日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ブックレビュー~「事業戦略3.0/野口吉昭編・HRインスティテュート著)」

2011-08-09 | ブックレビュー
★「事業戦略3.0/野口吉昭編・HRインスティテュート著)」(かんき出版1800円)

3.11以降の日本企業の進むべき道を示唆した新刊本の登場です。ビジネスを生態系として捉え(業種別とか産業分類別といった従来の枠組みを超えた、複数の産業の境界線が融合し協業・競争の結果、共生し合う関係を築き上げるという考え方)、利益追求の事業戦略1.0、利便性提供の事業戦略2.0を超えたところに存在する「見えない価値」を追求する新たな事業戦略3.0を提唱する、斬新でかつ発展的な主張を繰り広げる新たな経営指南本です。

東日本大震災後の我が国の事業テーマ「復興」を、自社の経営戦略やビジネスモデルにいかに組み込んでいくべきかという問題は、企業の大小を問わず今の経営者たちの共通の課題でもあります。特に震災を機に発祥国イギリスとは別の形で形成されつつあるエシカルの精神のビジネスへの浸透は、まさしくこの流れを受けたものであると言っていいでしょう。そんな新たな経営のかじ取りに、理論的な裏付けをもってヒントを提供するのが本書であるのです。

著者は「見えない価値」の実現に向けて企業ミッションとして「ぶれない軸」を作り上げ持ち続けて進みことの重要性を説いています。その典型的な実例として、「母親が自分の命よりも大切にする赤ちゃんに安全なタオルを届けたい」を理念とし、徹底して理念に沿った製品製造(例えば100%風力発電利用等)ををおこない“生きざまを賭けて”、同社製品のファンを増やし続けている優良企業「池内タオル」の例なども紹介しています。

本書は3.11以降、世の経営者たちが漠然と感じ始めているもののその姿をおぼろにしか捉えきれていないパラダイム・シフトの流れを、はじめて言葉にして提示したいわば“気づきの書”であります。昨今、行く先々でエシカル関連の話を聞くことが増えてきた今だからこそ、規模の大小に関わらず企業経営者はぜひとも読んでおきたい一冊です。「見えない価値」ビジネスの具体例はたくさん登場するものの、まだまだ進化するであろう事業戦略3.0のこの先の展開までは読み切れない分その部分では抽象的イメージの提示にとどまらざるを得ないもどかしさもありますが、この時期にこれだけの中身をもって日本企業の新たな事業戦略のあり方を示したことに敬意を表して9点。

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2 コメント

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随分偉くなられたんですね (さすらい日乗)
2011-08-10 23:03:49
野口吉昭さんには、まだ彼がODS(オーバーシーズ・データー・サービス)にいて、主に民間企業のCIをやっていたときに仕事を委託したことがあります。「パシフィコ横浜」のネーミングです。
パシフィコ横浜の正式名称は(株)横浜国際平和会議場で、その英文名、略称、マークの開発を委託したのです。
結局は、彼らが千以上提案してきたものに対し、私がパシフィック・コンベンション・センター、PCCというのを考え、それを彼が、パシフィック・コンベンション・プラザ・ヨコハマに替え、略して「パシフィコ横浜」としました。
彼は、本来技術屋ですが、随分話が上手い、説得力のある人間だなと思いました。

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野口さん (OZ)
2011-08-11 11:09:32
さすらい日乗さん、貴重なお話ありがとうございます。

パシフィコはちょうど私が神奈川新聞さんにお世話になっていた頃まさに計画が進行していて、横浜コンベンション・ビューローにもたびたび足を運んでその構想を詳しくうかがったのを思い出します。

まだ「パシフィコ」の名前はなかったと思いますが、コンベンション・シティづくりの中核施設として明日の街づくりの“期待の星”との印象を強くしたのを覚えています。

野口さんがかかわっていたのですか。それは知りませんでした。野口さんは元々建築家ですから、建物や施設に対するイメージづくりには、ものすごく思い入れがおありだったのではないでしょうか。

今また野口さんは、横浜でラジオのパーソナリティもされています。横浜とは何か不思議な縁があるのかもしれませんね。
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