『みちしるべ』 by 阪神間道路問題ネットワーク

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『みちしるべ』**安全より政官財癒着の利権優先の道路政策**<2019.冬季号 Vol.105>

2020年02月24日 | 藤井隆幸

安全より政官財癒着の利権優先の道路政策

藤井隆幸

 2019年8月24日の朝日新聞Web版のニュースに、以下のような記事があった。

修繕必要な橋やトンネル 7割が未着手

 全国にある橋やトンネルのうち、5年以内に修繕が必要なのは7万3000か所余りに上り、このうち7割ほどが修繕に着手できていないことがわかりました。特に地方の自治体に多く、費用や人材の確保が課題となっています。
平成24年、山梨県にある中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し9人が死亡した事故を受けて、国土交通省は橋やトンネルを管理する自治体などに、平成26年度から5年に1度の点検を義務づけています。

 その結果、ことし3月までの5年間に全国およそ72万8000か所の橋やトンネルの点検がおおむね終わり、今回初めてその内容がまとまりました。

 それによりますと、次の点検が行われるまでの5年以内に修繕が必要とされたのは7万3000か所余りでしたが、このうち7割ほどにあたる5万6000か所余りでは修繕に着手できていないことがわかりました。

 内訳は、橋が5万3600か所余り、トンネルが2800か所余りで、特に都道府県や市町村が管理するもので修繕が進んでいないということです。

 背景には、費用の確保が難しいことや、専門的な技術を持つ職員の減少などがあるということで、国土交通省は「交付金や補助事業に引き続き力を入れるとともに自治体と連携して必要な修繕を進めていきたい」としています。

 2020年(令和2年)度の国土交通省道路局の予算を見ると、地方単独事業の内容がどこにも記されていない。従って、国の直轄事業と地方に対する補助事業、それに有料道路(主に自動車専用道などの高速道路)事業を見ることにする。

 直轄事業は1兆5795億円、補助事業は7945億円、有料道路事業は2兆5419億円、その他1448億円、合計5兆607億円である。直轄事業の内、維持補修費用は3945億円(25%)で、補助事業では3857億円(49%)でしかない。この中には、舗装のやり直しなどを含む。有料道路事業は不明である。

 新聞記事にある「修繕が進んでいない」のは、国の予算に表れていない地方単独事業が中心であると考えられる。昨年(2019年)4月1日現在、高速道路は約9,000km(0.7%)で、国道は55,700km(4.5%)、都道府県道は129,700km(10.6%)、市町村道は1,030,400km(84.1%)である。地方単独事業は、その殆どが市町村道であることから、深刻さは理解できる。

 維持補修事業は比較的大きな予算を伴わない。対して新設道路は、莫大な予算を占める。東京オリンピックなどという事情で、大規模建設事業にシフトしている。このようなイベントなどの出来事は、半世紀以上継続しているのが実態だ。考え直す時代に、既に突入しているのではあるが、国土交通省の予算を見る限り、命に係わる維持補修は実態を伴ったものとは程遠い。

 町村道など維持補修に必要となる橋梁は、少ないだろうと思われるかもしれない。しかし、高速道路が町村道を分割してしまうことは多くある。生活に支障があるので、谷状に分割された部分に、高速道路建設費用で、何億円にもなる立派な橋が建設される。この橋は、高速道路完成の暁には、町村に譲渡されてしまう。点検と維持管理は、町村の地方単独事業となってしまう。

 町村にとって技術も予算もない、このような今すぐ対策が必要な橋梁が、高速道路の上には、全国に200ヶ所以上存在する。コンクリートの破片が落下すると、下を走る高速道路では重大事故になる可能性があるのではあるが。そのような状態が現在進行しているのは、多くのドライバーには知らされていない。国土交通省は、またまた「想定外」だったというのであろうか?

 

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