日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ13 ~ 「責任と権限」=「義務と権利」

2007-11-12 | 経営
本ブログ、カテゴリー別分類を作りました。バックナンバーが探しやすくなったと思います。ご活用ください。

先週はHOT NEWSが多くて、「経営のトリセツ」ができませんでした。
そこで軽めのネタで「トリセツ」をひとつ。

企業経営において、「責任と権限」の委譲は組織の分権管理における必須条件であるとは、これまでもお話してきました。では「責任と権限」って何でしょう?
委譲する側も、委譲される側も意外に分かっているようで、分かっていないケースが多いように思いいます。今一度整理してみましょう。

「責任と権限」とは、「業務上、何かを決定もしくは指示命令できる」権を持つかわりに「その責」を負うということなのです。「読んだそのままじゃん。分かってるよ」と言われそうなのですが、本当の「責任と権限」を持って人の上に立つためには、「責任」と「権限」のどちらが先にたつものなのかに関してしっかり理解をしないといけないのです。

よく間違える理解は、「権限」を行使して何か間違いがあったとき「責任」を負うという解釈。すなわちまず「権限」ありきでその行使の結果如何で「責任」が生じるということです。この解釈ですと、間違いや失敗がなければ「責任」は発生しないことになってしまいます。変だと思いませんか?
正しい理解は、「責任」を全うすることによって「権限」が生じるということです。すなわち、まず「責任」全うがあってその結果「権限」が生じるのです。

なんか分かりにくいとお思いのあなた。この関係を分かりやすい言葉に置き換えると、「義務」と「権利」の関係と同様であると考えてください。
子供や学生の頃を思い出してください。「ちゃんと宿題やってから遊びに行きなさい」とか、「学校に文句があるのなら、やるべきことをやってから言いなさい」とか、言われたものです。すなわち、私達は小さな頃から人の世の秩序を保つために、「権利」を主張するならちゃんとその前に「義務」を果たしなさい、という教育を受けてきているのです。それが基本ルール。「権利」だけ行使して「義務」を怠ったらルール違反ですよということなんですね。

これが、「責任」と「権限」に置き換わって偉くなって手にすると、なぜか「義務」である「責任」を後回しにして、「権利」である「権限」ばかりを振りかざしたり、しまいには「権限」を行使しながら「責任」を逃れたり・・・。
偉そうに命令しておいて、いざとなると逃げてしまう社長、役員、管理者などは、その類ですよね。大きな間違いを犯しています。

経営者を例にとって言うならば、社員への命令という「権限」を行使したいなら、その前に経営者の「義務」である「職場環境整備」や「福利厚生拡充」や「公平な評価の実現努力」等、社員に対する誠実さの実現をまずしなくてはいけないのです。
社長に「責任」と「権限」を委譲された、役員、部長、課長等の役職者はそれぞれの管理スパンにおいて、同様に部下に対する「誠実さの実現」をしつつ「命令という権限」を行使するべきなのです。
上に立つものが「権限」ばかりを行使して、「責任」を先に考えないとしたらそんなに自分勝手な話はありません。そんな上司の下で働く部下は不幸極まりないでしょう。もしも経営者たる社長がそうだったら・・・。結果は推して知るべし。

「うちはどうして、社員が長続きしないのだろう。いいやつをとっているのだが、やめてしまう者が後を絶たない」
そんな会社は決まって、社長の考えが「権限優先」「責任劣後」です。
今の時代「責任劣後」は、コンプライアンス違反の可能性も高いので、要注意です。NOVAの猿橋前社長はその典型的な例と言えるのではないでしょうか。


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