弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【知財記事(特許)】伝統知識や遺伝資源を使用した特許の起源明示義務

2024年05月27日 09時15分16秒 | 知財記事コメント
おはようございます!
曇り空の@湘南地方です。

出張から帰ってきて色々リフレッシュされているはずなのだけど
梅雨入り前を感じさせるこの空気の湿り気がイマイチ気持ちの高揚を抑制するのか。

さてさて、今日はこんな記事。

(中日新聞より引用)
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特許出願で起源明示義務 先住民知財保護、WIPO
 【ジュネーブ共同】
世界知的所有権機関(WIPO)は24日、企業が新製品の開発で先住民の伝統知識や動植物の遺伝資源を使用した場合、特許出願時に起源を明示させる条約に加盟国が合意したと発表した。AP通信によると、南米アンデス山脈に生息する植物に由来する新薬の発明といったケースを想定。植民地の入植者に搾取されてきた先住民の知的財産を保護する目的がある。
(以下略)
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(引用終わり)

…判るような判らないような話だけど、
WIPOでこれまでの争点が簡単にまとめられていた。

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実質的な争点
遺伝資源には薬用植物や農作物、動物の品種改良が含まれます。

自然界に存在する遺伝資源は、知的財産として直接保護されることはありませんが、遺伝資源を使用して開発された発明は、多くの場合特許を通じて保護の対象となります。遺伝資源は現代の科学研究で利用されることが多いため、特許発明は遺伝資源に基づいている可能性があります。
遺伝資源の中には、何世代にもわたる先住民や地域コミュニティの利用と保全によって、伝統的知識と結び付いているものもあります。この伝統的知識は科学研究に利用されることがあり、したがって保護の対象となる発明を生み出すことに寄与する可能性があります。
同時に、遺伝資源および関連する伝統的知識は知的財産の領域を超えて、生物多様性条約 (1992年) およびその名古屋議定書 (2010年)、ならびにその他の国際協定で規定されている、遺伝資源へのアクセスと利益配分 (ABS) に関する取り決めの対象となります。

ハイレベルの政策課題
現代の生命科学研究は、遺伝資源や伝統的知識を利用した研究を含め、人類に多大な恩恵をもたらしています。しかし、遺伝資源および関連する伝統的知識に基づく発明に対して、新規性や進歩性、産業上の利用可能性などの特許性の要件を満たしていなくても特許が付与されることを、多くの国が懸念しています。このような「誤った特許」の付与により、遺伝資源および関連する伝統的知識の不正利用が助長されるとの議論があります。これは俗に「バイオパイラシー (生物資源の略奪行為)」と呼ばれています。

科学者や企業、公共部門の研究機関が、科学研究の多大な恩恵を享受しつつ、生物多様性に富む国家や先住民、地域コミュニティ、ひいては科学界全体の利益を保護するために、特許制度はどのように貢献できるでしょうか。
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こうした制度上の不都合ないし不具合の修正のために、「追加開示要件」として「遺伝資源および関連する伝統的知識の出所や原産国に関する情報」(特許性に直接関係しない情報であったため従来は開示義務がなかった)についての開示義務を定めることが提言された、というわけ。
…まあ、そういう情報ソースがないと審査する側も先行技術を検索することが事実上難しいだろうしなぁ。。

上記は知財法の枠組みだけでなく生物多様性、南北(先進国-途上国)の対立問題も含みながら協議をされ、今般合意に至った、ということ。
革新は伝統の基礎の上に成り立つところ、制度的な枠組みそのものがアンバランスだったのでその是正、という見方が適切なのだろうか。


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