『麗わしき鬼』第45話は、嘉門洋子オンステージ!!という感じで終了。いやー「熱演と 言われる役者の 芸の無さ」なんて川柳もあるので、そこらの路上パフォ集団レベルならともかく、TVでレギュラーとってる級の俳優さんには“熱演”なんて表現はなるべくしたくないんですが、本当に熱っつかったなぁ、留美。
ドラマ公式サイトの嘉門さんインタビューでは、「映画『卍(まんじ)』と『エクソシスト』を観て演技の参考にした」とありますが、男+女2の関係を描いた谷崎潤一郎原作『卍』はともかく、『エクソシスト』がどう参考に?…と思ったら、憑き物、御祓いと来ましたか。
朝イチ眉川邸玄関で憎っくき洵子の靴にムカデ仕込み、昼は診察室強襲→メス投擲で揺さぶっておいて、夜は洵子母である富弓の店で泣き落とし。洵子が心配して駆けつけてくるのを待ってどうにかしてやろうとナイフを隠し持って、恨みの本当の深さを知らない富弓が「アナタは心が優しくて純粋だから、さまよっている悪いモノが寄ってきてしまうの。私でよければ落としてあげましょうか」と提案してくれたまでは「これで除霊されてると見せかけて大暴れできるウマー!」だったのでしょうが、富弓自身も気づいていない鬼子母神様の強力な浄化力が、秘めていた留美の本性を呼び覚ましてしまった。
思うに、床に転がって効果音とともにカッ!と目を見開いたところが、“ふり”と“ホンモノ”の境界だったんでしょうね。「カタキじゃあー!」と洵子に襲いかかったところを、犀一に取り押さえられてみずから階段転落。一同我にかえって階段下を見下ろすと、留美の姿はどこにもなく…と何やらオカルトっぽいスーパーナチュラルな終幕。
退院してきた悠子「留美がひとりで駅前を歩いてるの見たって人がいるの、ガリガリに痩せて、肌もカサカサで老婆みたいだったって。あんなのはもうたくさん」…おいおい、悠子が勝手に寵愛して、執着させて、挙句ポイ捨てしたからあんなんなっちゃったんだろうが。
階段から落ちて倒れていたはずの留美が、店の出入口も開閉することなく忽然と消えた謎は残りますが、43話終幕で悠子にIKIから追っ払われた時点で、もう留美の実体はなく、あとは“ワタシの悠子センセイの心を奪った洵子憎し!”のネガティヴな情念だけが具現化した霊体だったのかもしれません。
富弓の祈祷で一瞬、奇跡的に情念が実体を得て洵子にナイフで襲いかかったけれども、情念が浄化されるとともに意識も失くなり、実体も消失したのかも。
誰かが駅前で目撃したという“痩せ細って肌カサカサ”な留美は、悠子と出会ってから身も心も捧げ尽くした肉体の残滓でしょう。すでに情念も、魂もない抜け殻。
こうしてみると悠子は罪なことをしたもんだなぁと思いますが、「もう心が自分にはない」とわかっている相手にムダに執着した上、奪う画策をしたわけでもない、むしろ悠子の愛の濃さに辟易しているぐらいの洵子のほうに恨みの鉾先を向けた留美の煩悩深さが招いた事態ではあります。
今週はすでに43話で水上が無残な形で退場していますが、留美の末路とあわせて“人間の、分を超えた欲望が招く桎梏と罰”ウィークともなりました。