温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

塩原 古町温泉 民宿本陣

2013年11月11日 | 栃木県
 
塩原温泉で湯めぐりをする場合、関東圏で生活している私はえてして日帰りで済ませてしまうのですが、先日は古町温泉の「民宿本陣」で一泊し、現地でゆっくり過ごすことにしました。国道400号に沿った源三窟の手前に立地しており、ここにはかつて真田家の別邸があったそうです。こちらのお宿は民宿を名乗っていますが、たしかに規模こそ民宿かもしれませんが、あらゆる面で本格的な旅館レベルに匹敵しており、結果的に高い満足度が得られました。ではどんなお宿なのか、具体的に見ていきましょう。まずはお部屋とお食事から。


●客室・食事

玄関に入ると大女将がとても丁重に対応して下さいました。現代人と昔の方とは、良し悪しの両面であらゆる相違点が見られますが、明らかに現代人が身につけていない点としては、伝統的な日本に息づいていたはずの丁寧なお辞儀かと思います。大女将から学ぶ所はとても大きく、所作の一つ一つが深く印象に残りました。

今回通された客室はお風呂から近い「梅の間」でして、贅沢にも10畳の和室を独り占めです。お部屋には既にふかふかの布団が敷かれており、すぐにでもゴロンと横になることができました。建物はそれなりに経年しているのでしょうけど、それを全く感じさせないほど丁寧にメンテナンスされており、お部屋の中も隅々まできちっと清掃されていて、文句につけようがありません。トイレや洗面台は共用であり、備え付けの冷蔵庫もありませんが、テレビやエアコン・ヒーターは完備されており、快適に過ごすことができました。


 
18時から別室にて夕食をいただきます。卓上に用意されていた前菜はホタテ・サワラ・長芋揚げ・鴨肉、きのこの和物、そしてお刺身(サーモン・ホタテ・甘エビ)です。私が座布団の上に落ち着くと、できたてのトマトソースのグラタンが、そして一呼吸おいてから天ぷらが届けられました。


 
鮎の塩焼きや豚肉のソテーもアツアツのできたてが提供されます。今回の宿泊に際して、私はお宿のHPから予約したのですが、この方法で予約をしますとワンドリンクサービスを受けることができるので、ここでは肉料理に合わせるべく赤ワインをチョイスしました。
どの料理も家庭的な献立ながら上品な味付けで、美味しさにつられてついついごはんのお櫃を空にしてしまったほどでした。



こちらは朝食。シャケ・豆腐・納豆・海苔という、典型的な日本旅館の朝食メニューの他にオムレツやウインナーなども添えられており、和洋折衷といった内容です。朝からたっぷりいただいて一日のパワーを養いました。


 
さて、肝心のお風呂へと参りましょう。
浴室は2室あり、一応男女別となっていますが、入口に札をさげて貸切利用ができちゃいます。この晩の宿泊客は私一人だけでしたので、心置きなく両方を利用させてもらいました。まずは自分の性別に従って男湯から。


●男湯
 
2つある浴室のうち右手が男湯です。民宿にしては脱衣室がそこそこ広く、明るくて清潔です。棚の上には古い扇風機が置かれており、湯上がりはこれを回してクールダウンしました。
浴室も構成こそシンプルで浴槽一つにカランが2つあるばかりですが、隅々まで徹底して清掃が行き届いており、文句のつけようがないほど綺麗で清潔です。築後10年近く経っているようですが、そんな経年を全く感じさせません。今回私は宿泊で利用したわけですが、こちらは300円で日帰り入浴することもできるわけで、わずか100円玉3枚でこんなに綺麗なお風呂に入れるとは本当に驚きです。入念なメンテナンスに敬服するばかりです。

上述のように洗い場にはカランが2基設置されており、うち1つはシャワー付きで、お湯のコックを開けると源泉が出てきます。



浴槽は3人サイズのポリバスなのですが、単なるポリバスと侮るなかれ、長年による温泉成分の付着によるものか、元々のバスタブの色はグレーだったと想像されるのですが、まるで鍍金加工を施したかのように、FRPとは思えない独特の光沢を放っており、特にお湯が常時触れている浴槽内部はすっかり赤銅色に染まっていました。浴槽の隅っこには鍾乳石のような軽石が置かれ、そこから常時源泉が投入されて、絶えること無くバスタブからオーバーフローしていました。そして、湯船に私が入ると、サバーっと豪快に音を立てながら勢い良くお湯が溢れ出ていきました。


