日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ブックレビュー~売れ筋2冊比較 その2

2010-12-14 | ブックレビュー
最近の売れ筋本レビューその2です。昨日の書籍との対比で評価したい1冊を。

★「一瞬で恐怖を消す技術/マイケル・ボルダック(フォレスト出版1400円)」

ジャンルは昨日と同じ「成功本」の類です(同じ出版社ですから、同じようなコンセプトで出されているように思います)。昨日の本「怒らない技術」が人が持つもっとも激しい感情の「怒り」をコントロールすることで成功につなげようとするのに対して、こちらは「落胆」や「落胆の可能性」に起因する「恐怖」を取り除くことで成功につなげようとするノウハウ供与を目的としています。こちらはコーチーングのプロが、コーチング理論に基づいて解決策を読者に提供する形をとっており、昨日とは一転、「なるほど」とうならせる内容であると思いました。ちなみに著者は、7歳の時に、実の父が母を殺すという衝撃的な事件を体験しその精神的ダメージ(吃音、対人恐怖等)の克服という、人並み以上の自己変革を自らが実践した上でコーチングの技術を習得し他の悩める人たちの役に立てているという“本物”のプロなのです。

本書では、まずはじめに「落胆」や「落胆の可能性」に起因する「恐怖」は「拒絶への恐怖」である(言い換えると、コミュニケーション相手からの自己否定に対する恐怖である)と位置付けて、次にこの「拒絶」をいかに怖くないモノであるかを説き逆にそれを自分に役立ててしまうレベルに持ち上げようという「拒絶の利用」の領域へのステップアップ法を供与してくれます。「拒絶」は怖くないという例として、ケンタッキー・フライドチキンのカーネル・サンダース氏は、独自のチキン調理法の売り込みを1009回断られ、俳優のシルベスター・スターローン氏は「ロッキー」の脚本と自分を主役にした映画の売り込みをやはり1000回以上断られたものの、あきらめずに立ち向かうことで、成功を手に入れたという例をひいています。「拒絶」は成功の前提条件であると。そして「拒絶」に対する恐怖を克服する方法をとして、「精神状態をピークに持っていく」、そのために「感謝していることを10項目考える」なぜなら「感謝と恐怖は両立しない」から、さらにそれはなぜなら「恐怖とは自分が望んでいないモノを思い浮かべること」だから…、といった具合に実にロジカルにツリーを描くがごとく読み手にノウハウの供与をしてくれています。実に素晴らしい。

昨日の「怒らない技術」のような成功者が現在のポジションから振り返り的に記す著作にも真実はちりばめられてはいるものの、やはりその道のプロ(この場合はコーチングの専門家)が論理的に展開する啓発本は、中身の濃さが違うと実感させられます(本書にも「腹立ち防止策」が出てきますので、その部分の比較するとよくわかると思います)。もちろん、読み手が中身を信頼して行動を起こすか否かが最も大切なポイントであり、どんなに素晴らしい啓発本も読み手の行動を伴わないなら結果は同じことではあるのですが…。この本はこの手の精神的啓発本としては久々に、読む価値のある内容であると思いました。部分部分で英語的思考回路に準拠した読み手にスッと入ってこない言い回しが気になる点はあるものの(英語がネイティブ的に流暢すぎる訳者にありがち)、自分が実際に受けた「拒絶」を思い浮かべつつ変革行動を伴わせることができる読み手に方にはきっと強い味方になるものと思います。
10点満点で限りなく9点に近い8点。

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