弁理士『三色眼鏡』の 業務日誌     ~大海原編~

おかげさまで事務所開設6周年!
今後とも宜しくお願いします。

【著作権法】違法ダウンロードの対象拡大

2019年02月06日 08時31分01秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
雨がなんとなく心も潤す、今朝の@湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(東京新聞より引用)
============================
違法ダウンロードの対象拡大 刑事罰は悪質行為限定 反対相次ぎ修正

文化審議会の小委員会は四日、漫画などの海賊版サイト対策に関する最終報告書を公表した。著作権を侵す違法ダウンロードの対象範囲をインターネット上の全ての著作物に拡大する一方、刑事罰を科す対象は、悪質な行為に限定するよう求めた。先月まとめた報告案では全ての違法ダウンロードに刑事罰を科す方向だったが、委員から反対意見が相次いだため、修正した。
(以下略)
============================
(引用終わり)

この件については、例えばこちらの記事にも書かれているとおり、
従来音楽、映像に限定されていた対象を全ての著作物に広げる、というもの。
「全て」としている以上、例えば「漫画」の違法ダウンロードのようにそもそも悪質性が推認されるような場合だけでなく、

例えば、ブログで気になる記事を見つけ、後で読むために保存するような行為でも、その中に著作権を侵害する表現やイラスト、写真などが一つでもあれば違法になる可能性があり、さらに、そこに有償の著作物が含まれていて権利者から告訴されれば刑事罰を科されることもある、ということになる

(上記リンク先の読売新聞記事より引用。ちなみに、同記事の「法改正、なぜ急ぐ?」のパラグラフに記載のことがこの問題の根本原因ではないかと思う。)

いやー、ぶっちゃけた話。
全ての違法ダウンロードに刑事罰を科すようになっていたら、“国民総犯罪者”になっちゃうんじゃない?
もちろん「違法ダウンロード」=「違法に公開(アップロード)されたと知りながらダウンロードする行為」であるという点を踏まえた上で。
スマホなりPCなり、各自が保有している端末の機能で普通に“違法な行為”ができてしまう状況で、
人を惹きつけるからこそアップロードされるコンテンツがあるのに、
それを一律に刑罰対象とするのは無茶苦茶なんじゃないかなー、と。

違法な行為を推奨する趣旨では全くないけど、テクノロジーが許容していることと今やろうとしている「線引き」との乖離がヒドすぎて。
大事なのはバランス。あと「グレーゾーン」。
グレーなところを“はい、今日からここはクロでーす”とできるほど、遵法意識はことコンテンツ関係に関しては育っていないと思う。




コメント

【著作権】神々の遊び

2019年01月11日 08時45分13秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
綺麗な青空が窓の外に見える今朝の@湘南地方です。

今週は色々と体の不調が表に表れてきております。
ぎっくり腰寸前の腰痛→首痛→胃もたれ のコンボ。
ま、最後のは不摂生によるものだと思いますが。
やっぱり寒くなってくると身体が縮こまりがちですもんね。

さてさて、なんじゃこりゃ?と思ったこの記事。
神様から著作権法を一ヵ所だけ変える力を貰ったら

いやいや、この分野ではもはやあなた方が神様ですから(笑)
てか、現行法の枠組みを維持しながら適正化していくことへの「無理ゲー」感をみんな感じてるんでしょうね。
世の中もテクノロジーも進化(?)のスピードが著しいのだから、制度もそれに合わせたアップデートをしていく必要がありますよね。

他の法領域でも色々思うことありますよ、“この規定もうちょっと考えたらよいのに”的なこと。
すぐ思いつくのは、特許法の保護期間。保護対象物/技術分野に応じて期間は変えればよいのに、と。
ソフトウェア関係で20年は、過保護だと思うわ。




コメント

【著作権】フラダンスの著作権

2018年09月23日 08時49分55秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
やや曇り空、過ごしやすい空気の今朝の@湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(日本経済新聞より引用)
==============================
フラダンスに著作権あり ハワイの指導者勝訴、大阪

