日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

キリン=サントリー“統合破談”の「やっぱり」

2010-02-08 | ニュース雑感
経営統合に向けて準備を進めていたキリンとサントリーが、統合交渉を打ち切ったと発表しました。いゃー思ったとおりの展開でしたね。昨年7月の統合報道時にも当ブログでこの問題を上げましたが、私は当時あまりに早い段階でのマスコミ報道に「これは“つぶし”に違いない」と書いています。いずれにしても、M&Aは超トップ・シークレットで進めるべき案件であり、詳細がある程度詰まる前に報道に情報が流れれば大抵は横ヤリが入ってダメになるのです。

財閥系で典型的官僚的組織管理のキリンと、同族経営で昔から山口瞳や開高健を輩出した自由な社風の“大いなる中小企業”サントリーでは、言ってみれば同じリカー産業でも“水と油”ですから。“破談”理由はキリン、サントリーそれぞれが異なる見解を述べており、真偽のほどは定かではありませんが、官僚体質のガチガチ管理のキリンから見れば破談理由は「新会社が上場企業として経営の独立性や透明性を保てるかどうか」(加藤社長)とのことで、簡単に言えば「中小企業体質のサントリーさんとは、ガバナンスの点で埋まらない溝がある」と言っているようなものです。

サントリー、髭の佐治社長はキリンの言い分をまんま認めるのは「プライドが許さん!」と思われたのか、キリン側が破談理由として明確に否定した「統合比率」の問題を徹頭徹尾破談理由であると力説する会見だったようです。中小企業応援団の私の個人的見解ですが、サントリーとすればガバナンスの違いは全く恥ずかしい事ではなくて、サントリーがコンプライアンス違反企業であると言われている訳ではないのですから、「うちは中小企業体質なんで、官僚的組織管理のキリンさんとは合いませんでしたわ。ワッハッハッハッー!」と笑い飛ばしてもらいたかったぐらいでした。サントリーと言えば、中小企業オーナー社長“憧れの星”ですからね。合う訳ないですよ。三菱財閥のエリートとナニワの“叩き上げ”では。

報道されずに水面下で統合交渉を続けていたなら、何事もなくお互いにイメージダウンもなく済んだところですが、あまりに早い段階での情報流失が両社によけいな“汚点”を残してしまった訳です。そうやって考えると、やはりなぜそんな早い段階に極秘NEWSが漏れたのか、いまだに不可解です。私の推理では、昨年7月に日経記者に情報リークしたのは恐らく統合交渉に反対のキリン・サイドのお偉いさんか、ご意見番的同社大物OBかではないかと思っています。官僚体質のエリート意識が、中小企業との統合を嫌がるのは当然。貴族の息子が商人の娘をいきなり「嫁にしたい」と連れてきた体ですから。昨年の統合検討初動のあの段階で情報が外に漏れるというのは、よほどの強い反対勢力があったと考えられる訳で、その時点で破談にすべき縁談だったのかもしれません。

いずれにしましても、合併、統合に一番大切なことは企業風土の一致、不一致に他ならないということです。グローバル戦略での規模の利益を追求するあまり、キリン、サントリーの両社トップは、統合検討時にもっとも重要でもっとも“足元”にあるハズのこのポイントを忘れていたことがすべての「誤算」の原因だったように思います。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