弁理士『三色眼鏡』の 業務日誌     ~大海原編~

おかげさまで事務所開設6周年!
今後とも宜しくお願いします。

【農業知財/商標】プレスリリースのタイミング

2018年09月22日 10時18分07秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
雨が降り出しました@湘南地方です。
出張から帰ってまいりました。

さて、今日はこんな記事

(日本経済新聞より引用)
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長野県のブドウ新品種、「クイーンルージュ」と命名

長野県は20日、県が開発した赤いブドウの新品種「ブドウ長果11(系統名)」の商品名を「クイーンルージュ」に決めたと発表した。皮ごと食べられ、種がないことが特徴。甘みも強く、アジアなど海外向けの県産作物の主力にしたい考え。県開発の品種としては初めて海外で商標登録を出願するなど、知的財産保護にも力を入れる。

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(引用終わり)

長野県農政部のリリースはこちら
「シャインマスカット」「ナガノパープル」に並ぶ3本柱として期待されている様子。
「シャインマスカット」といえば苗木の流出が以前話題にもなった(例えばこちらの記事)。
現状国を挙げて農業知財の保護の警鐘を鳴らしており、今回の名称保護についてもそれに沿ったかたちと見て取れる。

参考になるなあ、と思ったのは、
1)出願の仕方 と
2)プレスリリースのタイミング。

1)指定商品を「果実」だけでなく、考えられる加工食品(加工果実、果実飲料)まで広げて保護している。
 また早期審査を活用できるよう、指定商品表記を審査基準に準拠したものにしている。
 早期審査も出願と同時に行っている。



2)プレスリリースが昨日2018年9月20日。
 商標登録されたのが2018年6月29日、公報発行日が2018年7月24日。
 まずは、きっちり登録されてからのリリースである、ということ。
 また異議申立期間は公報発行後2月であるところ、これもほぼ期間が経過した状態でのリリースである、ということ。
 リスクを極小化できている。

それにしてもこの新品種、糖度が22-23度とのこと。どれだけ甘いのか。
お取り寄せして食べてみたいものです。




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【商標】ファストトラック審査

2018年09月21日 12時40分48秒 | 実務関係(商・不)
こんにちはー!
晴天の@札幌→新千歳移動中です。

さて、今日はこんなニュース

(特許庁HPより引用)
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商標審査に「ファストトラック審査」を導入します

商標登録出願件数が急激に増加する中においても迅速・的確な審査を実現すべく、種々の施策を行っているところですが、今般、その一環として、指定商品・指定役務の記載が一定の条件を満たす商標登録出願について通常よりも早く審査を行う運用(ファストトラック審査)を試行的に開始します。

この運用を行い、ユーザーの方に審査負担の少ない適正な出願をしていただくことにより、商標審査全体の更なる処理促進を図ってまいります。是非「ファストトラック審査」をご活用ください。

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(引用終わり)

対象となる出願は、
(1)出願時に、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務(以下、「基準等表示」)のみを指定している商標登録出願
(2)審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない商標登録出願
の両方の要件を満たすもの。

2018年10月1日以降の出願で要件を満たすものは自動的に対象となる(別途手続きが要らない)とのこと。

国際出願を睨んでいない案件、典型的な商品/サービスについて用いる商標の出願であれば、
ヘンに独特な表示をしないで基準に沿った記載を行った方が結果はすこーしだけ早い、ということ
(現状FA=ファーストアクションまでの期間が8月→適用されると2月程度短縮)。
それ以上急ぐ場合は従来通り早期審査を利用すべき。


審査期間、確かに最近まただいぶ延びてきているしねー。
“本運用の利便性を高めるため、今後、基準等に掲載する商品・役務表示の充実も検討していく予定です。”
という点も含め、良いアプローチかと思います。
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【商標】地域団体商標マークの活用事例…か。

2018年09月14日 09時10分52秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
雨は…あがったのかな?どうにもはっきりしない天気の@湘南地方です。

