地球散歩

地球は広いようで狭い。言葉は違うようで似ている。人生は長いようで短い。一度しかない人生面白おかしく歩いてしまおう。

2008-04-30 15:45:33 | 日本語

 羊

 茶道を習って十年も過ぎると小さな茶道具が手許に集まる。その中から春なら桜、夏は波に千鳥・・と季節に合わせた道具を選んで組合せ、自宅で薄茶を点てて飲んだり、稽古で使う身の回りの道具を整えたりしている。

 写真は、客人に道具を見せる折に敷いて用いる古袱紗(こぶくさ)。茶会では茶碗を運ぶ時に活躍する。道具を清めるために使う緋色の布(袱紗=ふくさ)の四分の一の大きさ(15 ×16㎝)で、袱紗が無地なのに対し、名物として伝来した裂(きれ)を写した華やかな織物である。小さくて値段も手頃、集めるには最適なアイテムだ。

 日本の伝統柄が多い古袱紗の中で異彩を放つのが写真の一枚。向かい合う羊と樹の組合せは「花樹双羊文」と呼ばれるものである。聖なる樹を中心に動物を左右対称に置いた構成は、木の下の聖地や楽園で動物たちが清められ、祝福されるという意味を持つササン朝ペルシャの重要な文様。これがシルクロードを経て天平時代に日本に伝わったそうで、正倉院には聖樹と象、鹿、羊、鳥が配された宝物が多数ある。昨年の正倉院展で、羊と聖樹をろうけつ染めで仕上げた屏風が話題になったことは記憶に新しい。そして、ペルシャ語「弦楽器」の記事でシルクロード、正倉院のことが出てきたばかりでもある。

 写真は「茶杓荘(ちゃしゃくかざり)」というスタイルの茶の点て方。茶杓とは抹茶を茶入れや棗からすくい出すスプーンだ。道具の中で茶杓に由緒がある時に古袱紗にのせて拝見に出すと、普通は畳に直接置く茶杓が、ぐっと存在感を増して見えてくる。ペルシャ由来である羊文様のエキゾチックな雰囲気と簡素な竹の茶杓という道具組みが、現代から利休の時代を通って遥か天平時代、更に当時の西域の文化にまで世界を広げる。ちなみに写真の茶杓は私が作ったもの。由緒といってもそんな思い入れの道具で十分。高価なものを揃えなくても楽しめる茶の湯の世界も広い。(さ)

 参考文献 『お茶人の友 茶席の裂』 世界文化社

いつもありがとう!アラビア語の羊  ギリシャ語の羊

そして茶道にまつわる記事 イタリア語の茶 もお楽しみください。

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16 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
美しい! (hyblaheraia)
2008-05-01 07:04:01
茶道をギリシアでご披露なさり、いつもとは別人に見えたというご友人の反応があった、というエピソードを思い出しました。今も続けていらっしゃるんですか?
この古袱紗の模様がペルシア起源で、天平時代に日本に伝わったというお話もとても興味深いです。茶道というと侘び寂びのイメージがありますが、これはとても鮮やかで華やかですね。そして茶杓はお手製なんですか!?素晴らしいです!!
私も日本文化の嗜みがあれば・・・。和菓子を食べるのはその類にはなりませんよね。
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茶道もやられているんですね (がんさん@大和の国)
2008-05-01 09:44:14
私もお抹茶が大好き(あの雰囲気も)で、機会があればよくいただいておりますが、不作法なもので畏まった茶席は苦手です…。
正式に学びたい(できれば遠州流)という気もあるのですが、なかなか…。
因みに、我が町生駒の特産品は茶筅です。
こちらの小袱紗の文様、『正倉院展で見る感じだよな~』と思っていたら、そういう流れだったんですね。
勉強になります。
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おひさしぶりです (Erva Vita)
2008-05-01 21:37:57
5月の空と共にはじめてみようかと思いハーブのブログを立ち上げ中です。
まだハーブが育っていないのでクッキングのほうは、まだまだですが
今までのことを無駄にしないためにもやってみようかと思ってます。