ハワイに住むフラダンスの指導者が自ら創作した振り付けを許可なく使われ著作権を侵害されているとして、フラダンス教室の運営団体に講師や会員による上演差し止めなどを求めた訴訟の判決が21日までに大阪地裁であった。高松宏之裁判長は著作権侵害を認め、会員への指導や国内施設での上演禁止と、約43万円の支払いを命じた。

(以下略)
==============================
(引用終わり)

著作物、というと小説のような言語の著作物や音楽の著作物、絵画や映画などがぱっと浮かぶかと。
でも、あまりピンとこないかもしれないけど、「振り付け」も著作物たりうる。
紙やフィルムに固定される必要はない。

ただダンスの振り付けの創作性、というのは判断がなかなか簡単ではないように思われる。
起源について諸説あるものの数百年の歴史があるフラにあって、従来からある振り付けか創作性があるものなのか、を裁判所が判断することは容易ではないのではないか?

それにしても
“楽曲の振り付けで部分的に作者の個性が表れていれば、その一連の流れ全体の著作物性が認められる”
とはかなり踏み込んだ判断…って大阪地裁ですかそうですか。


コメント

【著作権(EU)】「リンク税」続き

2018年07月09日 08時14分03秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
暑さもすこし和らいでいる、今朝の湘南地方です。

さて、今日はこんな記事
先日取り上げた「リンク税」に関する記事の続報。
著作権新指令案について欧州議会で投票が行われたものの否決された、とのこと。

この記事によれば、そもそも「リンク税」の表現もちょっとミスリーディングな模様。
なるほど、こちらの原文を読む限り、「リンク貼ったら情報元に支払え」的なことは書いていない。
報道出版物のデジタル利用について複製権等を付与しなければならない、と書いているに過ぎない。

=================================
1.Member States shall provide publishers of press publications with the rights provided for in Article 2 and Article 3(2) of Directive 2001/29/EC for the digital use of their press publications. .

2.The rights referred to in paragraph 1 shall leave intact and shall in no way affect any rights provided for in Union law to authors and other rightholders, in respect of the works and other subject-matter incorporated in a press publication. Such rights may not be invoked against those authors and other rightholders and, in particular, may not deprive them of their right to exploit their works and other subject-matter independently from the press publication in which they are incorporated.

=================================

リンクを貼った記事にも書いてあるように、出版社とサービスプロバイダとのバランスの問題、に帰着するのかな。
出版社にとっては広告の側面がある一方、SNSのTL充実のために勝手に記事を使われるというのもうまくない。

コメント

【著作権】「リンク税」…?

2018年06月22日 08時31分50秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!

梅雨の晴れ間(ほんと、何度目の青空か、って感じ)な湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(Gigazineより引用)
=============================
ハイパーリンクを貼るだけで著作権料がかかる通称「リンク税」がEUで導入されようとしている

EUで著作権法の改正議論が進んでおり、中でもインターネットのリンク(ハイパーテキスト)の提示行為にも著作権料の支払いを請求できるとする通称「リンク税」の是非をめぐって議論が活発に行われています。そんな中、リンク税導入を含むEU改正著作権法案がEUの著作権を審議する委員会で可決され、いよいよ欧州議会で法案について評決が行われる見込みになりました。



2018年6月20日にEUの改正著作権法案が欧州議会法務委員会で可決されました。これによって、いよいよ2018年7月の欧州委員会で可決されれば、EU改正著作権法が正式に成立する見込みになりました。

(以下略)
=============================
(引用終わり)

詳細はリンク元を参照して欲しいのですが、
・「リンク税」(リンクを貼るだけで著作権使用料の支払い義務が発生する)
・「コンテンツ認識システム義務化」(アップロードされるコンテンツが著作権侵害を構成する物でないかのチェックを全プラットフォームに対し義務付ける)
の2点の影響が特に大きい模様。
前者は過去にもベルギー、ドイツ、スペインで導入されたことがあるもののGoogleがニュース配信をやめたことでトラフィックが激減し取りやめられた経緯があるとのことです。

