日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

昭和の深夜放送を思わせる「死ぬかと思った」人気の秘密

2009-11-07 | マーケティング
ブックレビューではないのですが、「死ぬかと思った」という本を見つけて息抜きに読んでいます。

作者は林雄司なる人。全く知りません。「Webやぎの目」なるホームページを主宰している一介のサラリーマンとか…。サラリーマンとは言っても、ネット系大手勤務だそうですが。この本の紹介を裏表紙の記載から引用すると、「余計なコトして死にかけた、恥ずかしさのあまりに死にそう。人には言えない、でも言いたい。ちょっと自慢の死にかけ体験。告白すれば気分も晴れる、ストレートかつ低レベルな臨死体験集」ということです。要は、「子どもの頃に、自分の親と隣のおじさんを間違えてライダー・キックを浴びせて青くなった話」とか「度胸試しに爆竹で犬のうんこを爆破して、周囲皆クソまみれになった話」とか、他人のくだらない体験談を読んで笑って、気分転換するという類のものです。

本屋で見つけて、立ち読みしてその中身になぜか引き寄せられ、その場で笑い出しそうになって「こりゃまずい」と思い、シリーズを3冊まとめ買いして帰ってまいりました。帰ってから調べたところによると、著者が90年代から先のHP上で始めた投稿コーナーが人気を呼んで、2000年に書籍化。現在シリーズ9冊も出ているとか。今年に入ってその1~4が文庫化されたそうで、私が買ったのはまさしくその文庫シリーズでした。基本は読者投稿なわけですが、最近の投稿者の方々なかなか魅せる文章の書き方もうまくて、けっこうはまります。

読み進めていくうちに「似ている」と気がついたのは、糸井重里氏の「言いまつがい」シリーズ。人の笑える言い間違いを氏のHP「ほぼ日刊イトイ新聞」で募集し、それを本にまとめた単行本がヒットを記録しているアレです。「言いまつがい」は糸井氏の知名度もあり、かなりの部数が出ているようですが、こちらの「死ぬかと思った」もシリーズ合計で80万分突破と聞きますから、かなりのロングセラーになっているようです。これら投稿本の人気の秘密を考えてみたのですが、意外なターゲットの広さがあるように思います。私が買ったから言うのではありせんが、この手のモノは若者だけではなく我々の年代をも引き込む力を持っているように思えるのです。理由はなぜか?読んでいただくと分かるのですが、若者はWeb人気からの勢いが購買を後押ししてくれるのでしょうが、我々年代は立ち読みや口コミでどこか“懐かしい匂い”を感じさせられ、若者とは全く違った形で引き込まれていくように思います。

その“懐かしい匂い”とは、ズバリ「深夜放送」のそれ。最近の「深夜放送」はよく存じ上げませんが、我々世代の“昭和の深夜放送”ではこの手の投稿コーナーはあちこちにあって、連日けっこう遅くまではまって聞き翌日眠い目で学校の授業を受けていたのをよく覚えています。特にこれらの書籍に性格が近いのは、TBSラジオ深夜1~3時の「パック・イン・ミュージック」でしょう。木曜日「ナチ=チャコ・パック(野沢那智、白石冬美)」では、テーマ投稿を「お題拝借コーナー」と称してこの手のハガキや封書が毎週読まれていましたし、金曜パック山本コータローの「コータロー・パック」の「恥の上塗りコーナー」はまんま「死ぬかと思った」です。時代は巡るのですね。

そんなマーケティング的ヒントもちょうだいしながら、「死ぬかと思った」シリーズを読み散らかしています。ただ少し気になるのは、“下ネタ”の多さ。昔からこの手の投稿は確かに“下ネタ”に偏りがちな傾向はあると思います。ただWeb上はともかく、出版物に改める際はこの編集どうなのかなと…。その点が少々クドく感じられ、さすがに3冊目ともなるとちょっと辛くなります。糸井氏の「言いまつがい」にも“下ネタ”編はありますが、「大人の言いまつがい」としてコンパクトに別区分けされ、いやらしさもなく実にスマートな扱いで「さすが!」と唸らせられます。このあたりが、プロと素人の境界線なかもしれません。ま、いろいろな意味で勉強になる“息抜き本”との出合いではありました。

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