日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

経営のトリセツ28 ~ サーバント・リーダーシップ

2008-05-09 | 経営
近年成功する経営者には、「サーバント・リーダーシップ」を実践できている人が多いと言われています(「日経ビジネス」GW合併号特集「社長革命」内でも触れられていました)。

サーバント・リーダーシップとは、ロバート・グリーンリーフ氏が提唱した、大きなビジョン実現のために邁進している人たちに対して支援するリーダーのあり方です。部下が会社がめざす使命に向かって邁進しているのであれば、リーダーはサーバント(奉仕する人)となって部下につくすべきであり、「リーダーのために部下がいる」のではなく、「部下のためにリーダーがいる」と考えることです。

このように言うと、まさに「召使のような指揮者」という感じになりますが、実際の企業においては、現場の意見に常に耳を傾け、現場を優先しながら経営ビジョンに向かって企業集団を進ませていく経営者のことなのです。すなわち、経営者と現場が価値観を共有した上で、権限の委譲をはかり現場が仕事をしやすい環境をつくることこそ、経営者の最大のミッションである、ということでもあります。

このような考え方に従うと、企業の組織のピラミッドは全く逆転して、一番下が「社長」その上に「役員」「管理部門(もしくは管理者)」「顧客接点部門(もしくは顧客担当)」「顧客」という逆三角形の組織管理形態ができあがるのです。

サーバント・リーダーシップ経営者の各社で「顧客」が逆ピラミッドの最上位に来ると言うことは、すなわち「顧客最優先主義」を最下位に位置する社長が率先して現場の意見を尊重しながら活動・徹底することに他なりません。サーバント・リーダーシップは、米国では70年代から議論されているモノでありながら、今の時代だからこそ、大変大きな成果を実現してもいるのです。

ちなみに、ロバート・グリーンリーフ氏は、「サーバント・リーダーの条件」として次の10点を挙げています。ご参考まで。
1. 人の言うことがきちんと聞ける
2. 同時に共感できる
3. 困っている人がいたらそれに対して癒すことができる
4. 気づきに訴えることができる
5. 何か大きな使命や目標を訴える説得力を持つ
6. そのために自分の夢がきちんと概念化できている
7. 先見の明がある
8. 執事としての役割ができる
9. 尽くすということを通じて、人々の成長にかかわる役割を持つ
10. コミュニティを作る

日本の大手企業でサーバント・リーダーの一番有名な例は、「資生堂」前社長の池田守男氏。氏は自身の企業経営の論理として、一般的に逆ピラミッドの最上位である「顧客」のさらに上に、「社会」というものを置いて「社会奉仕」こそが「社会の中で生かされている社会の公器としての企業」を明確に位置づけてもいました。この考え方は、神学校出身の池田氏ならではの発想とも言えますが、急速に求められつつあるCSR経営を実現する考え方にもつながるものでもあるのです。

ちなみにサーバント・リーダーシップには、「グリーンリーフ・センター」なるサーバント・リーダーシップの原則や具体例を多くの人々に理解を広めることを目的とした団体が存在し、日本はじめ世界10カ国に組織を持って活動し多くの学識者および経営者から支持される経営思想でもあります。

経営者の方々にはぜひ一度HPをご覧いただき、今注目のサーバント・リーダーシップの何たるかをご理解いただき、ご自身の経営思想構築の一助としていただければと思います。

HPは、http://www.gc-j.com/index.html
です。


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1 コメント

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マルテンサイト千年 (グローバルサムライ)
2024-07-22 16:46:41
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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