道路全国連国交省要求書
毎年、環境週間に合わせて、「全国公害被害者総行動」が行われます。今年は6月7~8日に第42回目の「総行動」。全国から公害被害者が集り、集会・デモ・中央省庁交渉が開催されます。「道路住民運動全国連絡会」も毎年参加しており、国交省交渉を予定しており、その要求書が取りまとめられましたので、ご紹介します。
国土交通大臣 石井啓一 殿
2017年6月7日
道路住民運動全国連絡会 事務局長 橋本良仁
国土交通省の2017年度の道路関係予算は「効率的物流ネットワークの強化」三大都市圏環状道路整備や拠点空港・港湾へのアクセス道路整備など(2529億円、154億円・6.5%増)に見られるように大型道路建設をさらに押し進め、29年前に計画した四全総14000キロメートル高規格幹線道路網をすべて実行しようとしている。
日本の道路の多くは建設後30年以上を経過していて、維持・管理・更新には今後50年間で250兆円が必要と試算され、新たな道路を作る財源は全くない。
本要請は、昨年と同じ中部横断自動車道(長坂~八千穂)――山梨県側(北杜市)、東京外環道、横浜環状南線を中心に行う。また、昨年の要請時に課題となった平成22年交通センサスによる将来交通量予測がいまだ公表されていない。具体的な回答を求める。
記
将来交通需要予測およびB/C評価の見直しについて
道路事業のB/C(便益╱費用)評価は最新の道路交通センサスによる将来交通需要予測に基づき行うべきものである。しかるに平成22年交通センサス実施以後も、平成17年交通センサスによる将来交通需要予測が用いられ、既に平成27年交通センサスが実施された今日まで続いている。
平成22年交通センサスによる予測では将来交通需要には明らかな減少傾向がみられていたが、平成27年交通センサスではその傾向がさらに強まっていると判断できる。平成17年交通センサスに基づくB/C評価は明らかに過大であり、それによるB/C評価が1を超えたとしても道路の必要性の根拠にはなり得ない。
- 全国で建設中や建設を予定している道路について早急に平成27年交通センサスに基づくB/Cの見直しを行うことを求める。
- 平成17年交通センサスに基づく評価でB/Cが2.0以下の道路事業は見直しによって、確実に1を超えることが確認されるまで事業を凍結するよう求める。
中部横断自動車道(長坂~八千穂)――山梨県側(北杜市)
- 国交省は平成27年4月計画段階評価は適正に行われ終了したとしているが、その実態は旧態依然のやり方で進められ、様々な瑕疵と問題点がある。計画段階評価の「構想段階における市民参画型道路計画プロセスのガイドライン」(平成17年9月国土交通省道路局)に基づいて中部横断自動車道(長坂~八千穂)の計画段階評価が行われたとされているが、そのガイドラインには構想段階の市民参画の仕組み、住民からの指摘事項の具体的な取扱いや意見を計画に反映するための仕組みが明確にされていない。2013年に道路計画プロセスのガイドラインが改定されたが、住民から指摘された問題点や意見等はどのように反映されることになったのか説明を求める。
このことは既に平成27年11月26日の国交省要請の際に「中部横断自動車道(長坂-八千穂)計画段階評価の問題点」とする意見書提出により指摘し、やり直しを求めている。直近では平成29年3月14日衆議院第一議員会館で開催された超党派議員連盟「公共事業チェック議員の会」の総会において引き続き追加的に指摘し要請している。 - 情報開示請求により、中部横断自動車道の山梨県側・長坂~野辺山の高速道路建設計画の概略(ルートの位置と建設構造等)が判明したが、国交省は未だにそのことを関係住民、別荘所有者等へ明らかにせず、説明もしていない。なぜ、中部横断自動車道新ルートに関係する住民・別荘所有者等へ広く知らせ説明をしないのか説明を求める。
- 国交省は中部横断自動車道の山梨県側新ルートに関し、中央道須玉ICから国道141号に沿って北上するルートを検討していたことが情報開示請求により明らかとなった。なぜ、新ルート案を発表する際に比較評価の機会をつくるべく複数案の一つとしてそれを示さなかったのか。さらに、中部横断自動車道(長坂~八千穂)の長野県側に関してはまだ3キロ幅ルート帯のままでその建設計画の概略費用も算出されていない。現在、建設計画を進めているがこのような問題についてどのように考えているのか説明を求める。
東京外環道(練馬~世田谷)
- 外環本線事業地には現在、都市計画法65条の制限がかかっている。供用後に同法53条がかかるということだが、それは確実か? その場合、53条に基づく申請が許可される条件とは何か。また、53条を適用しない同法11条3項、但し書きの適用は考えていないのか。
- 区分地上権契約では、提示されている契約書案は、あまりに一方的であり、契約行為が双方の対等の関係の中で協議し、取り決めるという契約の大前提が失われている。第三者の弁護士が参加するなど、公平、対等な協議を含む契約交渉の場の設定を求める。
契約上の問題点としては、
●地下の不動産価値を全体の30%を前提とする。
●事業地に相当する敷地部分の分筆、
●当該部分の登記は、第一順位に記載
●残地に対する補償がない
●契約当事者に事業者の国交省が入っていない、など。 - 家屋に被害が発生した場合は、科学的かつ分かりやすい手法により、原因分析を行い、対策を明らかにされたい。そのためには地盤変容調査と第三者による判定機関の設置が必要である。その2点を直ちに実施することを求める。
- 要望 博多駅前陥没事故は、外環沿線住民の間に不安、恐怖をもたらしている。外環の地上部は住宅街である。あのような陥没事故が起これば、死傷者が発生する可能性が極めて高い。沿線住民は、速やかな緊急避難計画立案を求めているが、外環国道事務所は「初期掘進の10か月間に検討する」と回答。シールドマシンが動き出せば、万一の事態はいつ発生するか予断を許さない。一刻も早い緊急避難計画立案を求める。
横浜環状南線
- 平成29年2月20日付け公害調停は「被申請人は、環境影響評価の大気汚染予測の方法について、科学的知見に基づき最適な予測方法を用いるものとする。」と成立した。具体的にいつどのような方法を採用するかを示すことを求める。平成29年4月5日の衆議院国土交通委員会での石川道路局長の回答ではその方法、時期ともに不明である。同回答では、プルーム・パフ式が一般的手法として信頼性は確認されている、としたうえで、3次元流体モデルは問題があると云々している。しかし、パフ・プルーム式に固執し、進化したコンピューターシステム技術利用での転換を図ろうとしてこなかったことに問題があると付言する。
公害調停の成立内容は、係る背景に基づくものであり、新たなシステム構築を早急に取り組むことを要請する。
平成28年秋の横浜市議会の決算委員会で市当局は議員の質問に「住民の要望に応え横環環状南線も必要と思う。換気塔に脱硝装置を付けるよう事業者に伝える」と回答した。「事業を進めるに当たって住民の理解を得ながら」と言いながら同じ横浜環状北線では脱硝装置を備えた換気塔を設置し同じ環状南線では設置しないことでは同じ横浜市民の理解は得られない。NEXCO東日本に脱硝装置を設置するよう指導することを確約するよう要請する。 - 近年の度重なる大地震災害の度に大規模盛土造成地の問題が都市整備局を中心に宅地造成法等の法改正を行いながら、同じ国交省の道路局はこれを無視して盛土地盤を中心とした地域で横環南線などの高速道路建設を進めている。
これは国交省の政策矛盾である。宅地造成法に基づき危険度チェックを早急に行い沿線住民に安心を与えることを強く求める。
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