さて、自分のブログを振り返ってみたら…おおよそ一か月ほど知財ネタを扱っていない。
…ま、出張だったり地震だったり色々あったというのもあるけど。

ということで、今日はこのネタ

(特許庁HPより引用)
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「地域団体商標マーク」について
~このマークは「地域の名物」の証です~

「地域団体商標」は、平成18年の制度創設以来、「地域の旗印」となるブランドを確立するための第一歩として、地域の産業発展に活用されてきました。
この度特許庁では、地域団体商標を活用する皆様からの強い要望を受け「地域団体商標マーク」を決定しました。
本マークは、「その地域の名物が地域団体商標として特許庁に登録されている」ことを示す証です。本マークを継続して用いることで一般消費者や取引先、同業者等の認識が高まり、地域ブランドとしての信用・信頼が蓄積し、地域団体商標自体のブランド力向上にもつながることが期待されます。
「地域の名物」が地域団体商標として特許庁に登録されている証として、地域の皆様にご活用いただくとともに、特許庁としても本マークの知名度の向上に努め、地域団体商標制度のPRに積極的に活用していきます。

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(引用終わり)

“地域団体商標を活用する皆様からの強い要望”があったのね。。。
確かに、需要者の目線からみたときに他の産品との差別化は図れているとはいえるけど。。
独自の商品づくりをしているのに認証を受けることを望む、というのもなんだか矛盾だなぁ、というのはちょっとナナメからものを見過ぎ?

いや、そもそも商標登録を受けることの本来的な目的は「独占排他権の確保」なわけですよ。
法的な後ろ盾をテコに、プロモーションを進展させていく。
でもこういう、あたかも“認証マーク”のようなかたちというのは、自らの足でブランドとして立っていく、というよりは
同じ傘の下に入って保護される、というイメージが強い。

別に、「地域団体商標登録を受けたから売れる」とか「地域団体商標登録を受けたから商品の質が高い」ということは担保されているわけではなく、
一定程度の周知性を得ている(その周知性を得るにあたっての商品の品質向上の努力やプロモーションの努力が結晶となって登録という結果につながっている)わけで。
安易な方向に流れない方が良いんじゃないかなぁ、という思いもあり、ちょっと複雑。

そりゃまあ、パッケージの隅の方に“ええ、地域団体商標登録「も」受けてますよ”って感じの使い方なら、趣旨にも適っているし判る。
お上からのお墨付き、を前面に押し出すのは、違うなあと思うのです。
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【商標/知財記事】機能が発揮される相手

2018年08月10日 08時23分24秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
夏が、夏が戻ってきました! って感じの今朝の@湘南地方です。


さて、たまには(笑)知財記事。
少し前のニュースですがこちら

(朝日新聞DIGITALより引用(一部伏字))
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「セコム」偽ステッカー販売容疑で逮捕 1枚1200円

警備会社大手「セコム」(東京都渋谷区)の偽造ステッカーを販売したなどとして、警視庁は京都市山科区東野森野町、アルバイト****容疑者(25)を商標法違反の疑いで逮捕し、2日発表した。「小遣いがほしかった。法律に違反するとは考えていなかった」と供述しているという。

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(引用終わり)

あまり知られていないかもしれないですが、商標権侵害には民事的な権利行使だけでなく刑事罰が定められています。

(侵害の罪)
第七十八条 商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。


つい出来心でやってしまったことに対する罰としては、かなり重たいものです。
この事案が少し変わっているのは、通常商標って“取引(商売)の中での識別標識”という位置づけなので、
そのマークを見た『取引者や需要者』がその商品/サービスの出所(=提供者)が誰なのか、を認識するためのもの。
だけどこのマークが機能するのは、『取引者や需要者』に対してではなく、主に不法侵入(を意図する)者に対して。

仮にこうした偽造ステッカーを放置していると、不法侵入者に対して機能していた抑止力が弱まってしまい、果てはセコムが提供するサービスに対する信頼が揺らいでしまう。その意味で間違いなくこのマークには業務上の信用が化体しているし、保護の枠組みとしては商標法しかありえない。
いわゆる保証商標には多少そういう側面はあるけど、機能が発揮される相手と保護される取引主体が異なる、ちょっと面白いパターン。

