-畑沢通信-

 尾花沢市「畑沢」地区について、情報の発信と収集を行います。思い出話、現況、自然、歴史、行事、今後の希望等々です。

令和4年初めての背炙り峠路

2022-06-08 18:01:28 | 近況報告

 昨年の初冬から閉鎖されていた背中炙り峠が、令和4年5月31日の11時に解除されるということが、山形県のホームページに掲載されていました。それに合わせて畑沢へ行こうとしていたのですが、日程の都合がつかず翌日の6月1日に行きました。それでも往路は都合により尾花沢方面へ行かざるをえず、峠越えは復路になりました。

 今年も昨年度に続いて新型コロナに必要な予算確保のために、村山市側の工事はお預けとなったのでしょう。お陰でこの時期に峠を通ることができます。つまり冬季閉鎖だけが解除された結果です。それにしてもいつものようにこの道は「冬期間」が長いようです。同じく冬季閉鎖されていた五十沢からの「比丘尼新峠(私が勝手につけた名称)」は4月中に開通しています。こちらも除雪車は使っていません。それでも背炙り峠よりも一月以上も早い開通です。

 さて、畑沢での作業を終えて峠に向かう、閉鎖中の道路管理行為が見えました。谷側の路肩が侵食されるのを防ぐために、路肩法面をブルーシートで覆い、路肩に土嚢を並べて雨水が法面に流れるのを遮断しています。このような山地では、谷側の路肩と法面に改変を加えることは最小限に抑えなければなりません。「掘り起こして、再び埋め戻す」ことはタブーです。盛土して道幅を拡大したり、ガードレールを埋め込むために一旦、路肩を崩して再びこの程度のコンクリートアンカーを埋め戻しても、法面の土砂は侵食されやすくなりますし、コンクリートアンカーはその役を果たしません。ガードレールの代わりにガードケーブルを使うことも検討すべきですし、積雪による破損を防ぐためにも、冬季に取り外せる形式もあるはずです。その場その場に合わせた工事を行うことが大事です。技術者は研究者であるはずです。だから私は技術者が好きなのです。

 

 今回の峠路では「もしや」と期待することがありました。今年の5月はなかなか雨が降らず、まとまった雨が降ったのは、5月27日になってからでした。そのためにいつもならば5月に咲いていた花も今年は遅くなって、この日に咲いているのではないかということです。右側の法面を注意しながら探していると、ありました。ユウレイソウ(幽霊草)です。正式にはギンリョウソウ(銀竜草)だそうです。植物体全体が白い姿は、「幽霊」そのものです。

 本物の幽霊は見たことがありませんが、昭和30年代に畑沢で「御神楽」一行が演じた芝居の中で幽霊が出てきました。上畑沢の旧家の座敷が舞台です。照明が薄暗くなり笛と小太鼓で怪しい曲が奏でられると、白粉(おしろい)で顔を真っ白にした幽霊が出てきました。その白い顔が幽霊草とそっくりです。怖かったです。

 

 先の草が幽霊なら今度は「鬼」です。茎や葉柄に鋭い棘が出ています。昔は見なかったような気がします。一旦、刈払われた土地に好んで生えてきます。背丈が高くなって行く手を妨げます。無理に横切ろうとすると、ズボンの布地の上から老人の衰えた肌を痛めつけて傷だらけにし、脛は血まみれになります。大げさとお思いでしょうが、実際に私は大平山へ登った9年前のことです。その下山が遅くなって暗くなり急いでいて、この植物に注意を払っている余裕がありませんでした。帰宅して無残な脛を見て絶句しました。

 ところで、この植物は何でしょう。名前は見当がつきません。外来種だと思うのですが、どうでしょうか。一昨年までは、ここに綺麗なミソハギ(禊萩)がありました。今は一株も残っていません。「禊」が「鬼」に変わっていました。

 

 峠に着きましたが、残念、まだ夕焼けが見える時間帯ではありません。余裕があるならここで2時間ぐらい待ってもいいのですが、最近は山形でも忙しい日が続いています。待たずに通り過ぎるしかありません。朝日山系も葉山も見えません。見えたのは岩神山だけです。

 

 そのまま下ろうとしましたが、少し離れたガードレールがグニャリと曲がっています。「片側通行」の立て看板もあります。このまま通り過ぎることができなくなりました。

 

 近づくと全貌が見えてきました。谷側の路肩がボロホロです。路肩のコンクリート路面も沢山の亀裂が入って崩れやすくなっています。それで谷側の路肩の上に車が乗らないようにと「片側通行」にしているのです。

 

 しかし、ここは以前から片側通行状態でした。今回のこのような事態が生じる前からです。元々、道幅が狭いばかりでなく、下の写真のように山側の路肩に1mもある素掘りの側溝が掘られていて、危険極まりない状況が続いています。こんな所で車がすれ違える訳がありません。畑沢のある方がこの素掘り側溝に落ちたそうです。ここはずっと以前から「片側通行」の立て看板が必要だったのです。素掘り側溝では、大量に雨や雪融け水の時は、ここから土中に水が浸み込んで谷側の法面を弱体化させます。まして、ガードレール設置で谷側の路肩の土は軟弱になっています。私が最も早く工事をしてほしい場所です。こんな山の中ではU字側溝は意味がありません。いくら大きなU字側溝でもこの下流で水を処理することは困難です。速やかに谷側へ処理する方法を取るべきでした。L字側溝ならば土を改変する程度を少なくできますし、何よりも通行できる道幅をより広く確保できます。工事量が少ないと自動車通行への障害も少なくできますので、閉鎖する必要もありません。ここは工事用自動車の停車場をここかしこにかなり多く確保できます。

 市街地の工法は山地に適していません。山地には山地に適した工法があります。蔵王、吾妻、鳥海と山形県内には参考にできる道路が沢山あります。工種が異なりますが、その基本的な水処理の考え方は林道工事が参考になるはずです。それぞれで培われた技術があります。素直に首(こうべ)を垂れて教えを請うべきです。

 

 素掘り側溝のある路面には、亀裂が入っています。今年になってからの亀裂ではありません。Google EarthのStreet Viewでも確認できます。Street Viewのデータは少し前のものです。亀裂は以前から素掘り側溝の反対側の路肩(谷側)が谷方向へ下がっているための現象でしょう。ここは急斜面です。法面崩壊を十分に注意する必要があります。

 

 毎年、私は初めて背炙り峠を通る時、この湧水を掃除するのですが、今年は既に綺麗に掃除されていました。毎年、秋に枯れ葉が水面を厚く覆い隠してしまい、誰かが掃除しなければ春になってもそのままでした。今年は道路の管理作業の途中で掃除して下さったか、通行者が掃除して下さったか、想像するのも嬉しいものです。ありがとうございます。


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