شکلات (ショコラート)
日本で過ごす今年の冬。変わらず目にするのはバレンタイン商戦でごった返すチョコ売り場の光景だ。義理チョコ用の安価な商品から一粒数百円もするような高級チョコまでずらりと並び、チョコ好きの私は「自分用」を選ぶにも目移りばかりでなかなか決断できない。
クリスマス商戦もそうであるように、西洋文化を柔軟に取り入れビジネス化してしまうのは日本人の得意技であるが、イラン人も、日本人に負けず劣らず新しい習慣に飛びつくのが大好きだ。宗教的規制が大きい国だけに、規制の目を巧みに潜り抜け自らの習慣としていく彼らの姿勢には驚かされる。
ここ2,3年の間に、首都のテヘランで定着しつつある新しい習慣のひとつが、やはりバレンタインだ。イランでは女性も男性もチョコやプレゼントを互いに贈り合い、日本でいう義理チョコに相当するような、職場の上司や両親への贈り物も一般的で、この点でも「義理」という、日本人と似た精神性を発見することとなった。
ところで、クリスマスが古代ペルシャの宗教や風習に端を発するという話を以前書いた。(ペルシャ語のクリスマスの記事を参照ください)これに加えイラン人は、バレンタインデーまでもが古代ペルシャの習慣を起源とすると言ってのける。確かに、世界に存する多くの文物や風習の源となっている国は存在する。エジプトやギリシャ、中国なんかもそうだろう。史実的に、クリスマスに関しては広義の意味での「ペルシャ」の習慣が起源だと言っても差し支えないだろうが、果たしてバレンタインデーはどうだろうか。
イランにはイラン暦という独自の暦が存在する。例えば、イランの新年に相当する春分のノウルーズや秋分のメフルガーンがそう。どちらも太陽の動きに大きく関係し、農耕儀礼の跡を色濃く残す日である。そして、バレンタインデーに近い2月17日もまた、イランの暦では、愛と大地を祝う日として古来から重要な日であった。この日は、「セパンダールマズガーン」といい、セパンダールマドという大地の守護神、母性、愛を表す神格を祀る日であり、紀元前20世紀にはすでに、この日、男性が女性にプレゼントを贈る習慣があったのだという。イラン人たちはおそらくこの習慣を根拠に「バレンタインデーはペルシャ起源」説を披露しているものだと思われるが、真相は如何に・・・
事の真偽はともかくとして、イランでも贈答の機会が増えることにより、イスタンブルのチョコケーキ(写真)のように、デザインのこったものや、パッケージの美しいものなど、目を楽しませるチョコレートがずらりとショーウィンドウに並ぶ日も近いかもと、チョコ・フリークの私は秘かに期待するのであった。(m)
カーニヴァルとバレンタインデーの習慣が同じ起源であると思われる西洋がバレンタインデーのプレゼントの起源でないことは確かのようですが、果たしてペルシャなのか…
mitraさんの説明を拝読すると、そんな気もしてくるし、イラン人が主張するのも納得です。
イランのお菓子やさんに色々なデコレーションチョコが並ぶ日も近そうですね。
あ、そうだ。先日タヌ子さんのところでアルメニア人のことを書き込んだ際に書き忘れたのですが、イランにもアルメニア人街やアルメニア教会がけっこうあるのですよ!アルメニア人は、イランで「丁寧な仕事」をする人たちとしてよく知られています。
バレンタインの起源は、イラン人がなんと言おうとも、私はやはり西洋のどこかだと思っています(笑)。
チョコレートはけっこう味は良いものがあるのですが、おもしろいものがなかなか無くって。今後が楽しみです。