近くの家で もう吾木香が咲いていた。 伸びすぎた小さな秋が、 足もとまで踊り出ている。 吾木香はくすんだ色をして、 無口で寂しい… ぽつんぽつんと気ままじゃないの そんな詩も思い出される。
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寂しさの極みのような吾木香も、 ほんとうは紅を秘めてしゃんとしているのだ。 そんな思いもこめられていたか… 埼玉の歌人 三ヶ島葭子の唯一の歌集は 「吾木香」だ。 生涯に六千余首の短歌を残し 四十歳七か月の若さで旅立った。
(所沢市教育委員会発行 三ヶ島葭子Ⅱ)
君を見ん明日の心に先だちぬ夕雲赤き夏のよろこび
春の雨けぶる欅の梢よりをりをり露のかがやきて落つ
しみじみと 語句をたどる。 心に沁みることばだ。
夕雲赤き…
露のかがやきて落つ…
困難は ひとをつよくするし 心を深くするものだと思う。
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埼玉の文学 三ヶ島葭子資料室
あきる野市デジタルアーカイブ