弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

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【農水知財】大間まぐろ「再出願」にみる時代の変化

2022年11月02日 10時01分57秒 | 農水知財
おはようございます!
気持ちの良い青空広がる、でも風は少しだけ冷たい@湘南地方です。

さて水曜日。テキパキ進めて今10時過ぎ。ブログ書くの忘れてたと思い今エントリ。
集中している証拠。

今日は、こんな記事

(日経電子版より引用)
====================
「大間まぐろ」漁場問わず ブランド維持へ定義変更

青森県大間町の大間漁業協同組合は1日から、主力ブランド「大間まぐろ」の定義を変更した。これまで卸売市場へ出荷する際に貼るステッカーを「大間沖」で取れたクロマグロに限定してきた。今後は、漁場を問わずに大間の港に水揚げされ同漁協が荷受けしたものに変更する。温暖化でエサとなるイカなどの不漁が続き、質のいいマグロを求め漁場を拡大していることに対応した。
(以下略)
====================
(引用終わり)

この記事だけ見ていると、“組合内部の規定だけを変更したのかな”と思って気になった。
「大間まぐろ」は地域団体商標として登録されており、その指定商品は
「青森県下北半島大間沖で漁獲されるまぐろ」
となっている。

登録されている範囲より広いもの(大間沖以外で獲れたまぐろ)にも「大間まぐろ」を付していた、となると
登録商標の不正使用、ということにもなりかねない。

とやきもきしていたら、こちらの記事にもう少し詳しく経緯が載っていた。

(読売新聞より引用)
====================
「産地偽装では」と指摘もあった「大間まぐろ」、定義を緩和へ


漁協がステッカーに用いている「大間まぐろ」が特許庁から2009年11月に商標登録された際、定義を「大間沖で漁獲されるまぐろ」としたが、近年は漁場が拡大していることなどから「産地偽装ではないか」と指摘されているためだという。

今回の変更は21日の理事会で決定し、特許庁に26日付で再出願し、受理された。登録までには半年以上かかるとみられることから、11月からはステッカーに「特許出願中」の文字を加えて対応する。

再出願の背景には、漁業環境の変化がある。登録時の09年頃は大間沖が漁場の中心だったが、近年は不漁で津軽海峡全域や太平洋までマグロを追うようになった。マグロが回遊魚であることから海域を限定する意味合いは薄かったが、出願時の定義と異なってきたため対応を模索していた。
(以下略)
====================
(引用終わり)

地域団体商標登録の場合(というかそもそも商標登録の場合)、登録されてからその指定商品を補正(変更)することができない。
なので、もともとの指定商品の範囲よりも広い定義にしたい場合には、今回のように「再出願」となってしまう。

こういう事態を見越して、例えば最初から「大間漁港に水揚げされたまぐろ」のように広く記載をしておけば良いのに、という見方もあるかもしれない。
確かにそうなのだけれど、本件の出願当時って制度導入されて間もない頃で、各関係当事者が皆手探りでやっていた状態。
審査もやたら(不必要なくらい)厳しかった印象がある。
今は特許庁も「一緒に権利を作っていく」なスタンスで極めてフレンドリーなので、再出願は良い選択肢だと思う。

というのと、環境変化は深刻なのだなぁ、ということを実感させられる。
ご縁があってしばしば地域ブランド立ち上げの支援に関わらせていただくことがあるけれど、
"その土地で昔から取れていた一次産品が取れなくなり、代わりに別の産品が取れるようになったから、それを使った特産品を作りました"
というパターンにしばしば遭遇する。
「大間まぐろ」の件だって獲れる海域が変わってきたからこその話で、まだ水揚げされているから良いけど獲れなくなったらブランドもへったくれもなくなる。


(右側が大間まぐろ)

適切な価値付けをして流通させるためにブランド保護は重要。
というのと、消費する側に立ったときその価値を受け止めて消費することもまた大事。
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【農水知財】「みやぎサーモン」、ベトナムで地理的表示登録