●女湯
 
続いてお隣の女湯にも入ってみました。入室前にちゃんと「貸切り入浴中」の札をぶら下げておきます。


 
こちらの浴室は、室内空間も浴槽も一回り小さなものですが、洗い場にはお隣同様にカランが2基あって、うち1基がシャワー付きとなっており、源泉のお湯が出ることは共通です。


 
こちらの浴槽はクリーム色のポリバスで、やはり温泉成分の付着によって薄っすら紅をさしたように染まっていました。この槽の色ゆえか、お湯の中に舞う浮遊物やお湯自体の色がよく目立っていました。

お湯の色が「よく目立ってい」ると申し上げたところでこちらのお湯のインプレッションを述べますと、その色はごく薄い麦茶色の透明で、湯中には茶色やコゲ茶色の浮遊物がチラホラ見られます。泉質名こそ単純泉ですが、溶存物質が0.975g/kgですからギリギリのところで単純泉という名称に甘んずるを得ない状況となっているわけで、主たる成分は重曹と食塩でありますから実質的には「ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉」と同等であり、とりわけこのお湯では重曹の特徴がよく出ており、お湯に入るとツルツルスベスベの気持ち良い浴感に包まれ、30秒ほどで全身に気泡が付着しました。完全かけ流しですが、加温や加水をせずとも42~3℃という絶妙な湯加減が維持されており、爽快な浴感とともにこの温度も自然も恵みと言えましょう。お湯からは鉱物油的な匂いと新鮮金気臭、そして金気味と重曹的ほろ苦みに微かな塩気が感じられ、湯口やシャワーからはこれに加えてほんのりタマゴ感も得られました。

モール泉にも似た重曹泉らしい軽やかな浴感と香り、マイルドで上品な肌触りの良さ、そして湯使いの良さ、いずれも素晴らしいものがあり、余多ある古町温泉エリアのお湯でも屈指ではないかと思われます。源泉名こそ隣接する大規模ホテルの名称を冠していますが、源泉自体はこちらのお宿の敷地内になるんだそうでして、贅沢な湯使いができるのもそんな事情のおかげなのでしょう。本格旅館並みのホスピタリティと素晴らしいお湯によって、ブリリアントな一晩を過ごすことができました。しかも料金は民宿並でとってもリーズナブル。今回は次回以降の記事で紹介する目的のため、どうしても当地で一泊したかったのですが、そんな事情の如何を問わず、日帰りせずに宿泊して本当に良かった! 


紀州鉄道塩原温泉源泉
単純温泉 46.8℃ pH7.5 186.8L/min(掘削自噴) 溶存物質0.975g/kg 成分総計0.996g/kg
Na+:196.9mg(79.93mval%), Ca++:25.8mg(12.03mval%), Mg++6.4mg,
Cl-:135.2mg(35.01mval%), HS-:0.2mg, SO4--:55.9mg(10.68mval%), HCO3-:357.3mg(53.74mval%),
H2SiO3:157.0mg, HBO2:26.5mg, CO2:20.5mg, H2S-:0.1mg,

塩原温泉バスターミナルより徒歩9分(800m)
栃木県那須塩原市塩原1055  地図
0287-32-2043
ホームページ

日帰り入浴時間要確認
300円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★

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2 コメント

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Unknown (転勤族)
2018-02-17 14:13:03
K-Iさん、こんにちは。

念願叶って本陣さんに宿泊してきました!
さすがK-Iさんが十傑にノミネートされるお宿だけあって、温泉はもちろんお食事もお酒も素晴らしかったです!!
私事ですが、来月から東北へ転勤します。
K-Iさんも以前青森にお住まいだったようで何だか不思議な縁を感じますね。
不安だらけですが、K-Iさんの紹介された温泉をトレースすることを生甲斐に頑張ります。
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Unknown (K-I)
2018-02-19 21:55:17
転勤族さん、こんばんは。
こちらのお宿に泊まったのはもう4~5年前ですが、いまでもはっきりと好印象なお宿として記憶しています。決して豪華ではなく、民宿という名の通りに家庭的なのですが、それでいて上品であり、心配りも素晴らしく、そして何よりもお湯が良いんですよね。
久しぶりに再訪したくなりました。
来月から東北へ転勤なさるとのこと。みちのくでは、おそらく温泉が身近にあるかと思いますので、お湯に浸かって疲れを癒しながら頑張ってください。今後ともよろしくお願いいたします
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