そういや、“猛犬注意”なんてステッカーを貼っていつつとても可愛いチワワを飼っているおうちとかもあるなあ。

さてさて、お盆前の金曜日。何とか頑張ります。
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【商標】オープンなのかそうじゃないのか

2018年08月02日 08時27分42秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
アスファルトからの照り返しに「自分はホットプレートに乗せられた焼きそばなんじゃないか?」と勘違いしてしまいそうな湘南地方です。

さて、今日はこんな話題。

SDNMagazineより引用)
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オープンソース商標についての解説と不使用取消審判への対応のお願い

オープンソース運動初期の頃に日本国内の有志数名が集まったOpen Source Group Japanというグループがあります。このOpen Source Group Japanでは、日本国内において2002年から「オープンソース/Open Source」という商標(登録4553488号)を登録していますが、今月になり同登録商標に対して不使用取消審判が請求されたという連絡を弁理士事務所から受けました。

(中略)

OPENSAUCE社による不使用取消審判における請求対象の指定商品役務は、以下の通りです。
•16類:家庭用食品包装フィルム、紙製ごみ収集用袋、プラスチック製ごみ収集用袋、紙製テーブルクロス、紙製ブラインド、装飾塗工用ブラシ
•35類:経営の診断・指導及び経営に関する情報の提供、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、文書又は磁気テープのフィリング
•41類:書籍及び雑誌の制作

 もしこの指定商品役務に該当しそうなオープンソース商標を利用する製品、サービス等を提供している事業者や個人がいれば、Open Source Group Japanもしくは私(佐渡)にご連絡頂くようお願いいたします。また、そのようなサービスを知っているというだけの場合でも情報を提供して頂くと幸いです。

(以下略)
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(引用終わり)

専門外の方にはなんのこっちゃ?の話だと思うので、概要をごく簡単に。

(1)「オープンソース」について→こちらに詳しい。当方この点について語れるだけの知見を有していないので、記事に依存。
(2)商標「オープンソース\OPENSOURCE」について
 :「OSDN㈱」が、コミュニティの誰もが自由に使用できる状況を担保することを目的に出願。
  →指定商品との関係で一般的名称ないし品質表示と認められる指定商品(例えば「第9類 電子応用機械器具及びその部品(注:「コンピュータプログラム」はこの中に含まれる)」や「第42類 電子計算機のプログラムに関する研究・開発・設計・作成又は保守」など)については審査において独占性が否定され、“ある程度意味的に距離があるもの”については登録が認められた(第4553488号)。

(3)審判請求人「株式会社OPENSAUCE」について
 :Webサイトにもあるように、「食文化全般の研究開発・農業・食品製造と販売・店舗運営」を事業とする会社。平成29年設立。
(4)商標「OPEN SAUCE」について
 :設立とほぼ同時に社名である「OPENSAUCE」(“SAUCE”は食品関係の会社ゆえにモジった造語)を出願。
  →一部指定商品について上記登録商標が引用され拒絶→拒絶された部分を含む区分を分割(商願2018-38735)
   拒絶理由解消策として、障害になっている商標「オープンソース\OPENSOURCE」について一部不使用取消審判を請求

一応所見を以下コメント。
[審判請求は、卑怯か?→NO]
“「オープンソース」、オープンに使えるようにしよーぜ!”ってしてたのに、独り占めしたいから取消審判って、姑息じゃね? という見立ても、まあ一応成り立たないわけではない。
しかしその観点には同意できない。
OPENSAUCE社のサイトのこちらにもリリースが載っており、アクションに至る理由を記している。

当職の視点からは、以下の合理性があると考える。
<必要性>
OPENSAUCE社は、自社が恙なく事業を実施できるように自社のブランドを法的に保護する必要があった。
<許容性>
OSDN社がやらない(そして自由な使用を担保する必要もない)範囲についての取消審判である、と評価するのが妥当。濫用的なアクションでもない。