2022年10月06日 08時32分27秒 | 農水知財
おはようございます!
急に気温の下がった@湘南地方です。

といいつつ執務室内では袖まくりしてやってますが…
まあ10月だものなぁ。多少は涼しくなってくれないと。

ということで、今日はこんな記事

(VIET JOより引用)
================================
日本の「みやぎサーモン」、ベトナムで地理的表示登録

日本の地理的表示(GI)産品である宮城県の「みやぎサーモン」が、ベトナムでGIとして登録された。「みやぎサーモン」は、海外において直接申請により初めて登録された日本のGI水産物となる。
これにより、ベトナムにおいて「みやぎサーモン」の模倣品について行政上の救済手段や輸出入における水際措置の活用が可能となり、現地でのブランドの保護に寄与することになる。
(以下略)
================================
(引用終わり)

記事によれば、水産物も含めた産品としては「鹿児島黒牛」「市田柿」に続いて3例目とのこと。
あれ、直接申請? ベトナムとのリスト交換(相互保護規定)ってまだ成立してなかったんだっけ…?と思って調べてみたら
こんな記事にあたった。
改正農林水産物・食品輸出促進法の施行が11月とのことなので、そこからそう遠くなく協定締結されるのだろう。

GIは「海外輸出」の保護には特に効果的だと思う。
商標権の権利行使(エンフォースメント)はなんやかんや労力がかかるのに対して、GIの場合は政府による取り締まりが行われる。
単純に、権利行使コストに差がある。
…とはいえ、海外での権利行使って実際のところどういうプロセスを経て行われるのだろう?
例えばこちら=「日EU・EPA解説書」の06頁なんかには「EUで日本のGIを保護」と抽象的に書いているけど。
日本の場合農水大臣から措置命令が出され、応じない場合には刑事罰の対象にもなる旨規定されているけど、諸外国でも同様の規制なのだろうか?
…そうやって考えると、まだまだ勉強足りないこと多いなぁ‥

ともあれ、生産者が連綿と作り上げてきた品質を守ることは、本人だけでなく需要者にとっても利益のあること。
そのための仕組みとしてGIが有効に機能することを望む。
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【農水知財】ルビーロマン流出

2022年09月20日 11時40分50秒 | 農水知財
おはようございます!
ネズミ色の雲が空を占領している@湘南地方です。
…って、もうお昼ですね。

結局、今日は台風の直接的な影響はそれほどはなく。
でも昨日はとにかくいきなり土砂降りに見舞われるなど、かなり不安定な天候の一日でした。
…って、これから影響あるのかなぁ。やだなぁ。

とまあそういうわけで、今日のトピックス

(日本農業新聞より引用)
===========================
ルビーロマン流出 知財保護体制強化急げ

国内で開発した品種の海外流出が後を絶たない。石川県の最高級ブドウ「ルビーロマン」が韓国で流通していたことが分かった。
ブランドを守り育ててきた産地の努力を踏みにじるもので、経済的損失は大きい。国は知的財産の保護へ体制強化を急ぐべきだ。

(以下略)
===========================
(引用終わり)

この話題、実は1年以上前から知られてはいたようで。
(たとえばこちら)。

シャインマスカットもそうだけど、同じことが繰り返されている。
育成者権管理機関」の早期設置、稼働が待たれるところ。

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【農水知財】育成者権管理機関

2022年07月13日 08時23分51秒 | 農水知財
おはようございます!
☔雨シトシト な@湘南地方です。
なんか、季節の順番が逆になったみたいな。
先に夏が来てその後に戻り梅雨、っていうの?

低気圧だと調子ももう一つですが、まあ頑張ります。

さて、今日はこんな記事

(JAcomより引用)
==================================
農産物の登録品種など知財の海外流出防止へ「育成者権管理機関」を 農水省有識者検討会 2023年度設置めざす

農産物の登録品種の海外への流出などを防ぐため農林水産省が設置した有識者の検討会は7月8日、流出防止などへ向けて、「専任的に知的財産権の管理、国内外での侵害の監視・対応、海外ライセンスを行うことができる育成者権管理機関を設置すべき」との中間論点整理を公表した。今後、検討を深めて年内をめどに育成者権管理機関のあり方について最終とりまとめを行う。

・・・・
新品種の海外流出が問題となる中、新品種を知的財産として保護する種苗法の改正で、品種開発をした育成者権者が登録品種の海外持ち出し制限や自家増殖の許諾性を活用することで、流出防止に取り組みやすくなったとされる。

