弁理士『三色眼鏡』の業務日誌     ~大海原編~

事務所開設12年目!
本ブログがKindle本に!「アマゾン 三色眼鏡」で検索!!

【伝統と】ブランドと技術の融合【革新と】

2012年11月30日 08時31分55秒 | 実務関係(商・不)
今日も「がんばろう日本!知的財産権活用企業事例集2012」より、『株式会社東農園』。


この会社、創業が天保5年。
「1粒3千円」の梅干しを扱う。
単なる“成金志向”ではなく、
梅干し自体の価値を高めることを自社の使命と決めていた節もうかがえる。
ブランド維持のために直販戦略により希少性を上げるなど
目的を意識した選択を行っている。

本日現在の商標取得件数は43件(IPDLベース)。
それだけでも老舗企業としては知財に対して積極的な取り組みといえると思うのだけれど、
技術革新にも精力的。
これまで廃棄処理されていた梅酢の一部や梅調味液を活用するため、
産学官連携により共同研究を開始。それだけでなく自社内に
「梅科学研究所」も設立。
本日現在の特実公報発行件数は40件。

まさに、伝統と革新とが両輪となって更なる発展が見込まれる企業。


【教訓】
「一粒だからこその高付加価値化」
 →高品質+話題性により実現。
  この“話題性”というところは、少なからず「運」の要素もあるとは思うが、
 (たとえば藤原紀香の結婚式の引き出物で使われたことが話題となる、など)
  それもそこまでのプレゼンス向上への取り組みがあったからこそでもある。

  文中には「梅の王様『南高梅』にこだわり、その味を最大限に引き出す独自の製法を開発し…」
  とサラッと述べてあるけれど、この「独自の製法」を厳格に秘密管理してきたことが
  根底にあるんだろうなー、と思ったり。

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【かわいいは】トライアル需要の惹き起こし方【正義?】

2012年11月29日 08時56分48秒 | 実務関係(商・不)
ちょっと久しぶりに電車を利用。
で、ちょっと久しぶりにエキナカ散策。

うちの最寄駅には、monthly sweets(=月替わりで全国各地のスイーツのお店が出張してくる)
があり、時折覗いている。

んで、今月は、「シレトコドーナツ

こんなつぶらな瞳で見つめられては…

かわいさに負けて、お買い上げ。


ずるいよ。ドーナツの穴にこぐま…

お値段は、必ずしも安くない。むしろ安いケーキレベル。
5個入りで1,470円ナリ。


お味の方も、甘いものでは今年3本の指に入るおいしさ。
絶妙な甘さとふんわり感。
こぐまたちが穴から顔をのぞかせていなかったら、
このおいしさにも出会えなかったわけで。

ブランド的にも、ジェラート、生キャラメルなど、
複数のアイテムに横断的に統一マークを使用しており、
横展開の可能性を作っているところがうまい。
牛をそれとなくイメージさせるシンプルなマーク。
もちろん商標登録済。お手本のようなブランド戦略。


購入者に

“あー、やられちゃったなー。買っちゃったなー。仕方ないなー。”

と思わせる、言い訳を与えてあげる商品づくりも、
トライアル需要の創出には大事かな、と感じた商品。


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スマホの通知音

2012年11月28日 13時14分44秒 | 趣味・その他諸々の雑記
小ネタヒマネタ。


スマホ(XPERIA)の設定がいつの間にかコロコロと変わっていることが
しばしばある。

Google calendarの同期設定が解除されてたり、
アイコンが勝手に消えてたり。。。

ポケットに入れているときにボタン誤操作していたり、
アップデートで設定が変わったりするのかなぁ、と想像。

さしあたり今一番困っているのが、
メール着信の通知音を変更できない。

…いや、一応「設定」>「音設定」>「通知音」 で設定しなおしてるんですよ。
でも何度やっても、Gmailの着信通知が

「上からマリコ」

のままなんだよねー。
メールの通知音なのに、画面開くまでは延々と流れ続けるという罰ゲーム。
いや、麻里子様も推し(笑)だからいいんですけど…。

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【ノムさん】中心無き組織は機能しない【良く言ったっ!】

2012年11月27日 23時13分35秒 | 趣味・その他諸々の雑記
やわらかネタが久々、かな?


