日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

UCCコーヒーのキャンペーン告知“大炎上”にみる、恐るべきTwitterの威力

2010-02-09 | マーケティング
UCC上島珈琲が5日、コーヒーにちなんだエッセイや画像などの作品を募集する販促企画のPRを今話題のTwitter(ツイッター)を使った形でキャンペーンを実施し、一時“大炎上”するという「事件」が発生しました。UCCのTwitterキャンペーンは、ユーザーが投稿したキーワードに反応しBOTアカウントが自動でメッセージを返信するというもの。作成したBOTアカウントは11個。「コーヒー」「懸賞」「UCC」「小説」など約30のキーワードを各アカウントに振り分け、それぞれのキーワードに反応してメッセージを返信する仕組にしたと言います。

同日午前10時キャンペーン・スタートと同時にユーザーがつぶやいたキーワードに反応し、「コーヒーにまつわるエッセイとアートを募集中!エッセイで賞金200万円!アートで賞金100万円!締切間近!!」というメッセージを自動で送信。全11のアカウントからを送ったところ、Twitterユーザーがフォローしていないアカウントからプロモーション的なメッセージが送られてくる上アカウントが複数同時稼働したため、「UCCを偽装したアカウントによるスパムBOTではないか」と不審がる「つぶやき」が多数投稿され、ユーザーの間で一時大騒ぎになる展開になってしまったのです。

これに同社のネット関連統括部門が気が付き、開始から2時間弱であわてて全アカウントを停止という事態に陥ったのでした。このまま放っておけば大変な企業イメージダウンにもなりかねない事態であり、なんとも怖い話でした。この「事件」が起きた最大の原因は、UCCがTwitterに対する正しい理解をしないままPRメディアとして利用したことにあります。すなわち、Twitterというユーザーの「つぶやき」を聞きながらコミュニケートする至極人間的なソーシャル・メディアのツールをマスマーケティングの手法で利用したことに、大きな過ちがあった訳です。機械的なBOTを使ったのは、ソーシャル・メディアに対しプッシュ型のマスマーケティング手法で臨むというご法度に他ならないのです。

さらにUCCは、キーワード設定でも致命的なミスを犯しています。「コーヒー」「懸賞」「UCC」「小説」などの用語はあまりに一般的な言葉であり、これらの言葉をつぶやいた人(メッセージが送られた人)の大半がUCCコーヒーの事を思い浮かべていなかったということに加えて、その送られたメッセージが人肌の体温を感じさる「つぶやき」ではなく、完全なPR文言であったことがそれです。これで完全に、「スパムBOT?」と誤解を受けることになってしまったのです。次々現れる新しいメディアは新たなPRのチャンスでもあるものの、しっかり理解をしていないと今回のような思わぬ落とし穴が待っているという恐ろしい結果とも背中合わせであることを、この「事件」は教訓として教えてくれました。

そんなわけで、小職も大変興味津津なTwitterなのですが、現在はまだまだ勉強中です。昨年初めてTwitterのことを聞いた時に「これは使える!ビジネスにも活用出来る」とピン来てその勢いで早速Twitterデビューをしてみたのですが、なんか良く分からないフォローの動きに「これはちゃんと理解してやらないと危ない」と直感的に察知しTwitterデビューを一度取り下げました。その時の直感が囁いたモノがこうしてUCCの失敗利用として現実のモノとなった訳で、我ながら危機管理能力(というより野生の勘?)は大したものであると思った次第です(笑)。

この件ではUCCは当日午後にネット上で謝罪文を掲載しただけでなく、今日9日には謝罪会見まで開いています。ちょっとした利用ミスで、ここまで1企業を動かすというTwitterの力たるや恐ろしくも大したものです。やはり改めてバカにできない新たなメディアであると再認識させられた次第です。Twitter侮るべからず、ですね。昨年は“Twitter元年”でしたが、2年度目の今年、Twitterはどんな展開を見せビジネスユースの可能性を広げてくれるのか、当分目が離せない存在であることは間違いのないところです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