ギリシャは、復活祭あとの週
”羊”で羊の丸焼きを思い出し香り漂ってきそうです。

また地球散歩しに遊びに来ますね。
これから、またまたよろしくお願いします。harula
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hyblaheraiaさん (さらさ)
2008-05-01 22:08:50
茶道のエピソードを覚えていてくださったのですね!
以前よりペースダウンしていますが、帰国後から稽古を再スタートして現在も細々と続けています。
この古袱紗は随分前に初釜で先生からいただいたものなのですが、このように活用(?)出来て嬉しいです。今、ペルシャといえばギリシャとのつながりがあり、mitraの住んでいる場所でもあって、以前よりも思い入れが深い一枚になりました。
茶杓は茶道関係の公開講座で作ったものなのですよ。
和菓子も季節ごとの美しい姿を形にしていますから、
それを楽しむことも日本文化。私も和菓子、大好きです!
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がんさん (さらさ)
2008-05-01 22:24:34
茶道は細く長く・・という感じで続けています。奈良と京都に惚れ込んで通い始めたころからスタートしました。そちらで道具を購入した中に生駒の茶筅もありました。
文様と正倉院のつながりを感じられたのは、さすがですね!
かしこまっているようですが、意外に自在で楽しいものですし、がんさんに似合っているような気がします。機会があったら是非、門をたたいてみてください。稽古の体験なども出来ると思います。
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Erva Vitaさん (さらさ)
2008-05-01 22:30:50
お越しいただいて感激です!
新しいスタートですね。
ハーブに焦点をあてたブログとのことで、私のほうもまた伺う楽しみができました。是非、また素敵な記事を届けてくださいね。

ギリシャの復活祭のことは、ギリシャ語の羊で丸焼きの写真とともに記事にしました。私も書いていて香りや味まで懐かしく思い出していました。

こちらこそ、またどうぞよろしくお願いしますね。

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羊さん (yokocan21)
2008-05-02 18:43:37
なんとも可愛い図柄ですねぇ。パッと見て、日本のものだとは思えなかったから、やっぱりシルクロード伝いにやって来た文様だったのですねぇ。
奈良がお好きな、さらささんらしい古袱紗ですね。
この茶杓は、さらささん作なんですねぇ、凄いです!ギリシャではモザイクもされてたのですよね、器用な芸術家でらっしゃいますねぇ、素敵♪
奈良の文化を見ると、西域・ペルシャの文様って、日本古来のものに意外とマッチすることがわかりますよね。長い年月をかけて人々が運んできた西域の素晴らしい文化の片鱗が、お茶の世界でも垣間見れるだなんて、なんてロマンチックなんでしょう!
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yokocan21さん (さらさ)
2008-05-03 11:44:09
羊さん、愛らしいですよね。明らかに日本の伝統的な図柄とは異なった雰囲気を持っていますが、茶杓との相性もなかなか良いです。利休も中国や韓国渡来の茶碗や茶入れを愛用したりしていて、グローバルな部分もあるんですよね。
yokocanさんがおっしゃるようにシルクロードを伝わってきた文様は日本古来のものにマッチしていると私も思います。忍冬唐草文様などもそうですよね。
茶杓はよく見ると「いびつ」なのです(笑)でも自分で作ったと思うと愛着があり、家で抹茶を飲むときは必ず使っています。モザイクの方はまだまだ駆け出しで・・・芸術家なんて・・お恥ずかしい限りです~。
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古袱紗♪ (yuu)
2008-05-03 13:06:32
古袱紗、素敵な柄が沢山あるけれど、これは…
由来を知ってしまうと、余計に魅惑的ですね~!日本古来のものがシルクロードで繋がっていると思うと…よく考えれば当たり前のことかもしれませんが、ロマンチックだし、世界と繋がってる感じがして、なぜか嬉しくなります♪
それに、茶杓を作られたなんて、すごいですっ(>▽<)さらささんは芸術家だったんですね!!素敵♪
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yuuさん (さらさ)
2008-05-03 23:40:19
そうなんです。古袱紗、色、柄、織り方・・いろいろ素敵なものがありますよね。
伝統柄が好きだったのですが、ギリシャに住んでからはシルクロードを伝わってきた文様に惹かれるようになりました。写真の古袱紗は昔、先生からいただいたもので、羊をテーマに・・と考えた時にこの文様が目に浮かびました。今は地球散歩にペルシャ語も加わり、仲間のmitraが住んでいることもあって更に近しいペルシャ文化になりました。
茶杓は公開講座で習ったものだし・・いろいろやってはいますが、どれも下手の横好きです(笑)
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