(以下引用)
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ノムさん、古巣の主砲・畠山に「ヒゲをそれ」

読売新聞 11月27日(火)20時30分配信

元ヤクルト監督の野村克也氏が27日、都内で開かれたヤクルト球団納会の前に小川監督はじめチーム全員に講演を行った。

 「プロ野球選手の心構え」と題して約2時間。野村氏が「講演というより実践的なミーティング」という内容に、選手らは熱心に聞き入った。

 1990年代にチームを3度の日本一に導いた名将は「中心なき組織は機能しない」という持論を披露。「V9時代の王、長嶋がそうだった。実力もさることながらチームの模範生。強いはず」と講演後、その意図を説明した。主軸の畠山には「ひげをそれ。小川監督に『畠山を見習え』と言わせる選手になれ」としった激励した。畠山は「面と向かって言われたので、『いいえ』とは言えなかった」と、来春のキャンプまでにそることを決意した。

=======================================
(引用終わり)


ホント、期待してますよ、ハタケさま。
ハタケが4番として十全の活躍をすれば、
確実にAクラス。


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【6次産業化の】トレーサビリティと地域ブランド【一つの在り方ですね】

2012年11月27日 08時57分52秒 | 実務関係(商・不)
今日も、「がんばろう日本!知的財産権活用企業事例集2012」より、
秋田銘醸株式会社」による取り組みについて。

【特筆すべきポイント】
1.先進的だったブランド戦略
 =大正時代に日本酒銘柄を“一般公募”。
  当時は「~正宗」といった銘柄が一般的だった中、
  「爛漫」という“ハイカラな”銘柄を選定。
  美女と商品のツーショットのポスターなど、
  「美酒」と「美女」のイメージ戦略にもいち早く着手。

2.「まるごと秋田純米酒」
 =加工原料米の品種・地域指定ができなかったなか、
  地元JAとの共同により農商工連携を活用して実現。
  
3.副産物活用による新商品開発
 =日本酒需要低迷の中、豊富な栄養素を含む副産物=米ぬかの活用のため
  地元食品総合研究センターと共同研究に着手。
  結果、GABA製造技術を確立、更にこれを活用した食品製品化。


【雑感】
・「爛漫」、酒屋やスーパーで良く見ます。
 ただゴメンナサイ。正直買ったことはなかったです。
 日本酒とか焼酎って、どうしても“レア感”“プレミアム感”を求めてしまいがち。
 「爛漫」は、あまりによく目にするために、「大衆酒」の印象を勝手に持っていました(重ね重ねゴメンナサイ)。
 でも、こういうストーリーを知ると、ちょっと買って飲んでみたくなる。
 …今度家で、きりたんぽ鍋とともにいただいてみようかな。

・「ストーリー」って、結構大事。
 特に飲食品は、いかにトライアル購入の頻度を上げるかがポイントで、
 数多ある競合品の中から、まず一度手に取ってもらうためには、
 例えば商標ならば“その心は”の部分も併せて、
 技術的な優位性ならば“開発秘話”“効果の説明”
 (商品特性によってどちらがより有効かは異なるが)が併せて伝えられると
 トライアルは確実に増えると思う。
 そのためのステップがAIDMAなのかAISASなのかSIPSなのかは、
 利用可能なメディアや想定顧客層によっても異なるとは思うが、
 要は「ファンを増やす」ためにすべきことをする、というのが大事かと。


・加工飲食品において、トレーサビリティは重要。
 望ましい状況か否かは別として、需要者の要求するハードルは高い。
 そうした要求に対して真正面から応え、それを地域ブランドと結びつける、
 同時に原料調達コストも低減するとともに“純化”する。
 結果としてより高い付加価値を持った商品提供を行うことができており、
 少なくとも外面上は理想的な農商工連携の一例と思われる。
 このあたりは、地元JAさんのコミット度合とか、軋轢の解消方法とか
 機会があればインタビューしてみたい。

☆総じて、地域資源をパッケージ化し、副産物も最大限活用する、というスタンスは
 参考になるところが多いように思われる。
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「品質管理は産地の命」~知的財産権活用事例集2012より

2012年11月26日 08時55分33秒 | 実務関係(商・不)
掲題の件、先週末に特許庁HPにアップされていました。

「うちには知財なんて関係ないよ」なんて思っている経営者の方々。
事業を行っている以上、大なり小なり「関係ない」なんてことはないのです。

その中から、今日は「夕張メロン」の話。
ブランド、特に農産物ブランドを作り上げていくためのエッセンスが詰め込まれています。
6次産業化と知財、という観点からも参考になる面は多いのではないでしょうか?