ちなみに現状の日本の著作権法では、
同意なくリンクを貼ったとしても、原則として著作権侵害にはあたりません。
URLの表示自体は著作物の「複製」等にはあたらないからです。
(※ただしいわゆる“フレームリンク”はその限りではありません。)

EU著作権法が改正されると、直接影響があるのでしょうかね。実施行為地の扱いとかどうなるんでしょう。
リンク先がEUのHPでもリンク元のサイトのサーバがEU外ならセーフ、になるのでしょう(通常は)。
にしても、住所ともいえるURLを表示するだけで支払い義務が発生する、というのもストンと腹落ちしない話ではあります



コメント

【著作権】ひょっこりはん

2018年06月04日 08時09分18秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
今日も快晴!な湘南地方です。

さて、今日はこちらの記事。

(HUFFPOSTより引用)
=============================
ひょっこりはんのBGMは「著作権侵害」と、音楽素材MusMusが抗議【UPDATE】


ひょっこりはんの楽曲を配信していた「mora」「レコチョク」ではいずれも当該楽曲を配信停止している。

「mora」の広報担当者によると、6月1日午前11時20分ごろ、よしもとクリエイティブエージェンシーから、楽曲の配信を一旦停止してほしいと依頼があったという。

よしもとの担当者はハフポスト日本版に「先方から違法性を指摘されて、状況を調査中という段階なので、配信をストップしていただいた」と語った。

=============================
(引用終わり)

或いは、こんな記事も。

(スポーツ報知より引用)
=============================
ひょっこりはん、ネタBGM曲問題決着…音源提供サイトが報告「見守るのみ」

ピン芸人・ひょっこりはん(31)がネタのBGMとして使用している楽曲「sonorously box」が、著作権侵害にあたると抗議していたフリー音源提供サイト「音楽素材MusMus」の管理人は3日、ブログでこの問題が決着したことを発表した。
=============================
(引用終わり)

高学歴芸人が増えているらしいけど、この方も早稲田卒。
そんでも著作権についての教養はなかった、ということか…。

「違反使用」と指摘している点として以下の3点が挙げられている点、
権利者側の「決め」も、結構緩かったようなのだけど。
1)著作権表記をしていない
2)著作権表記をしない場合の利用料を支払っていない
3)他の企業などに「フリー音源」として二次配布を行った

1)、2)って、結構緩い。要は「著作権表記」をすれば利用料は支払わなくてもよい、ということですから。
なぜ表記しなかったのだろう?
これに輪をかけて疑問なのが3)。自分のものじゃないのに勝手に二次配布は、著作権法の知識あるなしにかかわらずNGなのは判りそうなものだが。

初動がおかしいと、色々話がこじれる。
今回の権利者はかなり寛容なのでまだおおごとになっていないけど。

どうなんでしょうね。人気商売なわけだし、まだ“炎上商法”に耐えられるような実績があるわけでもないでしょうし。
記事見出しどおり、「見守るのみ」しかないですかね。

コメント

【著作権】美術作品の「追及権」…?

2018年04月16日 08時28分00秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
ここちよい空気の湘南地方です…この書出しも久しぶりですね。
ラジオの天気予報によれば今日の花粉は「多い」だそうですが、出張から戻ってきてからは嘘のように症状が出ないです。
良いこと。

さて、今日はこんな記事

(産経ニュースより引用)
===============================
著作権法に美術作品の「追及権」を 美術著作権協会などが会見で求める

日本美術著作権協会(JASPAR)などは13日、東京都内で会見を開き、日本の著作権法に、美術作品が転売されるごとに販売価格の一部を著作者やその相続人が要求できる「追及権」を導入するよう政府に求めていく考えを明らかにした。

追及権は芸術家保護の観点から1920年にフランスで始まり、欧州を中心に約90カ国で法制化されているが、日本や米国(カリフォルニア州を除く)、中国などでは導入されていない。

(以下略)
===============================
(引用終わり)

