別所沼だより

詩人で建築家 立原道造の夢・ヒアシンスハウスと別所沼の四季。
     

漂う音

2012-07-20 | アートな時間

 午後の空いた時間 ブリヂストン美術館で ドビュッシー、 音楽と美術 展を観た。 印象派と象徴派のあいだで と副題がついている。

 絵を見れば 心地よい音楽が響いたり、 音楽を聴けば荘重な絵が浮かんだりする。 音楽は色を奏でるのだ。   

    

上段左から  モネ「嵐、ベリール」  モネ「雨のベリール」 下段  ・マルセル・バシェ 「クロード・ドビュッシーの肖像」  ・ドビュッシー「海」 楽譜  ・葛飾北斎 「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

 ・マネ 「ステファヌ・マルラメ」 ・アンリ=エドモン・クロス「黄金の島」
・モーリス・ドニ「イヴォンヌ・ルロールの肖像」 ・ルノワール「ピアノに向かうイヴォンヌとクリスティーヌ・ルロール」

 

 画像はパンフレットから

  ドビュッシーの肖像画や写真(実は水彩画) 手紙など 作曲家の実像に迫る。 
 楽譜をみたが、 小さな文字が書き込まれ、 細かな五線紙に列なる点のような音符、 重なる音が響き合い匂うようにやさしい。
  眼に見えるものは物ではなくて 光りの束… 印象派の絵のように 

  ドビュッシーは 音の色彩を明滅させた、  
  象徴派の詩も彼に大きな影響を与えた。  手許の古い資料によれば

  象徴派の詩は  ことばを日常的な意味や社会性から洗い清め、 個々の単語は「感覚の記号」として、 また「響き」として把握し、かかるシンボルどうしの触れあいから生ずる象徴的な感覚をつなぎ合わせ モンタージュすることによって新たな世界をつくり出す。
 (戸田邦雄) 

 却ってややこしくなったが

 
和音を 純粋に「響き」や「色合い」として  感覚的にとらえる

 つまり ふんわりした 透明な音楽。 「音と香りは夕暮れの大気に漂う」 音楽は香のごとくたゆとう。 ドビュッシーの音楽に魅かれる理由はここかも知れない。 
 絵画的なタイトルを読むだけでも詩を感じる。 

  「亜麻色の髪の乙女」  「美しき夕べ」 「海」 「月の光」 「光と色」 「雨の庭」 「レントより遅く」 「沈める寺」 「ノクターン」

 アール・ヌーヴォーやジャポニズムの影響(二人のクローデル)、 文学、 彫刻、 工芸、 舞台芸術などすべてに響き合う。

 オルセー美術館、オランジュリー美術館、 そしてブリヂストン美術館の所蔵作品を中心に150点の作品。 まとめは引用が多くなった。

 第1章 ドビュッシー音楽と芸術
  肖像画や写真かと思うほど細緻な情景、ピアノを弾くドビュッシーの姿。
  アンリ=エドモン・クロス「黄金の島」 遙かな島々、水や砂のグラデーション、きらめきはまさに音楽を奏で、 ドビュッシーの作品に重なる。
 第2章 「選ばれし乙女」の時代
  ロセッティの「選ばれし乙女」に共感して作曲された。 
  エドワード・バーン=ジョーンズ、モーリス・ドニが描く女性像も影響を与える。 
 第3章 美術愛好家との交流- ルロール、ショーソン、フォンテーヌ
    交流を通して ドガ、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ、カリエール、ヴュイヤール、カミーユ・クローデル、 ロダンらの作品に関心を抱く。 
 第4章  アール・ヌーヴォーとジャポニズム
  エミール・ガレの優美なガラス 「たまり水」 「蜻蛉草花文花瓶」
 第5章 古代への回帰 「牧神の午後への前奏曲」
  古代美術への関心が作品を生む。 メイヤーが撮影したニジンスキーの舞台写真など。

 
第6章 ペレアスとメリザンド
  ドビュッシーが残した唯一の歌劇  楽譜、 舞台装飾 衣装などの写真
 第7章 「聖セバスチャンの殉教」「遊戯」
 音楽劇「聖セバスティアンの殉教」 バレエ音楽「遊戯」を作曲
  さまざまな芸術家が関わった。  
 第8章 美術と文学と音楽の親和性
  小説家ポール・ヴァレリーやアンドレ・ジッドらと交わした手紙が残っているそうだ。
  「おもちゃ箱」 「花火」 「ため息」など作曲のためのエスキス。
 第9章 霊感源
としての自然-ノクターン、海景、風景
  風景によって呼び覚まされた曖昧な感覚、  心地よい幻想を音で表現

  モネ「雨のベリール」「黄昏ヴェネツィア」 マネ「浜辺にて」
   ガレ「海」。ゴーガン、ボナール、エミール・ベルナールなど
ドビュッシー 「水に映る影」
 第10章 新しい世界 
  シニャック、 マティス、ヴラマンク、モンドリアン、クレー、カンディンスキーの作品との交響 (カンディンスキーの「二本の線」は 以前背景に使ったポスターの絵によく似ていた)

 本展覧を楽しみにしていた。 会場は部屋が入り組んでいて行ったり来たり、順序が解らなくなった。 矢印をふやして 誘導して欲しい。
  音楽と絵画と… おなじ感性や感覚が響き合う、 芸術すべてに交響する。
 常設展も愉しみました。 
 

 

コメント
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