子供の時には好物の対象外であって、その後気付くと
好きになっていたという食べ物がある。
劇的に変化するというものではなく、謂わば漸近的に
ひっそりと転換していく食べ物。
私の場合、その代表が「豆類」だ。
例えば「豆の煮物」など、以前は絶対に食べようとは
思わなかったのだが、今や結構好きなものとなってい
る。
イメージ的には典型的な年寄りの食べ物だったのだが、
こちらが歳を取ったということは置いといて、もうそ
ういうイメージでは捉えない(ことにした)。
むしろ、時代にあったヘルシーな食べ物と、都合の良い
イメージに転換した。
豆を使った料理の中でも特に好きなのは、「カスレ」の
インゲンだったり、「カレー」のヒヨコ豆、レンズ豆
だったりするのだが、要するに煮込みの食材としては
今や欠かせないものとなっている。
で、以前「トリッパ」の時に、「インゲン豆」を探して
彷徨したという苦い経験をしたので、その後いつでも
使えるようにと「インゲン豆」(自家製と店売りのも
のを)を確保したわけだが、久しぶりに食したいとい
う欲求がむくむくと湧きあがった(この場合立ち上が
った?)。
そこで「インゲン豆のカレー」を作ることにした。
過去に食べたことも無いし、見たこともないが、多分
いけるだろうという前提の下やってみることにした。
最近お気に入りの「野菜カレー用香辛料セット」があ
るので、それを使えば大丈夫だろう、と考えたのだ。
まず一晩ふやかしたインゲンを、柔らかくなるまで水
で煮込む。
そこへ、オイルで炒めた香辛料のシードと、玉ねぎ、
そしてその他の粉末スパイスをいれる。
どんなスパイスかというと、「ターメリック」「ジン
ジャー」「チリ」「コリアンダー」「ガーリック」「ク
ミン」「ガラムマサラ」だ。
後は、適当に煮詰まるまで。
これだけの、実に簡単な作り方のカレーなのだが、果
たしてこれで味が出るのだろうか、という不安がないわ
けではなかった。
仕上げ前に味見をする。
う、旨味がない。
当然だ、出汁になるようなものは使ってないのだから。
特に動物系の旨味は一切ないし。
やはり、豆だけでは駄目か。
ここで「スープの素」を使う誘惑にかられる。
しかし、その誘惑を振り切って塩を足し、もう少し煮
詰める。
この微妙というよりちょっと大胆な塩加減が重要だった。
もう一度味見をすると、結構行けてきたではないか。
香辛料の香りと豆の味が一体化してきた。
ということで、「インゲン豆のカレー」は無事完成し
た。
そして、今回もまた実感した。
カレーは香辛料の競演だと。
「出汁の素」よさらばだ。
ついでに、「カレールー」も。