しかし、実際には公的機関や個人の育種家、中小の種苗会社では、知財管理の体制や予算は限られ、登録品種の管理を十分に行うことは難しいと検討会は指摘。さらに海外での侵害を監視することは困難で、種苗法が改正されても実際の対策は不十分なのが現状とされている。

こうした現状に対して検討会は、育成者権者の意向をふまえて、育成者権の信託や利用権の設定を受け、専任的に知財を管理する育成者権管理機関を設置すべきと提起した。
(以下略)
==================================
(引用終わり)

記事によれば、フランスなどでは種苗企業が出資して設立したシカソフという団体が国内外の4400品種を管理し、年間98億円から126億円のロイヤリティを得ている、とのこと。
国策として日本の農水知財を守る、という体制の方が、この分野の特性を考えれば適切なのかもしれない。

“しくじり事例”として言及されるシャインマスカット、ちゃんと保護していなかったばかりに年間100億円規模で損失が出ているとも。
まあそれはそうなんだけど。
知財保護って先行投資の側面は強いからなぁ。制度を改正したから即状況が改善する、というわけではなく。
企業体力というか経営基盤がしっかりしていないと、中長期的な施策を打つことが難しいのは民間企業も国も同じ。

機関の運営自体は民間で行うことが適切、とされており、こういうところに新たなビジネスチャンスが生まれる、のか?
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【農水知財】産業構造審議会 知的財産分科会 第16回弁理士制度小委員会

2020年12月01日 08時09分26秒 | 農水知財
おはようございます!
12月!初日から快晴、な@湘南地方です。
幸先良い。

さて、今日は掲題の件
(タイトルが固い)。

議事要旨より
=====
農林水産知財に関する業務を弁理士業務として追加するという日本弁理士会からの提案について討議が行われ、顕在的なユーザーニーズが確認された海外出願支援業務及び相談業務を弁理士業務に追加する方向で検討することが了承された。
====
→「国内出願支援業務」については弁理士業務に追加する方向ではない、ということね。
 まあ、GI申請の件数も年間50件を切っている状況、品種登録も個人の出願は200件を切っている状況。
 パイとしては大きくはないんだよね。

 しかし、だ。
 大前提としてどちらも「知財」なことは確かなわけで。
 その出願手続をできない、という現状は“いびつ”という他はない。
 商標はできるけどGIはできない→じゃあ商標出しましょう、というアンバランスな提案を助長する状況はどうなの?
 (注:当職自身が相談を受けるときには、制度ごとの利害得失をご説明した上で適切な選択肢を提案する。んで、相談費用はチャージさせていただく。
    →ただこれも、結局ワンストップでできる方がユーザにはメリットが大きいと思うんだけどね…)

まあ色んなパワーバランスの産物であろうことは了解はしているけれど…うーん、
「相談業務」を標榜していただかなくても、もともと相談は受けているしなぁ。それが業務範囲外なわけでもないし。
まだ決着がついているわけではない、のかな、どうかな?
 

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【農水知財】地域ブランドと消費者評価

2020年09月08日 08時39分31秒 | 農水知財
おはようございます!
今日は暑さがぶり返しそうな雰囲気の@湘南地方です。

さてさて。
知り合いの同業者からこんな情報をいただきました。

地域ブランド活用による高付加価値化の取組と今後の展開―地理的表示等の活用と消費者評価―

特に関心を惹かれたのが、GI、地域団体商標の
「登録後の効果に対する調査対象者の認識」について。
(上記の「第3章」第26頁~に記載)

各地域の生産者が期待したこととして
「模倣品防止」
「価格の上昇」
「認知度の向上」
といった項目が上がっていたのに対して、

登録後の効果として、
「模倣品抑止」を実感した生産者団体は比較的少なかった一方で
「認知度向上」は殆どの団体が実感。
「価格の上昇」は、認識した団体とそうでない団体が半々程度。