そんな考え方もあるのねー、という驚き。

確かに、美術品が評価されて価値が上がるのが芸術家の死後、ということも珍しくない。
ただそのことと、経済的な恩恵を関係者(例えば遺族)が受けられるようにすることとは、どうにもリンクしないような。
経済的な成功を収めることを目的として芸術に向かい合っているわけでもないだろうし。
即時にその価値が評価されないことが往々にしてあるのは、なにも芸術の世界だけではないし。

個人的には、同意できないなぁ。


コメント

【事例集/DD手順書】ベンチャー向け知財コンテンツ

2018年04月04日 08時00分23秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
ついこの間まで寒い寒い言っていたはずなのに、気が付けばシャツ一枚で汗ばむ季節になりました、
今日も好天の湘南地方です。

さて、各種報道でも取り上げられていたけど、
特許庁からベンチャー企業向け情報として
・ベンチャーの知財戦略、活用事例集
・オープンイノベーションの事例集
・知財DDの手順書
が昨日まとめて公開されました(→こちら)。


併せて、「スタートアップが直面する知的財産の課題および支援策の在り方に関する調査研究」の報告書もアップされていて、
要約版をざっと読んだけど…カタカナが多すぎて良くわからん(笑)
自分でも気を付けているんだけど、
カタカナ言葉は、なんとなくわかった気になっている状態で遣い勝ち。
受け手としても、本当はわかっていないのになまじ言葉自体は聞いたことはあるから、その意味するところを訊きづらい、
という問題がある。

アンバサダ」とか「エバンジェリスト」とか「アクセラレーター」とか
…ほら、なんとなくわかった気でいるから、その定義とか訊かれるとたぶん多くの人が答えられないはず。


クリエイティビティを強化しなければいけないフェーズはウィーク・タイが望ましく、インプリメンテーションを強化するフェーズになるとストロング・タイに移行することが望ましいとされている。

とか…もう、ヘンな注釈いれるくらいならむしろ最初から全部英語で作ってくれた方が。

いや、お知り合いが作成しているかも知れず、あんまり悪しざまにいうのも憚られるのだけど、
同業者の方とか、これみて一発でストンと腹に落ちるのだろうか…?私の理解力が足りてない?

コメント

【著作権】一億総カメラマン時代…?

2018年01月26日 08時29分34秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
今日もよく冷えた湘南地方です。

さて、今日はこんな記事

(AERA dot.より引用)
==========================
「インスタ映え」コンテストで著作権侵害が横行



■インスタグラムの写真募集にひそむ「権利の搾取」

さて、ここでインスタグラムである。人気の高まりに比例してインスタグラムによる写真コンテストや写真募集が増えてきたことは先に書いた。そしてここでも著作権の譲渡を求める規定になっていることがあるのだが、インスタグラムでの募集の場合はその(著作権委譲を強制する)規定が多く、さらには次のようなケースが少なくない。

*作品を応募した時点で、その作品の著作権は主催者に帰属します。

これはすごいことだ。つまり応募者が作品を応募する。しかもスマートフォンなどから“ポチッ”と送信ボタンを押した瞬間に作品は作者のものではなくなる、ということを意味している。さらに考えると、主催者はコンテストの建前のもと、多くの著作権の主張を受けない写真素材を集めることができるわけだ。なにしろ「インスタ映え」がはやる昨今だ。主催者が用意した賞品を獲得するために、たくさんの人が写真を撮影して送ってくれる。中には優れた作品もあるはずだ。主催者はカメラマンを雇う手間も費用も節約して、写真素材を手にできるというわけだ。
(以下略)
==========================
(引用終わり)

“無知に乗じた搾取”というと言い過ぎかな?
一般の人は、何らかの問題が生じるまでは往々にして自分の都合の良いように制度を解釈し勝ち。
著作権を主催者に帰属させても自分は自由にサイトにアップしたりできる、と思っている可能性は高い。
自分が撮った写真であっても、データとして自分の手元に残っているとしても、
一旦著作権を他人に譲渡してしまえば、もはやその著作物の使用は原則できない。
逆に自分が著作権侵害で訴えられてしまう可能性もある。

