日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「成功軸の作り方/野口吉昭」

2010-06-28 | ブックレビュー
★「成功軸の作り方/野口吉昭(青春出版社1333円)」

そろそろかなと思っていましたら案の定、野口吉昭氏の最新刊が書店に並んでおりました。このところの氏の著作は、コンサルタントの基本的スキルをベースにした“野口理論”に立脚して、本質を捉える考え方のコツや仕事に対するあるべきスタンスを教えるモノが続いていましたが、今回はさらに一歩踏み込んで「生き方」にまで言及するような著作となっております。出版元のカラーも含めて悩める若手向けかなと思われたりもするのですが、言っていることはこのタイトルの通り常に一本筋の通った“野口理論”で展開されており簡潔・明快な流れとなっております。

本書内での私が思うポイントは、「問題意識、危機意識、当事者意識」にはじまって「描いてこそビジョン」「習慣を仕組む」「愚直に続ける」…。なるほど、過去に氏がその著作で述べてきたことを、今度は“一歩踏み出せずにいるビジネス・パーソン”向けに再編集し、その打開ノウハウを「成功軸」という名のもとに伝授しているといった様相です。非常に平易で分かり易く、過去のどの著作よりも手っとり早く理解することができるかもしれません。野口氏と氏のカンパニーであるHRインスティテュートによる「戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ(99年PHP研究所)」をはじめとした数々の名著のエッセンスを、個人実践編的に平易に解き明かしているという感じが強く印象付けられます。

ということは…。読んでいて気がついたのですが、実はこの本は若手ビジネス・パーソンに向けられた自己啓発本の様式をとりながら、“なかなか一皮むけない企業”の経営者にもその組織運営改革上役に立つ基本の考え方を伝授しているとも言えるのです。そうです、今までの氏の著作のエッセンスを集めてより平易に個人向けに書かれた本なのですから、これを今度は逆に組織運営に置き換えて活用することができるのです。過去の企業向け著作が、やや高度な内容でかつ実践的というよりはやや理論優先との印象から“野口理論”を現場に活かし切れていなかった経営者にも、この個人向けの平易な書き様なら容易に実践応用が可能なのではないかと思うのです。

本書のテーマである「成功軸」とは、まさに「経営ビジョン」そのものであり、本書はいかにして「ビジョン」を確立しそれを実現につなげるかを、個人に置き換えることで分かり易く説明をしてくれている訳です。「成功軸」づくりにつなげるいくつかの具体的なツールも盛り込まれていますから、それを自社の経営改善向けにアレンジすればかなり有効な使い方ができるのではないかと思います。まず本書で“野口理論”の入口を知り、詳細は企業向け著作でフォローする、そんなやり方がよいのかもしれません。単なる自己啓発本としてではなく、経営に応用可能な改善指南書として経営者、管理者の皆さんにもおススメできる1冊であると思います。そんな意味まで含め10点満点で8点。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