聞き取りの仕方に拠るところが大きいとは思うのだけど、ストーリーとしては
“地域としてブランド品をしっかりと作っていくぞ!”
Lv.1→“GI申請/地域団体商標登録するぞ”
Lv.2→“あ、登録を受けるためには生産体制とか過去の実績とか色々整理しなければいけないんだな”
Lv.3→“自分たちの産品のことを整理してみたら、改めて「良いもの」じゃん!”
Lv.4→“生産体制もこの際きっちりしようぜ”→物そのもの以外の周辺品質(パッケージなど)も含め品質向上
Lv.5→アピール頑張る
Lv.6→認知度向上+価格上昇。パッケージなどが「正規化」したことで模倣品が排斥される(ただ生産者団体自身はあまり気付かない)
…といった感じなのではないかと。

セミナーなんかでは良くお伝えしているのだけれど、
「制度に合わせて“整理”していくことで需要者への訴求ポイントが明確になっていく」
という効果は、確実にあると思う。
まだ全体は読んでいないけど、
感じていたことの裏付けが示された状態で、腹落ち感があるレポート。




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【農水知財】有力ブランド、日英協定で最終調整(ブレグジットの影響)

2020年08月03日 08時43分45秒 | 農水知財
おはようございます!
朝から夏ソングをBGMでガンガンにかけてます@湘南地方です。
今はARASHIの「夏疾風」がかかっています。

さて、今日はこんな記事。

(JIJI.comより引用)
===========================
「スコッチ」「神戸ビーフ」保護 有力ブランド、日英協定で最終調整

日英両政府が今夏の大筋合意を目指す新たな貿易協定で、「スコッチウイスキー」や「神戸ビーフ」など双方の有力農産品、酒類のブランドを保護する見通しとなったことが1日、分かった。発効済みの日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)と同水準の保護策を導入する方向で日英が最終調整に入った。
===========================
(引用終わり)

ブレグジットの影響で日-EU EPAからイギリスが外れるので、これを改めて担保する措置。
記事見出しは「スコッチ」と「神戸ビーフ」を並列で書いているけど、「スコッチ」はお酒なので酒類GI(日本では国税庁管轄)ですな。
ちなみにこれまで日-EUでどういったものが相互保護の対象になっていたかと言うと、こちらとかこちらに詳しい。

そもそもブレグジットも、このコロナ禍の影響を少なからず受けているものと思われる。
移行期間は延長されるのかな…と思っていたがこちらの記事を見る限り既に延長期限も過ぎているとのこと。
さてさてどうなることやら。


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【農水知財】豚入門

2020年07月24日 08時32分35秒 | 農水知財
おはようございます!
今日も梅雨空曇り空、な@湘南地方です。

さてさて、連休二日目。
昨日はそこそこ運動もできたし野菜も取れたし。
体調は改善で来たんじゃないかな。

そんななか、FBつながりのお肉屋さんの投稿を見て脊髄反射的に購入。
銘柄豚肉ハンドブック2020

※牛肉の方はamazonでは在庫切れやった…。

購入の目的:
・銘柄豚肉の全体像の把握
・商標登録/GI登録している銘柄の比率の把握
・銘柄規約(=生産基準、と思えば良いのかな?)の有無と可能ならばその内容

要は、銘柄肉が銘柄肉として地位を維持確立していくための仕組みと実践状況、
理想と現実にギャップがある場合、それはどこに理由があるのか、について調べてみたかった。

収録されている銘柄数は全部で420。
これらのうち商標登録しているものは、ざっと見この6~7割くらい。
一方、「~豚」「~ポーク」×指定商品「豚肉」(32A01)で登録されている商標の数は1126。
地域特産品化を目指してとん挫したものが少なからずあるのか、単にアンケートに対応してないだけなのか
(収録されているのはアンケートに回答したもののみ)。

各銘柄の「特長」欄を見てみてもスタンスはさまざまで、
独特の飼料を給餌したり、地下●●mから汲み上げる自然水を与えていることを熱く書いているものもあれば、抽象的情緒的な表現にとどめている(具体的な中身には触れていない)ものもあり。

こうやって見てると、「豚」って一括りにしちゃいけないくらい個性あるなぁ、と思う。
ちょっとずつ勉強していこうかと思います。
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【農水知財】十勝川西長いも、知財功労賞

2020年07月02日 08時30分52秒 | 農水知財
おはようございます!
昨夜の土砂降り雨が嘘のような“すかっ晴れ”の今朝の@湘南地方です。
…はい、昨夜は完全に帰るタイミングを間違えました。
「人生で歩いた土砂降りランキングベスト3に入るかもな…」なんてことを考えながらびちゃびちゃ帰っておりました。