ちなみにコンテスト応募作品の著作権の帰属については、こんな記事にもあるように、以前から警鐘を鳴らす声もある。

制度の啓蒙とか、権利者意識の向上とかも大事かもしれないけど、
テクノロジーの進歩(とこれに伴うビジネス手法の変化)に応じた規範の再整備が必要なんじゃないかな、と思う。
やっぱり、情報の非対称性というか、乖離度合いが許容できる範囲を超え始めている気がする。

…とまあ思っても期待薄なので、やっぱり自衛のために制度に関するリテラシーを上げていくしかないのかな。

コメント

【著作権法】時事の事件の報道のための利用(「大空と大地の中で」)

2017年08月28日 08時55分46秒 | 実務関係(著作権・価値評価・周辺業務)
おはようございます!
ちょっとネジ巻きなおさないとなぁ、と反省している月曜日の朝です。

週末、ほっとんど何も進まなかった。
昨日は子守だったけど、子供が通っていた幼稚園の夏祭りに顔を出した他は、体を動かせず。。

さて、今日はこんな記事から。

livedoorNEWSより引用)
=================================
遅延機内で熱唱し称賛された松山千春 弁護士が分析する3つの著作権問題

歌手の松山千春さんが8月20日昼、トラブルで遅延した札幌(新千歳)発大阪(伊丹)行き全日空1142便の機内で、自身の代表曲「大空と大地の中で」を歌った。乗客がイライラを募らせる中で、たまたま搭乗していた松山さんが機転を利かせたとして絶賛されている。
…(中略)…
一方で、音楽とはいえ著作物であることには変わりない。アップロードした乗客、松山千春さん、航空会社の三者について、著作権の観点から、どんな分析ができるのだろうか。著作権にくわしい齋藤理央弁護士に聞いた。
=================================

気になったのは、一つ目の指摘(赤字は当職側で彩色しています)。

=================================
●乗客がアップロードすることは?
著作権法で、音楽はどのように保護されているのか。

「著作権法上、音楽は音楽の著作物、歌詞は言語の著作物として保護されます。そのため、著作権者の許可がない限り複製したり、インターネットで配信したり(自動公衆送信といいます)できないことになります。ちなみに、実際に配信しない場合も配信準備のアップロード段階で送信可能化行為として自動公衆送信権を侵害します。

著作物を歌った松山さんにも実演家としての著作隣接権というのが認められます。今回は録音権、録画権、送信可能化権が問題となります。

著作権法上の「複製」には、録画や録音、またその増製(ダビング等)が含まれます。そうすると、動画の無断アップロードは、動画の録音録画をした時点で複製権侵害、録音・録画権侵害となります。またアップロードした時点で複製権、自動公衆送信権(送信可能化権)侵害となるのが原則です。

あとは例外規定を適用して適法となるかどうかが問題となります。今回は歌唱された音楽、歌詞が録画の中心ですので分離できずに録音されてしまった付随的な事物や音にふくまれる著作物(これを付随対象著作物といいます)として利用を適法化するのは難しいのではないかと考えられます」

では今回のケースは違法となってしまうのか。

「現代はSNSなどで一般市民が報道の担い手ともなる時代です。そうすると、偶然乗り合わせた乗客が、時事の事件の報道のための複製(録音・録画)、自動公衆送信(送信可能化)を行っていると判断される場合は、著作権法41条によって録画、アップロードが適法とされる余地が多分にあるでしょう」

=================================

41条(時事の事件の報道のための利用)について、「え、そうなの?ずいぶん踏み込んだ解釈だなぁ」と思ったので調べてみた。

一応、著作権法41条は以下のような規定。
(時事の事件の報道のための利用)
第41条 写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、又は当該事件の過程において見られ、若しくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、及び当該事件の報道に伴って利用することができる。


