-畑沢通信-

 尾花沢市「畑沢」地区について、情報の発信と収集を行います。思い出話、現況、自然、歴史、行事、今後の希望等々です。

峠の石仏「湯殿山」調査が一歩前進しました。(その2)

2023-01-09 20:29:37 | 歴史

 背中炙り峠(古道)の石仏湯殿山「湯殿山」は、嘉永五年に建立され、同じ年に同じ長源霊苗なる僧が揮毫した湯殿山がありました。そのことについては、(その1)で紹介したとおりですが、もう少し詳しく言うとは河北町谷地の松橋と寒河江市高松に背中炙り峠の湯殿山と同じ年に同じ人による揮毫の湯殿山がありました。このことは過日、紹介した長井市の方からの情報です。

 そのうち松橋地区については、(その1)で石仏そのものをお見せし畑沢との関係があるかのような勿体ぶった書きかたを最後の方に加えています。その勿体ぶったこととは、下の写真にある若宮八幡神社の看板の説明書きにある単語から気付きいたことです。

 左から8行目の「荒町村」です。これは私が大分前に「尾花沢市史の研究(編 横山昭男)」に次の文章の中で見た地名でした。

領域の変化は政治的に大きな問題であった。領域削減についてこれより先、文政十一年に次のような一件がある。

 それは尾花沢附四十八ヶ村の村々名主連判で、一〇年前に尾花沢陣屋附から柴橋代官領に移管された三ヶ村松橋村、荒町村、工藤小路村の奪還要求を尾花沢代官竹垣庄蔵に行った事件である。この嘆願書に

「前畧、私共郡中村高相減シ素より辺鄙困窮の土地柄ニ而郡中村々之儀定例仕来り候而村用其外共壱村限り相弁し候儀は格別郡中一統エ相拘り候儀は諸色入用共則郡中ニ而割合取斗来候間村々引請割合入用高自然与相嵩ニ次第ニ罷成必至与難儀仕候間依之村々一統評議之上得与勘弁仕候 後畧」

 とあり、その理由は、三村の削減によって郡中村々の諸費用徴収率が嵩むということにつきるが、加えて「辺鄙困窮之土地柄」で、「金銀融通相更ニ無之」土地条件を全文でも明らかにしている。この三村の経済事情はくわしく分からぬが、谷地周辺の平野部の村々であるから「稲作一毛ニ而御年貢上納高役諸夫銭等相勤」る尾花沢領の村々にとって三村の確保のためには必至であった。漸く天保六年この一件は工藤小路、松橋村二ヶ村の返還によって落着している。

 当時、この文中の三ヶ村が現在のどこにあるかを調べて次のような結論を出し、拙著「畑沢を再発見」に載せていました。

  • 松橋村 (現在の船形町内)
  • 荒町村 (畑沢の隣の荒町は延沢村に含まれるはずなので、どこの荒町かが分からない。)
  • 工藤小路 (現在の河北町内)

 今、思えば、実に拙い調査でした。当たっていたのは工藤小路村だけで、実際は三ヶ村の総てが現在の河北町谷地にあります。約五年ぶりに間違いを訂正できます。何故、谷地地内にある村々が遠く離れた尾花沢領に属していたかを知りたいところですがそのことは分からないまでも、少なくとも谷地の三ヶ村が、背中炙り峠がある畑沢とは同じ尾花沢領に属していたことが分かりました。谷地の松橋村と工藤小路村は、その後も明治維新まで尾花沢領だったようです。この両地区は畑沢などと深い関係にあったことになります。

 そして、この三ヶ村領域奪還の代表者が豊島他人太であり、背中炙り峠の通行の願いと湯殿山建立を主導していたのも豊島他人太です。ただ、年月にはかなりの開きがあります。代官所の所領替えと背中炙り峠の通行の問題が重なっていた時代です。長源霊苗が揮毫した「湯殿山」には並々ならぬ強い気持ちが込められているようです。

谷地三ヶ村が尾花沢代官所領から寒河江代官所領へ移管 1816年

  〃  を戻すよう尾花沢附四十八村が要望書提出  1818年

背中炙り峠の荷物通行差止めの尾花沢宿等の訴え通る  1832年

松橋村と工藤小路村が尾花沢領に戻る         1835年

背中炙り峠などに湯殿山など建立           1852年

  〃   通行を認める様返答書          1853年

  〃   通行の一部が認められる          〃 ころ

 

 それでは寒河江市高松の湯殿山は、どのような関係になるのでしょう。高松の湯殿山は、同地区内の工藤某家の屋敷の中にあります。この地区には大きな屋敷を構えた何軒もの「工藤家」があり、大いに栄えたと思われます。さて、谷地の「工藤小路村」の「工藤」と高松の工藤家の関係がありそうですが、解明できませんでした。一応、河北町史と寒河江市史を拝見したのですが、手掛かりを見つけることはできませんでした。調査を継続とします。


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