さてさて、経済産業省、特許庁が表彰する「知財功労賞」。
その中に帯広市川西農業協同組合が名を連ねていました。
受賞のポイントはこちらに記載されているのだけれど、
多面的な活動の結晶、というイメージ。

[ブランド保護]地域団体商標を北海道で最初に取得/GIも取得
[販路拡大] 国ごとの嗜好性に応じサイズを分け、国内では規格外の太物を台湾に輸出
[品質管理] 商標の運用管理規定を整備/HACCP認証取得/SQF認証取得

単に権利を取得するだけじゃなく(当たり前)、
品質を担保するマークとして商標を機能させるために品質管理を規格化している。

こういう運用をしっかり管理する人が中にいる組合は、強いよなー。
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【農水知財】種苗法改正、断念へ

2020年05月21日 09時20分01秒 | 農水知財
おはようございます。
今日もひんやり曇り空、な@湘南地方です。


さて、今日は甲子園の話題を書こうかな…と思っていたら飛び込んできたこんな話題

(毎日新聞より引用)
=============================
「種苗法改正案」今国会成立を断念へ 柴咲コウさんの懸念ツイートで慎重論拡大

自民党の森山裕国対委員長は20日、ブランド農産品種の苗木などを海外に持ち出すことを規制する種苗法改正案の今国会での成立を見送る方針を示唆した。農作物の自由な栽培が難しくなるとの懸念を野党などが示しているためで、記者団に「日本の農家をしっかり守る法律だが、どうも逆に伝わっている」と述べ、成立には時間が必要だとの認識を示した。また「国会には会期がある。まず森林組合法改正案の審議を進める」とも述べた。

(以下略)
=============================
(引用終わり)

…あーあ。

芸能人が政治に口出しするな、とかは全く思ってないですが、
どんな立場の人であれ、政治的な(※)発言するなら最低限、それなりに勉強してからにしませんか?とは思います。
(※)ここでいう「政治的な」=“立法その他で他人の権利義務関係に影響を及ぼす可能性がある話題についての”という意味です。

彼女は、「登録品種」と「一般品種」の違いを理解して発言されたのだろうか?
今回の改正案で自家採種が制限されるのは「登録品種」だけでした。
品種登録してるのに農家は自家採種OKっていう現状の方がむしろアンバランスだった、と思いますが。


個人攻撃をする気はありませんが、本件に関する最初の(と思われる)ツイートの書き出しが

“新型コロナの水面下で、「種苗法」改正が行われようとしています。…”

いやいやいやいや、本件、コロナの「コ」の字が出るずーっと前から議論されてましたから。
一官僚の思い付きや一企業の思惑で急に法改正にならないから(そのための官僚制度なわけで)。
有識者からの意見聴取とか、施行した場合に生じる影響のシミュレーションとか、色々ありますから。
そこに参加する人間も、もともとご多忙な方々なのにちゃーんと予習してきていて、その場のノリとかで発言しませんから。

柴咲さんご本人が本当にこう思って書いたのか、それとも誰かの依頼で書いたのかも分かりませんが。

ちゃんと情報ソースを見ようよ…
改正案はこちら
さすがにこれだとわかりにくいので、
法律案の概要がこちら

この概要をちょっと見たらわかるように、
そもそも今回の改正、
自家増殖(自家採種)の件だけではなく、
現物主義から特性表主義に(わずかながら)シフトすることで侵害立証しやすくなったり[←ここが一番インパクト大きいんじゃないかと思っていた]、
これまで問題になっていながら対処ができなかった海外流出に歯止めをかけるために育成者権の実質的強化が図られていた。

これらは、結果日本の農業の強化につながるはなし。

それが全部見送り‥‥
改正案に携わっていた方々のご苦労も存じ上げていただけに、なんともやるせない。

というのと、そうか、こういうの、ちゃんとわかりやすい言葉で発信していかなきゃなぁ。。。と。
烏滸がましいけど、ちゃんと情報発信をしていたら、こういう事態に陥らないために、
ほんの髪の毛一本分(※大事よ、一本だって髪の毛(笑))でも寄与できていた可能性もあったのかなぁ、、と。
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