日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

売れ筋ブックレビュー~「チームリーダーに必要なたった1つの力/野口吉昭」

2010-03-11 | ブックレビュー
★「チームリーダーに必要なたった1つの力/野口吉昭(かんき出版1400円)」

野口吉昭氏の書き下ろし新作です。今回のテーマはなんじゃろかと読んでビックリ!ずばり「ビジョン」の重要性でした。なぜ、ビックリかというと、長引く不況下においてあれこれ活性化策に悩む中小企業の皆様のお手伝いをさせていただいていて、私の周囲でもあえて今「ビジョンづくり」に再着手し好況時からひきづる“ぬるま湯体質”打開策につなげましょうという提案に共感を得られるケースが急増しているからです。やはり“現場ありき”のわが敬愛するコンサルタント野口氏も、「今こそビジョンが大切」と同じ思いでおられたかと思うと、ちょっとうれしいですね。

氏は本書の中で、「チームリーダーは『目標』よりも『ビジョン』を語れ」と説いています。「夢」を具体化したものが「ビジョン」であり、「ビジョン」をブレイクダウンしたものが「目標」であります。氏はチームリーダーは常に「夢」を持ち、その「夢」を具体的にスタッフに意識させられる“大きな目標”としての「ビジョン」をことあるごとに語りかけよと言っているのです。そしてそのために重要なこととしては、自分の利益や成功に固執した「ビジョン」は意味がないと。そのために必要なことは「相手の立場に立つこと」であると力強く語りかけています。

このくだりは、まさしく本書の肝部分であるので少し引用します。
「自分を持ち相手の立場に立てる人は尊敬されます。その人はきっと仕事ができる人にちがいありません。相手の立場に立てない人はたとえ仕事ができても、決して人からは尊敬されません。相手の立場に立てるということは、場を読める人であり、仕事への想いと志がある人といえるでしょう。人間力の基本は“相手の立場に立てる”ということと言えます。例えば高学歴、高偏差値大学卒の官僚の最大の欠点は、相手の立場に立って考えることができないということです。権力は相手の立場に立って考える習慣を減退させていしまいます。それが現在の官僚主義の腐敗の原因と言えるでしょう」

なるほど、企業におけるチームリーダーが官僚的になったらチームリーダーとしては終わりであると言っている訳で、民間の常識とはかけ離れた官僚文化の非常識を常々力説している小職としましては、拍手喝采もの。まさに、溜飲が下がる思いです。その意味では、官僚のチームリーダーたる“キャリア組”にもぜひ読んでいただきたい1冊ですね。まぁ、収益意識はなく、自己の利益にかかわる組織既得権堅持以外の目的では組織意識もなく、“事務次官レース”という自身の出世にかかわること以外にはおよそ興味のない彼らには無用の知識ではあるのでしょうが…。彼らがこの手の話に少しでも理解を示すなら、もう少し日本の官業もよくなると思うのですけどね。

本書でいうチームリーダーとは、中小企業であるなら社長が該当するわけで、その意味では中小企業経営者にもバッチリはまる1冊です。10点満点で8点。惜しむらくは、「ビジョン」の話にはじまって、途中から「点→線→面」的モノの見方やロードマップづくりの話など得意の“野口理論”に展開し、「たった1つの力」という割にはいろいろなことを言っている点、さらに終盤には「ノー・グチ運動」「ホメホメ運動」等の言葉が登場し「すごい上司」をはじめとした「すごい…」シリーズの白潟敏朗氏的な軽めの職場管理手法に話はおよび、焦点がボケ気味になる点がややマイナスです。繰り返しますが、「官僚の最大の欠点は、相手の立場に立って考えることができないということ、それが官僚主義の腐敗の原因と言える」のくだりはこの上なく明快な論理展開で、何度読んでも気分がいいです。この部分だけなら10点満点!ぜひお手にとって読んでみてください。

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