日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

原油価格高騰 ~ 投機筋に求めたい基本的投資モラル

2008-01-07 | ニュース雑感
日経平均が本日も続落。年明け前後から下げ止まらない様相を呈してきました。

そもそも、ここ半年間の株価の下落の主因は、ご存知の通り「サブプライム問題」に尽きます。出口の見えないこの問題と、米国経済の先行き不安から、証券市場では金融および主要産業売りが先行し、またドルも大幅に売られることでドル安円高基調に舞い戻ってきました。景気の先行きに黄色信号が点ったと言えます。

それにさらに追い討ちをかけているのが、原油高。1バレル=100ドルを越す史上最高値を更新するなど、過去に例を見ない勢いで原油価格が上昇を続けています。原油価格上昇は物価上昇を引き起こし、景気の信号は赤に変わっていくことになりかねません。

そもそも今回の原油高ですが、米国のサブプライム問題に嫌気したヘッジファンドなどの投機筋が、中国やインドなどの将来的な経済成長を見越して大挙原油市場に流れ込んだ結果、実際の需給関係とは無関係の狂乱相場を作り出したものです。
70年代のオイルショックや湾岸戦争時の原油価格急騰は、いずれも産油国側の供給制限に端を発した相場変動であっただけに、今回の相場急騰は実態を伴わないマネーゲーム型の異常な事態であると言えます。

需給関係とは無縁???
そもそも相場とは、需給関係を背景にして動かされるべきものであり、そうでない動きが相場を支配し、かつそれが生活に欠かせないモノであるとすれば、事態は由々しき問題であるのです。

石油は、現代の人間生活にとって欠かせざるエネルギーです。石油の価格上昇は、電力供給価格への影響はもとより、ガソリン価格上昇は輸送コストを確実に押し上げますし、ひいてはあらゆる産業のコストアップ、イコール市民生活への大打撃に確実につながるものと言えます。

その価格が、人為的な、至って投機的なものに左右されていいのでしょうか?

管理価格制度の考え方は、日本の過去にも存在した国家専売等による価格統制のようなやり方にならざるを得ず、確かに市場原理を損なうものであり好ましくありません。しかしながら、石油のような人類の生活を根底から覆しかねない資源については、このようなマネーゲームの標的にされるのであれば、政府間協議レベルでの国際的管理も必要になるのではないか、とさえ思わせられる今回の「事件」です。

「100ドルはまだ始まり。120ドル、150ドル、その先もあると覚悟していた方がいい」。大手商社のエネルギー担当者は、中、長期的に値上がりが止まる理由は全くない、と断言しています。
マネーがマネーを呼ぶ循環に入った原油相場。「世界経済が失速、本当に石油危機に陥るまで(価格高騰に)ブレーキはかからない」と市場関係者の間ではあきらめとも取れる見方すら出始めているのです。

生活の根幹を支えるエネルギー相場を高騰の一途に陥れる投機筋。いかに投資で大きな利益を上げようとも、長期的な世界経済の冷え込みを自らの手で作り出すようなやり方は、人類が自ら作った人為的な要因が世界を滅ぼしていくかのようなSF的地球滅亡ストーリーにもなぞられる、ある種「戦争」にも似た愚かな行為ではないのでしょうか。

今回の「事件」で議論されるべきは、石油依存脱却型の今後の産業のあり方ではありません。マスコミ各社は、今回の主犯格であるヘッジファンドをはじめとした投資家たちに対して、投機筋自身も含めた市民生活の根幹を揺るがしかねないような投資活動は自粛すべき、との「投資の基本モラル」を声を大にして求めるべきではないかと思うのです。