弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(商標)】もうちょっと突っ込んだ元号「平成」の登録 

2018年03月27日 08時27分18秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
気持ちの良い青空が広がる今朝の湘南地方です。

さて、今日も商標関係のこちらの記事

(PRESIDENT Onlineより引用)
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来春「改元」で「平成」が商標登録可能に

天皇陛下の退位が2019年4月30日に決まった。翌5月1日には皇太子殿下が天皇に即位して、新元号へと改元される。まさに歴史的イベントだが、譲位をビジネス目線で捉えている人たちもいる。改元に伴い、「平成」の商標登録が可能になるからだ。

現在、「平成」を商標登録して商品やサービスの名前として独占的に使うことはできない。商標法3条1項6号は、「その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標」は登録できないと定めている。この規定にどんな名称が該当するのか。特許庁「商標審査基準」は、例の1つに「現元号として認識される商標」をあげている。つまり現元号の「平成」は商標登録できないということだ。

ただ、登録できないのは現元号だけ。過去の元号「昭和」や「大正」が商標登録可能であるように、新元号に改元されれば「平成」も登録可能になる。「平成」を商品やサービスの名称として独占的に使いたかった事業者にとって、改元は待ちに待った解禁日になるわけだ。

(以下略)
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(引用終わり)

ま、表面的には一見正しいんですけど、ね。
確かに6号の商標審査基準には

4.現元号を表示する商標について
商標が、現元号として認識される場合(「平成」、「HEISEI」等)は、本号に該当すると判断する。


と明記されている。

と同時に、3条1項該当の判断時点について

1.判断時期について
本項に該当するか否かの判断時期は、査定時とする。
なお、拒絶査定不服審判請求がなされた場合の判断時期は、審決時である。


と規定されている。

そして、通常審査には現状のプラクティスではファーストアクションまで6-7月かかっている。

だから、「改元は待ちに待った解禁日」は、間違い。
出願人が国内だとして、先願の地位を取りつつフライングにならないギリギリのタイミングを考えるとしたら、

・出願~ファーストアクションまでの期間=約6月
・拒絶理由の応答期間=40日
・期間延長(最大)=2月
・応答後審査期間 =一概に言えないが、最短1週間程度~最長数か月
・拒絶査定が出たとして、不服審判請求期間=3月
・審理期間=6-8か月(2016年特許行政年報による)


上記をトータルするだけで、最短でみてもざっくり18か月程度。
その他あれやこれややってたら21か月くらい前に出願すれば、審決時点では上記審査基準にいうところの「現年号」ではなくなっていることになる。
不服審判まで行くことを考えなかった場合でも、ざっくり10か月程度前に出願すれば査定時にはほぼ確実に「現年号」ではなくなっていることになる。

そんなわけで、6月終わりか7月頭に出願して粘れば、審査段階で「平成」の商標登録をゲットできることになる、、、はず。
もちろん「先願主義」なので、“不服審判上等!”で出願するエクストリームな『商標ビジネス業者』(なんて死んでも認めたくないが)がいた場合は4条1項11号で登録を受けられない。
更に、分割出願なんかでもっと先願な人がいたらその人に負けることになる。

そんな目線で、「平成」の語を含んでいる出願をちらちらと検索してみたら、
なかなか良いタイミングでされている出願も既にある様子。
個別企業の話になるので詳細はそれぞれ検索してみてください。ただ、諸般見るにまっとうな(そして上手な)出願だと思います。

どちらかというと、既に「平成」を社名に含んでいる会社さんは、この段階で出願を検討された方が良いんじゃないか、と
一弁理士としては思います。

※旧元号に関する審査基準の改訂や審査の運用変更が無い、ということが前提の記事ですので、悪しからず。
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