鉢植えのオダマキ(苧環)が咲いています。
この花が咲くと静御前の伝説を思い出します。
そこで今日はオダマキと静御前の伝説を取り上げます。
「苧環(オダマキ)」
オダマキはキンポウゲ科、オダマキ属の観賞用多年草で、高山に自生するミヤマオダマキが原種と言われています。
草丈は約20cm~30㎝、葉は白色を帯びた複葉、4~5月ころに紫色または白色の五弁の花を開きます。
名前の由来は、花の形が紡いだ「苧(お:アサの古名)」と言う麻糸を、丸く巻きつけた糸玉「苧環(おだまき)」に似ていることからと言われています。
・これがオダマキの花です。
・1個の葉が3枚の小さな葉の集合でできていますが、これが複葉です。
「静御前伝説」
源義経を恋い慕う白拍子の静御前が、鶴岡八幡宮の舞台に呼び出され、源頼朝の面前で死を覚悟して義経への恋唄を唄い上げて舞ったという言い伝えが残っています。
頼朝に鶴岡八幡宮社前で白拍子の舞を命じられた静は、
・「しづやしづ 賤(しづ)のをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな」
(意訳)
「静よ静よと繰り返し私の名を呼んでくださった、あの昔のように懐かしい、判官様のときめく世に、今一度したいものです」
・「吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき」
(意訳)
「吉野山の峰の白雪を踏み分けて姿を隠していったあの人(義経)のあとが恋しい」
「白拍子のような賎しい身分の私を、鎌倉まで呼びつけられたけれど、義経を想う心に嘘偽りはありません。 ああ、昔の華やかだった頃の様に、義経と一緒に幸せに暮らしたい」
この様に義経を慕う気持ちを歌って頼朝を激怒させた歌です。
この時、妻の北条政子が「私が御前の立場であっても、あの様に謡うでしょう」と取り成して命を助けたと伝えられている有名な歌です。
・草丈は20~30cm、花径4㎝~5㎝ほどの花をつけます。
静御前が詠ったこの和歌には元歌があって、『伊勢物語』に見られます。
「古(いにしえの)の しづのをだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな」
(意訳)
「昔、親しい語らいをし関係をもったことのあった女に、何年か経って(男が)、昔の織物の麻糸をつむいで巻きとった糸玉から次第に糸を繰り出すように、もう一度親しかった昔に時をまきもどして、あの楽しかった過去の日を現在にする方法があるといいなとしみじみ思うよ」
静御前が詠んだ歌は、この元歌の「しづ」に自分の名の「静」にかけて、義経を恋い慕い、なんとかして昔を今にもどしたいという願望をあらわしたもの、と言われています。
白拍子という歌い踊る遊女でありながら、伊勢物語に出てくる和歌を知り、とっさに我が身に置き換えて舞う能力を持ち合わせていた静御前は教養溢れるすごい女性だったのですね。
・蛇の頭のように見える珍しい形の蕾です。