(1)親種情報を営業秘密として厳重管理
 =正しい「秘密管理」の仕方を忠実に実行している。
  (情報にアクセス可能な人間の限定・耐火金庫保管など物理的な厳重管理)

(2)商標権を取得するだけで終わらず、権利行使も行う
 =「夕張メロン」は、本源的には独占適応性がない言葉(地名+普通名称)。
  まだ地域団体商標もなかった時代なので、3条2項による登録のために
  周知性立証が必要だった
  (地域団体だと「隣接都府県」レベルで可だが、3条2項は全国レベルの周知が必要、
   というのが審査基準上の扱い)。
  2回拒絶査定を受け、それでもあきらめずに3度目の出願で登録に至ったのは、もはや執念。

  ポイントは、そこだけではなく、現実に使用する態様のマークにつき複数権利取得していること。
  (箱に用いるマーク、メロンに貼るシールのマークなど、厚い保護を行っている。)

  さらに、模倣品の排除にも労力を割いている。
  実際問題、模倣品の発見やこれに対するアクションは、労力とコストがかかるもの。
  しかし「流通経路調査」→「仲買人に注意喚起」→「販売者への警告」→「訴訟」
  と段階を踏んで排除に努めるステップを確立していることは、要注目。

(3)ブランド確立のための努力
 =加工用食材として夕張メロンを提供することで
  生果が流通していない季節にも知名度向上に努める。
 =イメージを落とさないよう、基準を満たした商品にだけ食材を提供する。
 =パッケージについても字体チェックなどブランドの統一化を図っている。

「守るべきもの」をしっかり認識したうえで
「守るための方法論」を確実に実行しているからこそ、
ブランドがブランドとして維持されている、という好例だと思います。
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【♪ぽん、ぽぽぽぽん】「音」の商標と、文字商標の音声的使用【←侵害になるの?】

2012年11月22日 08時39分19秒 | 実務関係(商・不)
産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会 (あー長っ!)
の第30回議事要旨がアップされていたので一読。

報告書案については、議事要旨を眺めている限り
色々とツッコミが入っているようなので、今回はコメントはスルー。

ちょっと「おっ?」と思ったのが、
「文字商標の音声的使用について」(コレの「資料2」)

ポイントを列挙すると、以下の通り。

① これまで「商標の『使用』」とは、その商標を商品に付する等の行為
  (商標法2条3項各号の行為)をいうものであった。
  したがって、
  ・ラジオ広告で商標を音声として流す行為
  ・街頭で商標を読み上げて宣伝する行為
  (いわゆる「文字商標の音声的使用」)
  などは、いずれも商標の使用には当たらないから、商標権侵害になることもなかった。

② しかし、「音の商標」制度が導入された場合…問題が生じる。
  商標の定義に「音」を含めると、上記は「音の商標」の使用に該当するため、
  登録文字商標に類似する音の商標を使用する行為として、当該文字商標についての商標権侵害
  となりうる。
  つまり、文字商標と音の商標の抵触関係が生じる可能性がある。

③ 対応の方向性として、
  文字商標とこれを読み上げた「音」の商標とは互いに類似し得ることを前提として
  登録を拒絶すべき(11号)であるとしたうえで、
  (a)文字商標を音声的に発する行為を文字商標の使用とし、「音」の商標を
   書き起こした文字を使用する行為を「音」の商標の使用行為とする
  (b)新制度施行前から文字商標を音声的に発生していた行為について、継続的使用権を
   認める
  (c)文字商標の商標権の効力は「音」の商標に及ばず、また、「音」の商標の
   商標権の効力は文字商標に及ばないものとする
  といった方向性の提示がされており、素案としては(c)が適切とされている。


…(a)は、ないよねー。表題のようなのも商標権侵害になっちゃうってことだもの。
「音」の商標も、もともと言語的要素を含むものもそうでないものもあるし。
言語的要素がなくても、無理やり文字にする(鼻歌化?)こともあるし。
範囲が不明確すぎる。

このテーマは、議事要旨をみていると委員の方々も
「議論が判りにくいので具体例を示して考え方を整理して欲しい」
とコメントしている。
大事なところだと思う。

しかし、
文字商標の音声的使用は、「音」の商標の使用にはなりうるが文字商標の使用とはならない
ということを明確にしておけば、特段問題は生じないのではないだろうか??
登録商標使用の抗弁も効かなくなるし。…って、そんな単純な問題じゃないのだろうか?

