どうしてこんなに玉集めたんだろう」「すごく面白いと思うのに、なぜあの組のあのネタより玉少なかったんだろう」と疑問に思うときは、たいていこの“席の温ったまり”が関係していると思う。

 収録現場はナマものですから、トップバッターなら前説さん(たいてい地元の若手芸人)のツカミがヘタだったり、2番手以降なら、前の演者が露骨にドン滑ったりすると、ものすごく寒い空気の中で演らなければならず、結果、まあまあ演れたのに玉が入らないこともある。

 また、似たような設定で似たような芸風のネタが現場で2つ続くと、たいてい玉はどちらかに偏ります。

 “お笑い演芸”をTV番組にするなら、本当は、客席のノリもなるべくリアルに視聴者に共有させるように作るべきなんでしょうけど、『オンバト』はネタの見本市、標本箱みたいなものだから。

 ただ、オンエアを見るとき、そこらへんを念頭に置いてから見ないと、何か毎回、どこかでちょっとずつ釈然としないものが残るかもしれません。

 6月15日放送では、しばらく見ていなかったパンクブーブーが見違えるようなキレのよさで文句なしのover500。

 月河は、この前オンエア見たのがいつか思い出せないくらい久しぶりでしたが、この人たち、こんなに面白かったんなら、なぜもっと早くチャンピオンズ大会やM‐1辺りで上位ラウンドに来なかったんだろう。

 故・東野英心さん似デカ顔のボケは野太い胴間声、メガネのツッコミはややハイトーン。「隠れた才能を活かしたい、たとえば命乞い」という、唐突だけどいい勾配なフリは、アンタッチャブルのオンバト時代の「自殺しようとしてる人を止めたい」をちょっと思い出させました。冒頭のこのバカバカしさで強力にツカんだ。

 「それは、関空」→「それは、Can you?」ときて「スペースシャトルの部品」「それは、わからない」の流れが笑ったな。で、そこでひとつピークを作ってから、速攻「おーいボール取ってくれー」の前の地に戻したところがうまいと思う。オンバト不慣れだと、あそこらへんで次のチャプターに切り替えたくなる時間帯なんですよ。この人たちは規定時間の使い方を心得ている。この日は1年ぶりの挑戦だったようで、月河がオンバトから離れていた間に、化けるきっかけを掴んだのかもしれません。作家さんがついたかな。

 ストリーク。この人たちも久しぶりに見ました。こちらは見事に化けないなぁ。ここまで頑固にワンパターンだと、いっそ潔いね。パンブーに次いで、この日2組めのover500出ましたが、はっきり「客側からのサービス」と言い切れる。

 「今岡選手がホームラン打った後」とか「落合監督のベンチ内」など、元をわかった上で「似てる~!」と笑ってる人なんてほとんどいないでしょう。この程度の似かたでわかるほどの前がかりなタイガースファン、ドラゴンズファンなら、逆に笑いのハードルがもっと高いと思う。

 オチの「んーどうでしょう」に端的にあらわれているように、このボケの人、一気に持ってく力は声帯・形態模写に関してはあまり無い。それより、「似てようが似てなかろうが、何やっても野球(ネタ)にするぞ」という“ズレた一点集中ぶり”がこの人たちの笑い所。

 たとえばジャイアンツのV9時代とか、西武ライオンズ秋山がバック転してた時代とかじゃなく、日本のプロ野球がとことん“オッサンぽくてダサくて失笑もん”の代名詞になった、2007年のいまだからこそ、笑える芸風と言えるでしょう。

 それより気になるのは、年中ユニフォーム姿のボケ(=山田)、もとからヒョロい体型ではあったけど、あんなに顔色悪かったっけ?なんか、顔の細さや窪んだ所の影の出かたが、長期療養入りする直前の故・カンニング中島を思い出させるんだよなぁ。縁起でもないか。でも、オンバト常連クラスの若手さんたちも、連勝したり見かけなくなったりしつつ、気がつけば三十路にさしかかってるんですよね。病気だけは笑えないし、ツッコめないからな。気をつけてほしいです。

 ラブ守永は初見。とりあえず体の切れはいいし、名刀長塚、佐久間一行辺りの常連ピンと比べると、イタさは少ないほう。「いただけないなぁ~」「とんだ1人相撲」等、あえて“軽くアナクロ”の語彙や言い回しを使うディテールのセンスはある。ただ、ツッコミ役のいないピン芸のつね、ピリッと笑い・ピリッと笑いの積み重ねで、大ノリの大爆笑にならないので、全体にもうちょっと愛嬌が欲しい気も。オチもヴィジュアル的に中途半端。

 この日2組オンエアなったトリオの一方・フラミンゴは、アンジャッシュが得意とする“勘違い”“思い込み”“ミスコミュニケーション”ネタで月河の大好物だったのですが、いかにも単調と言うか、一方向なのが惜しい。

 後から乗り込んできた2人連れが「窓側じゃないんですかぁ」「窓側じゃねぇよ、替わってくれたら別だけど、そうはいかねぇだろ(物欲しげ視線チラチラ)」で“2人が窓側席の客を、親切で気のきいた人ではないと、微量「チッ」と思っている”という下地ができ、これがコント全篇の底流になっているのですが、勘違い→小耳にしてイライラ→勘違いエスカレート→辛抱たまらず指摘→通じず誤解→さらにイライラ、の繰り返しなので、「笑って止まり、また笑って止まり」で発展がない。

 窓側客だけが一方的に“病的にコミュニケーション下手なイタい人”に終始してるのも息苦しくカタルシス不足。

 最初に窓側客が「あぁ、ボクなら新幹線慣れてますから替わりましょう」と譲って、2人組が“借り”ができ、「親切な人だから」「何言ってるのか意味わかんなくても、ぞんざいに対応したら申し訳ない」という下地にしたほうが、“親切と親切にこたえたふりが、さらなる勘違いをよんで…”と拡げられたし、善人たちなるがゆえのミスコミュニケート・コントとして格が上がった気がする。たとえば東京03なら、あるいはかつてのプラスドライバーなら、このネタどう料理したかな…と、ふと思ってしまいました。

 もう1組のトリオ・初挑戦初オンエアの三福星は、計量順が演技順だとすればはっきり前の2組のover500での“席の温ったまり”に引っぱられて流れ込んだ玉数だと思う。フラミンゴ(405kb)より入る(421kb)要素が、どこ切っても無いもの。メリハリない、盛り上がりない、オチも客がパッと見「あんなメタボったおっさんなガキいねーよ」と思った、そのまんまがオチ。こういうことが、オンバトはあるんだよなぁ。

 初挑戦ゆえに声が、出るべきところで出てなかったことがメリハリなさに直結してたふしもあるので、大甘に見て次回に期待かな。

 ま、この回に限らず、“人工的に整理配列された標本箱”であるがゆえの不自然さ、ギクシャクさも込みで楽しむ姿勢がないと、ちょっとツラい番組かもしれません『オンバト』。

コメント
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