少なくともネットから拾える情報の限りにおいては、OPENSAUCE社のアクションは、ずるくもなんともない。
レピュテーションリスクなどを考えて他の代替的な手段(例えばアサインバック、放棄要請などの交渉)は無かったのか?という疑問はないわけではないが、
「オープンソース」登録の経緯からしてアサインバックに応じる可能性はほぼ無いと思われるし、やむを得ない選択ではなかったかと。

ただまあ、OPENSAUCE社もリリースの中で
また弊社はオープンソース理念を理解し共有しておりますので、オープンソースコミュニティの活動を阻害する意思は一切ございません。
と言っているように、話し合いで折り合う余地が無かったわけでもないように思われる。
実際に交渉を行った経緯があるかは不明ですが、不使用取消審判自体が交渉前置を促す制度設計になっている(というか交渉を先にしても請求人に不利になることは無い)点も考慮すれば、一応一度くらいは妥協点を探っても良かったのかもなぁ、とは思う。この点は当事者の種々の事情(リソースの制約やデッドライン、事業計画との整合性など)もあるので外野がとやかく言う話ではないが。。。



    
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【商標】第100回記念大会

2018年07月17日 07時39分55秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
連日の暑さに少し嫌気が差しそうな今朝の湘南地方です。

さて、夏の高校野球(全国高校野球選手権大会)が今年は第100回の記念大会ということで。
こんな記事

甲子園のバックスクリーン、商標登録されていたのですね。
非正規品なお土産が売られたりしてるんですかね。
そうだとしても商品の形状そのものが保護されるわけではないので、
抑止力以外の面でどれほどの効果があるのかは疑問ですが。。。

ともあれ、全国で高校球児達が熱闘中。
大人も暑さに負けずに頑張りますか。

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【商標】マニュアル作り

2018年07月10日 08時15分22秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
今日は「容赦のない夏」という感じの湘南地方です。

さて、7月に入り当職の“ツアー”がスタートしました。
“ツアー”といってもライブではなく、クライアントさまのところでのセミナーツアー。
「全国」(←おおげさ)計6か所を今のところ予定しています。

定番のネタもあれば新ネタもあり。
準備に余念はありません。

そんな中、事前打ち合わせで出てきたリクエストの一つ。
「社内で簡単に調査するためのマニュアルがあればなー」というご希望がちらほら。
あんまりボリューム感のある物を作っても漬物石にすらならないので、
要点だけをピックアップした簡易版をまずはお作りしてみようかな、ということになりました。
今のところ8月頭リリース予定。
ご契約をいただいているクライアントさまにお渡しできるよう準備を進めてまいります。


…今日も、暑そうだなぁ。バテないよう、むしろやることは全力でメリハリ付けていきたいと思います。
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【商標】位置商標_カップヌードルの「キャタピラ」

2018年07月03日 08時11分58秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
朝からプールに行きたくなる全快青空!な湘南地方です。
(…最近、冒頭のお天気挨拶がCDTVのオープニングみたいだな、と思った)


さてさて、新しいタイプの商標が着々と登録されてきています。
今日はこんな記事

(産経ニュースより引用)
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日清食品HD カップヌードルの帯型図形が位置商標として登録

日清食品ホールディングス(HD)は2日、日清食品の主力商品である「カップヌードル」の帯型の図形が、位置商標として登録されたと発表した。

この帯型図形は、通称「キャタピラ」と呼ばれる。グラフィックデザイナーの大高猛氏が手がけたもので、カップヌードル発売以来47年間、維持しているという。

(以下略)
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(引用終わり)

本日時点で位置商標の出願は計237件、うち既に登録されているのは51件。
上記が登録されたのは2018年4月6日なので、異議期間を経過してからのリリース、ということかな…と思ったら公報発行は5月8日だからまだですな。
ちょっと本筋からは逸れるけど、この記事を書こうと思って「CUP NOODLES」の登録情報みてたら、指定商品は「第30類 ヌードル」でした。「中華そばの麺」ではなく「ヌードル」。まあ、確かにラーメンじゃないものなぁ。

