日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ18 ~ 営業活動のカギを握る「1:5」と「5:25」

2008-01-25 | 経営
前回「80:20の法則」の話をしました。するとあるお取引先から、「稼ぎ頭の20の中の最重要スタッフが辞めてしまった時に、残ったスタッフの20%がまた売上の80%を稼ぐことになる理論は分かるが、全体の売上が落ちて利益まで低下してしまったんじゃ困る。全体の利益を落とさずに、新たな80:20に移行させる法則はないのか?」というクレーム(?)を受けました。

まぁ、本当は「残されたスタッフに危機感を与えて、叱咤激励&教育してください」と言いたいところですが、まぁそれじゃコンサルの用をなさないので、この場合の「80:20」を補完する比率法則を紹介しておきます。

まずは「1:5の法則」。
「ひとりが今までの5倍働け!」という話ではありません。一言で言えば「新規顧客の獲得および新規顧客向け販売にかかるコストは、既存顧客向け販売コストの5倍かかる」という法則です。すなわち、エースが抜けた時に焦って「あいつの抜けた分まで皆で稼がにゃいかん!とにかく全員で新規開拓だぁ~!」と言うのは、間違った指示になります。こんな場合の正しい指示は、「今は皆で、既存客を攻めて攻めまくれぇ~!」ということなのです。よくある過ちなので、注意が必要です。

「新規獲得なくして発展なし」は、もちろん大切なお話ですが、ピンチのときには「1:5の法則」を思い出して、まずは効率的な収益確保をめざすことが正解なのです。"新規攻め"は獲得までの費用対効果が悪いのですから、ピンチを乗り越えて落ち着いた段階でこそとるべき戦略と考えるのがいいと思います。

もうひとつ補完法則。それは「5:25の法則」です。
「顧客離れを5%改善していけば、利益は最低25%改善される」というものです。実際にあったお話で、既存顧客のフォローアップを怠ったために、1年間で40%も顧客を失った通販会社があるそうです。新規を獲得しているそばから既存顧客が離れていくのでは、コストばかりかかってザルで水をすくっているようなものです。いかににして既存顧客をつなぎとめて、リピートしてもらうかは、発展する会社とつぶれる会社の分かれ目になっていると言えるのです。

エースが抜けたときなどには、特にこのことを思い出してください。彼が担当していた先のフォローに要注力です。担当がいなくなったり代わったりしたタイミングでは、顧客フォローが悪くなり既存顧客を失うリスクに大きくさらされます。ほおっておくのと、しっかりフォローするのでは、顧客離れの度合いは大きく違うはずです。

すなわち、エースが抜けて利益が大きく落ちるケースが多いのは、彼が抜けて新規ビジネスの獲得ペースが落ちるからではなく、彼が担当していた既存客のフォローがなく既存顧客をみすみす失っているからなのです。

この2つの補完法則における考え方の共通点は、「既存顧客重視」ということです。アマゾンを代表とするネットビジネスの世界では、いち早くこの考え方を取り入れて、「新規顧客獲得偏重」型のセールス戦略ではなく、「対既存顧客セールス」、「ロイヤリティ向上」を重視したセールス戦略をとっています。

すなわち、「1:5の法則」や「5:25の法則」によって、既存顧客重視の姿勢を徹底しつつ、結果「80:20の法則」におけるロイヤリティの高い20%のパイを確実に増やしてしていき、最終的には稼ぎの80%の部分の拡大に帰着させる、という戦略になるわけです(ネットビジネスでは、稼ぎ頭でない80%の商品に着目する「ロングテールの法則」というものも、並列戦略として存在します)。

基本の考え方を「1:5」や「5:25」に置き、メインターゲットとしての照準を「80:20」の「20」にあてる。「BtoC」「BtoB」のリアルのビジネスでも、エースが抜けた等「有事」の時のみならず、「平時」でも十分に活用可能な営業の基本戦略であると言えるでしょう。


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