ともあれ、
保護対象(カテゴリ?)が増えることと、
権利範囲の拡張(使用概念の拡張は権利範囲の拡張に直結する)とは
きっちり分けて考えないと、かえって係争が増えることが懸念される、と思う。

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【どれだす?】H24(行ケ)第10326号【あでだす】

2012年11月21日 13時53分01秒 | 実務関係(商・不)
裁判所HPにアップされてましたね。

本件、「第4 当裁判所の判断」につき要点をまとめると以下の通り。

【両者の主張の整理】
<被告>
本件商標は、
(1)「4本」の細長い台形様図形から構成されている
(2)4本の台形様図形が細長いものであることもあり、
   全体の傾斜角度も比較的緩やかなものとして看取される。
(3)各台形様図形にはステッチ状の模様と多数の小さな丸点が表されている
という点で引用商標とは明確に相違。

<原告>
(1)→ストライプの本数が4本か3本かの違いは大きな相違点でない
    本件商標の指定商品(=履物,運動用特殊靴)では、靴の甲の側面に
    商標を付す表示態様が多く採用されており、
    4本のストライプの間には3つの余白部分が存在し、
    「3本のストライプ」「3本線」と認識されるおそれが高い
(2)→原告らは3本線商標を様々な異なるデザインで長年使用しているから
    需要者は3本線=原告の商品と認識・理解する
(3)→ステッチ状の模様=ありふれた携帯
    多数の小さな丸点=原告使用商標のデザインとして古くから採用されている
    パンチングの模様に相当する

【認定(特に取引の実情について)】
① 運動靴においては、靴の甲の側面に商標を付す表示態様が多く採用されている
② 商標の上下両端部は視認しにくい
③ 4本線商標の表示態様によっては、4本線か3本線か、外観において紛れる
  場合が見受けられる

【判断】
① 3本線商標は、アディダスの運動靴を表示するものとして著名であった
② ストライプの長短、幅等の相違は、3本のストライプが与える印象と比較して
  看者に異なった印象を与えるほどのものではない。
③ 商標の上下両端部の構成が視認しにくいから、4本線と3本線を区別することが困難

④ ステッチ状、丸点ともアディダスの運動靴にも用いられている例も存在する

【結論】
 単に本件商標と引用各商標との外観上の類否を論ずるだけでは足りない。
 両商標の構成態様より受ける印象及び両商標が使用される指定商品の取引実情等を
 総合判断すると、混同を生ずる恐れがあり、商標法第4条第1項第15号に該当。




所感。

1.「多数の小さな丸点」が「4本線」の中に施されているからこそ、
  当該部分がストライプであると容易に認識できるのでは?
  カラーで出願していたら、結論は変わっていたのだろうか?
  このあたり、
  「丸点」や「ステッチ」についてアディダスの識別標識として認定しているわけでは
  ないことから、どちらに転がってもよさそうなところ。

2.「3本線により構成される商標が全て原告の独占するものではない。」
  との被告の主張にもかかわらず上記結論となっている。
  しかし、直ちに
  「3本線により構成される商標が全て原告の独占するもの」
  というわけでもないことは、よく注意しておくべき。
  本件の射程距離が、すべての3本線に及ぶわけではない
  (とはいえ、他社に対するけん制効果としては効きすぎるくらいに効くのでは?)