当該位置要素のみに基づいて出所が認識される程度に需要者に広く認識されていることが要件の一つではあるところ。
難しいよなあ、といつも思うのは、そこでの「需要者に広く認識」の立証にあたっての販売実績の位置づけ。
実際の使用態様としてはその要素だけを用いているわけではなく、他にも標識として機能する要素(例えば本件なら、「CUP NOODLES」の特徴的なロゴ)と常にワンセットで用いている。有名になるのは、特定の要素に依存して、というより、全体としてこんな雰囲気のパッケージ、として認識されるのが実際かな、と。その“全体としてこんな雰囲気のパッケージ”の中に含まれる複数の要素の中の一つは、当然ながらそれ単体で有名なわけではないけど、その要素からそこはかとなく特定の商品や会社名を想起する状況は十分想定される。

①その要素が識別標識として積極的に認識される外観的特徴がある、ということが前提としてあるのか。
それとも
②“めちゃくちゃ売れてるあの商品は「こんな雰囲気のパッケージ」”という売上実績が先行としてあって、そのパッケージの要素一つをとっても“めちゃくちゃ売れてる”ことに起因して需要者に数多く認知される機会があるから結果的に識別標識として機能するようになる、という形で押し切って良いのか。

…ま、ぐちゃぐちゃと書いたけど、位置商標の制度が定着して本件のような登録事例も増えてくれば、部分要素に基づく識別性についての運用ももう少しこなれてくるのかなー、と思うのだ。
ユーザによる商品の知覚は多面的、かつ商品と識別標識の関係も1対1に限られないのだから、上記議論は②をベースに把握して良いと思うのだが。








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【商標】ゼロサムで考えると判断がゆがむ(「大迫半端ないって」Tシャツ)

2018年06月26日 08時17分37秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
梅雨の晴れ間(何度目!)の暑さが身体にこたえる湘南地方です。

さて、開幕前の予想に反し善戦していることもあり、世間ではサッカーが盛り上がっているようです。
今年の流行語大賞候補ともささやかれているのが掲題の「大迫半端ないって」。

で、これにまつわる商標「OSAKO HANPA NAITTE」が4年前に登録されている、ということが取り上げられているのがこちらの記事


…いやまあ、スポーツ新聞だし、正確性を期するのは酷だとも思うのだけど、
登録商標は「OSAKO HANPA NAITTE」(第5711702号)。「大迫半端ないって」ではない。

で、ユニクロでオリジナルTシャツを作ろうと思って申し込んだら審査に通らなかった、という記事がこちら

これらの情報を総合すると、普通の人はこう考える。

“「大迫半端ないって」という文字をTシャツに記して販売したら商標権侵害になる”

→ホントか??



形式上、「標章」について「使用」とは、当該マークを商品等に付する行為等をいう。
したがって、Tシャツの前身頃に文字を記す行為も、少なくとも形式上は「使用」にあたる。

しかし一方で、商標権侵害に該当するかの判断にあたってポイントとなる概念として「商標的使用」というのがある。
これは平たく言うと、“そのマークが自他商品識別標識として認識される態様で付されていること”を意味する。
商標の本質的機能が、自他商品識別機能である以上、
“如何に形式上「使用」に該当するとしても、それが標識として機能しない態様だと侵害等を構成しないよ”
ということになる。

「商標的使用」にあたるか否かは、正直個別具体的に判断されるところだが、例えば以下の要素は考慮される。
1)そのマークが付された位置
 :業界や商品によって、「通常商標が付される場所」というのがある。
  例えば「段ボール箱」についての商標の使用は、段ボール箱の見やすい位置ではなく、側面ないし底面の隅に小さく記載されることが多い。(段ボールの見やすい位置に付されたマークは、通常は「内容物」についての表示と認識されるから)
  同様に、被服については、一般的には「タグ」に表示されることが多い。
2)そのマーク自身の識別力の強弱
 :当該表示が本源的に識別標識として認識され易いものか否かというのも考慮要素になり得る