中山信弘の「著作権法」(有斐閣)によれば、以下の記載が認められる。
「報道の概念については定義がない。従来は、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等のマスコミを念頭に置いていたのであろうが、インターネットの発展により、個人でも事件の報道を行うことが可能になってきた。どこまでを報道と考えるか、という点については判例も学説もなく、今後の課題であろう。」(※但し2007年の初版のものです(第286頁)。これしか手元になく…)

著作権判例百選の「77 時事の事件の報道(バーンズコレクション事件)」において梅田康宏弁護士は解説中で以下の通り述べている。
「著作権法制定時には『報道』とは、報道機関による情報発信を念頭に置いていたと思われるが、ネットの発展により個人が容易に情報発信できる時代となり、『報道』の概念は大きく変わりつつある。ネット上ではSNS、著名ブロガー、まとめサイトなどが情報発信や流通に重要な役割を果たし、報道機関もそれらを網羅的に収集分析して取材や報道に活用するようになってきている。『報道』を情報発信の主体や表現形式で機械的に線引きすることは困難となりつつあり、むしろ報道の自由の保障の下にあるべき表現行為がこぼれ落ちる懸念がある。
 そこで、私見としては、報道の自由の重要性に鑑み、個人情報保護法の適用除外規定や探偵業法の定義規定と同様に、不特定多数の者に対して客観的事実を事実として知らせる行為やこれに基づいて意見または見解を述べる行為であれば、『報道』に該当するといったん広く捉えた上で、権利者の正当な権利を不当に害するような利用行為については『目的上正当な範囲』を超えるものとして処理するのが妥当と解する。」


さて、本件。

まあ、プロの歌手としての男気で、長時間待機を余儀なくされてトゲトゲした機内を和ませるべく、CAのマイクを借りて一節うたった松山千春さんが、動画アップロードについて侵害を追求することは現実にはまあないでしょう
(「ちっ、しかたねーな」くらいは思っているかもしれませんが)。ただまあ、そのあたりの内心の本当のところはわかりません。もしかしたら、「てめーらだけに聴かせるために歌ってやったのにYoutubeに上げるとはどういうことだ!」と憤っているかもしれません。

その意味で、松山千春さんの件は、“権利者の正当な権利を不当に害するような利用行為”にあたるか、という観点から見た場合、実は結構境界事例なのではないかなー、と思います。


立法経緯の観点から見た場合、現行の著作権法は昭和45年法に次々と改正が加えられているもの。
当然LINEもFacebookもYoutubeもInstagramも想定されていない。スマホはおろか携帯電話だってこの世になかった。
乗り合わせた一般の乗客が「報道」をする事態なんて法は予定していなかったはず(このことは上記引用分と同じスタンス)。
少なくとも現行法にいう「報道」は、やっぱり“いわゆる「マスコミ」”を想定したものだと思う。

合目的的に解釈する立場から、CGM(=Youtubeやらブログやら)による発信も本法における「報道」と捉えるアプローチも全くおかしいとは思わないが、
そうすると「報道の目的」とはなんぞや?という疑問にぶち当たる。

もし「報道の目的」が、“こんな面白いことがあったからシェアするよー”ということで「正当な範囲内」とされるのであれば(今回のケースはこれにあたる)、
例えばライブ会場において何等かハプニングやサプライズがあって、それを観客が動画撮影を行いアップロードすることも41条の範囲内と言えてしまう。

つまるところ、
・「報道」を定義するか、
・「報道の目的」を定義するか、
・「正当な範囲」を定義するか、
のいずれかをしないと、個人によるアップロードは事実上何でもOKになってしまう。
だって、個人が世の中の出来事をアップするときの動機って、「面白いからシェア」以外にないでしょ?これは「報道」なのか?あるいは「報道の目的」として正当なのか?
…まあそのあたりを掘り下げだすと、報道機関だって動機は一緒なのかな…?

「社会通念上妥当な範囲」とか色々運用上の線引きはあるけども、もともと定義がなかったから無制限に拡大解釈するというのは、立法者は予定していなかったことではないかと。

コメント