日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ユニクロに学ぶ“安心マーケティング”

2010-01-29 | マーケティング
昨日の続き的にいきます。

今日は「安心マーケティング」の「安心」はどうやって作るのかのお話です。その前に、「安売り」に「安心」が生まれないのはなぜかを考えてみます。昨日お話ししたように、「安売りのためのコスト削減の陰で、人員カットや賃金カットで泣いている人がいることを想像させられる」ことも理由のひとつではありますが、単なる「安売り」の“ウリ”は「価格」でしかないため「安売り」が前面に出すぎたビジネスは「価格」以外の“ウリ”が見えにくく、商品にそれ以上の「物語」が付加されずらくなることで、なんとも無機質な売られ方に終始してしまう嫌いがあるのです。そんな流れでは「安い」以外に消費者に訴える「物語」がなく、安いから買いはするものの景気悪さのイメージばかりが残ることで、「不安」心理を増長する結果になってしまうと思うのです。

この不況の時代に一人勝ちの「ユニクロ」はなぜ一人勝ちなのかと言えば、たびたび本ブログでも取り上げていますが、単なる「安売り」ではなくそこには「安い」と同時に、商品に「物語」を持たせることに成功しているからに他なりません。素材の良さであったり、開発へのこだわりであったり、「ユニクロ」の商品には個々の商品に対する“思い入れ”がしっかりした形で根付いてそれが「物語」すなわち「ストーリー性」を生むことで、他の安売り業者とは違う「安心感」を消費者に与え「買いたい」気持ちを醸成しているのではないかと思うのです。私が考える「安心マーケティング」成功のポイントは、商品や売り方に関する「ストーリー性」を持たせることにこそあるのです。

では具体的はどう進めるのかですが、不況の中にもトレンドは必ず存在するわけで、そのトレンドを読み解きながら自社の商品やサービスにいかにそのトレンドにあったストーリー性を付加させて提供していくか、という流れになるのではないでしょうか。例えば、不況下のキーワードのひとつに“巣ごもり”という言葉があります。“巣ごもり”とは、景気が悪いから遠出をしない、外食をしない、という流れを指していますが、これはすなわち家庭回帰であり家で過ごす時間が長くなることに他ならないのです。だとすれば、家にいる時間をより楽しく演出し楽しい家庭生活を想像させるような商品の開発やサービスの提供、あるいは楽しさや明るさをイメージさせるストーリー性ある売り方を演出することが、まさしく「安心感」を感じさせお金を出して「安心」を買おうとするのではないでしょうか。

「ユニクロ型の安売りは景気にとって悪である」とか「安売りでデフレを助長する低価格品の輸入は制限すべき」等の論調が、流通業者や一部メディアで盛り上がりを見せつつあるようですが、はっきり申し上げてそれは誤った判断であると思います。少なくとも「ユニクロ」は単なる価格破壊ビジネスではありませんし、価格に対して価格でしか対抗手段を考えつかない“負け組マーケティング音痴”の結論に過ぎないのです。流通業者をはじめ低価格競争に巻き込まれて頭を痛めているビジネス・パーソンは、今こそストーリー性を演出することで「価格」から脱却した“ウリ”をつくって「安心」を売る工夫をするべき時なのです。個人的には、この流れで低価格競争に終止符が打たれることこそが、景気回復のカギを握っていると思うのです。まずは各経営者が、「ユニクロ型ビジネス」が単なる安売りではないという正しい評価ができるかどうかがカギではありますが…。

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