3)他のマークも使用されているか否か
 :例えばそれが当該商品に付されている唯一の表示の場合、取引者・需要者としては識別標識として認識する可能性が高い。一方複数のマークが付されている場合、どれが「商標」として認識されるかはケースバイケース。

実際この点についての判例は古くからあり、Tシャツの前身頃について直接的に判断した事例もある。
「ポパイアンダーシャツ事件」では、
“もっぱらその表現の装飾的あるいは意匠的効果である『面白い感じ』、『楽しい感じ』、『可愛いい感じ』などにひかれてその商品の購買意欲を喚起させることを目的として表示されているものであり、一般顧客は右の効果のゆえに買い求めるものと認められ、右の表示をその表示が附された商品の製造源あるいは出所を知りあるいは確認する『目じるし』と判断するとは解せられない。”
と判断
=平たく言えば、「この前身頃の表示は、デザインであって商標じゃないから侵害にならないよ」という判断。

→じゃあ“Tシャツの前身頃の柄はオールオッケーじゃん!?”
 というのもまた危険なゼロサム思考。
 これと同様な判断(例えば「Surf's Up」事件)も異なる判断(例えば「Heaven」事件)も少なからず出ている。それぞれに前提事実が異なることや、取引実情の変化(例えばスポーツメーカーが自社のロゴを前面に押し出したTシャツを販売することも増えたり)には留意が必要。


さて、じゃあ結局「大迫半端ないって」Tシャツは作っても良いの!?
という話なわけですが…。

少なくとも即断で「アウト」ではない(上記新聞記事はちょっとミスリーディング、だと思う。含みは残してるけど。)。別途商標として認識されるマークが付されていて、飽くまで意匠的効果を狙った表示として把握される表示であれば終局的には商標的使用にあたらない、という判断に傾く可能性の方が高いのではないだろうか?

もっとも上記で触れたユニクロオリジナルTシャツの例は、リスク回避の観点からはある種当然の対応とも思われる。ただこれは“リスク回避のための安全策”であって「侵害確定」を意味しない、ということは注意したい。


あと、同業の先生が当該商標登録を無効にできるか、という観点から書いているので(→こちら)ご参照されたい。
※文中でご本人も書いているのと同じく、当職としても「本件は無効にすべき」といったバイアスはかかっていないので念のため。
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【不競法】老舗間でのトラブル

2018年06月06日 08時11分19秒 | 実務関係(商・不)
おはようございます!
雨がしとしとと降る今朝の湘南地方です。
…今日あたりから関東地方も梅雨入りですかね。

さて、今日はこんな記事

(日本経済新聞より引用)
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京都銘菓「八つ橋」 創業年巡り提訴、競合老舗相手に

京都銘菓「八つ橋」の老舗「井筒八ッ橋本舗」(本店・京都市東山区)は4日、のれんや商品説明書などに「創業元禄二年」と事実と異なる記載をしたとして、別の老舗「聖護院八ッ橋総本店」(同市左京区)に不正競争防止法に基づき記載の差し止めと600万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こした。

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(引用終わり)

「品質について誤認をさせるような表示」ということで2条1項14号の不正競争行為でしょうか…?
今朝ニュースで原告側の会見の模様をちらりと見ましたが、会見をされていた方は94歳。
歳を重ねても尚看板を守るために寿命を賭している悲壮感が感じられた。

こちらのブログで今回の訴訟の伏線についても触れている。
組合内部での不協和音が顕在化したかたちか。

昨日の件(=小田原かまぼこ)でも触れたけど、
競争優位性を確保するためのツールとしての知的財産権が、“内輪もめ”のために誤用されてしまう状況は、業界関係者としてはちょっと悲しい。

本件について、という意味ではなくおよそ「本家」「元祖」を争うケースにおいてしばしばみられるつばぜり合いは、
市場のパイ自体が減少しているが故の断末魔なのだろうか?
本当は、顧客のニーズが時代に応じて遷移しているにもかかわらず「伝統」に縛られて対応できていないために商機を逃しているのではないか?

伝統と革新。両立するためのデザインとイノベーション、であるべきだと思うんだよなー。
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