3.運動靴において商標を甲の側面に付することは一般的であるとしても、
  被告の使用態様をそこに特定して論じることは妥当なのだろうか…?
  判決ではニッセンの実際の使用態様が確認できないので何とも言えないが、
  というか実際被告もそのように使用していたものというのは想像に難くないが、
  「被告の使用態様」は「取引の実情」として考慮すべきことではないように思われる。
  むしろ「使用態様」により混同のおそれが生じる、ということであれば、
  無効審決ではなく不正使用取消によるべき旨示唆すべき事案に思われる。
  換言すれば、混同を生じる要素が「登録商標」そのものにあるのではなく
  「その登録商標の特殊な使用態様」にあるのであれば、それは不正使用の事案ではないかと。。


以上、ちょっとチャレンジな所感を述べてみました(笑)
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赤眼鏡、復活。

2012年11月21日 10時20分05秒 | 趣味・その他諸々の雑記
おはようございます。
配達に来る郵便局の方に

「年賀状のお手配はもうお済ですか?」

と訊かれるたびに焦りを感じる今日この頃です。


さて、しばらく看板(=三色眼鏡)に偽りありだったわけですが、
このたびようやく赤眼鏡を新調!
お客様のところで購入させていただきました。



これでますます視界もクリアに。
期限もクリアしていきましょう。
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【調べてたら】H24(行ケ)10242_「レア\生クッキー」【別のが出た】

2012年11月16日 10時39分32秒 | 実務関係(商・不)
アディダスの判決文って、まだ裁判所にアップされないんかな~、
と思って最新知財高裁判例で「商標」「行政訴訟」、お、これだー!
と思ったら別物でした…。


でも、これはこれで結構面白いので、取り上げてみる。

【事案】
 S社が
 指定商品「第30類 生タイプのクッキー」について
 商標「レア\生クッキー」(注:「レア」は「生」の上にルビ的に表示)
 をH23/1に登録(登録「審決」となっているので、不服審判に上がったんだね)

 これに対し、M社が無効審判請求、特許庁、請求認容。
 権利者がこれを不服として審決取消を求めたもの。請求棄却

【要旨】
(1)「クッキー」は、基本的に小麦を主原料とした焼き菓子を指すが、
   一部に、全く焼かないクッキーも存在することが認められる。

(2)そうとすると、本件商標中の「生クッキー」部分が、需要者等に対し、
   生あるいはこれに類するクッキー、すなわち生タイプのクッキーを
   意識させることは明らか。

(3)「レア」部分も、大きな「生」の文字の上に小さく読み仮名のように配されている。
   我が国において、食品に用いられた「レア」の文字が、…生あるいはこれに近い
   状態のものを指すことは公知=「生」と同義であるとの印象を需要者等に与える

(4)本件商標全体としても、需要者等に対し、「生タイプのクッキー」を意識させるもの
   であって、商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に
   他ならない。よって法3条1項3号に該当するとの審決の判断に誤りはない。


【実務上のポイント】
(その1) 「創作性」ではなく「需要者にどう認識されるか」

 裁判所は、“焼くという工程を有する商品「クッキー」に敢えて矛盾する「生」を組み合わせた”
 創作性を主張する権利者(原告)の主張に対し、
 ・現に焼かないクッキーも存在する
 ・指定商品自体が「『生タイプの』クッキー」としていること
 ・他に同様な「生○○」の菓子の例が認められることから
 「特殊性があるとはいえない」としてこれを退けている。

 ありがちな勘違いとして、
 「創作した造語だから保護されるべきだ」という主張がある。
 しかし、商標法は
 “ネーミングの独創性”或いは“アイデア”を保護する法律ではない。
 あくまで、需要者がその表示をどのように受け止めるかが問題であって、
 要保護性はその識別力に求められる。

 極論すれば、仮に出願当初ないし発売当初は出願人の完全オリジナルな言葉であったとしても、
 それが査定・審決時までに普通名称化してしまえば、もはや保護の対象とはならない。
 したがって、登録前に使用開始するのであれば普通名称化防止策は講じておくべきであるし
 本件のように本質的に識別力の弱い言葉であれば、査定・審決時までは一般化しないよう
 使用を控えることも考慮すべきである。

(その2) 指定商品の表記方法

 本件では、不服審判係属中に補正を行っている。16号回避のためにはやむを得なかったのかも
 しれないが、「造語」を貫きたいのであれば、
 “「レア\生クッキー」は何ら特段の観念を生じさせない造語であり、したがって品質誤認も生じない”
 との主張を維持すべき事案であったと思われる。
 あるいは、補正するにしても「生」の語は避け、「焼かないタイプのクッキー」のように表記し、
 「生クッキー」の造語性主張の根拠づくりに努めるべきだったと思われる。

 ※こんな感じで、特許とは違った補正のむずかしさが商標にはあるのです。

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