温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

筋湯温泉 せんしゃく湯

2014年09月30日 | 大分県
 
(上画像クリックで拡大)
筋湯温泉に4つある共同浴場のうち、「せんしゃく湯」だけはなぜかパンフレットや案内マップ・標識など、観光客が目にする案内類から、その存在が消されてしまっています。具体例を挙げれば、温泉街に立つ上画像のイラストマップ。温泉街の各施設や店舗などに対してはきちんと名称が付けられており、共同浴場に対しては湯浴みしている吹き出し調イラストも描かれているのですが、「せんしゃく湯」だけは吹き出し調イラストのみがあるだけで、浴場名が記載されていません(マップ下部の川沿いです)。
数年前まではちゃんと案内されていたのですが、何かあったのでしょうか。もしかして、取り壊されちゃった? それともまだ残っている? 案内から消えてしまい、幻の湯と化しつつある「せんしゃく湯」の現状を確認したく、現地へ行ってまいりました。


 
バス停や「辛川荘本館」の前から路地に入って、荒れた坂道を下り、既に閉鎖されて廃墟となっている「辛川荘別館」の前を通過します。


 
階段路地はコンクリで舗装されているのですが、歩く人が少なくて管理がされていないのか、ただでさえ細い路地は、路傍に茂る雑草が迫って余計に道幅を狭めており、コンクリの隙間からも草が伸びて、路面を覆い尽くそうとしています。早い話、廃道状態です。坂を下りきって廃墟の裏手へ回ると、藪が繁って日中でも薄暗い箇所には水が溜まってぬかるんでいたのですが、ぬかるみを越すように心細い板が渡されていたので、踏抜きに注意しながらその上を渡って奥へ進みました。


 
ぬかるみを通り越した先には「せんしゃく湯」の湯屋が健在でした。なんだぁ…、ちゃんと残ってるじゃん。よかった! でも建物の周りは雑草が生え放題ですし、その上を杉の枝葉がだらしなく覆いかぶさっています。廃墟にありがちな、管理放棄状態。ということは、入口の扉には施錠されているかもしれない。諦め半分で引き戸に手をかけたところ・・・


 
意外にも戸はスンナリと開き、岩風呂にお湯を湛える浴室が目の前に現れました。観光客を意識して黒川温泉に似たようなモダン和風のシックな装いとなった他の共同浴場と異なり、この「せんしゃく湯」は昔ながらの湯治場風情を残したお風呂でして、浴室がひとつしかないため混浴であり、しかも脱衣ゾーンと入浴ゾーンが一体化している昔ながらのレイアウトです。といっても建物自体は決して古いわけではありません。下足場横の壁には、平成16年に発行された「温泉公共浴用利用許可済票」がやや傾きながらも掲示されていました。


 
ガラス窓は一部が割れており、しかも窓サッシが開きっぱなし。料金箱も凹んでいます。でも棚の傍にがゴミ箱が置かれており、その内側には真新しいビニール袋がゴミ受けとしてセッティングされていました。しかも室内の片隅には掃除道具が立てかけられています。ということは、廃墟然としているものの、いまだにお風呂として利用されているのでしょう。確かに、やや埃っぽいものの、窓が開きっぱなしであるわりには、室内にはゴミひとつ落ちていませんし、蜘蛛の巣も張られていません。どなたかによって管理され続けていることは明白です。


 
湯船は岩風呂でおおよそ4人サイズ。槽内の奥まった箇所より泡を上げながらお湯が投入されており、浴槽の左右両側にある切り欠けから大量に排湯されています。その溢れ出るお湯の様子から推測するに、相当な量の源泉が絶え間なく注がれているようです。でも湯船では40℃あるかないかというぬるめの湯加減でして、もし加水等が無いのにこの温度でしたら、冬の入浴はちょっと厳しいかもしれません(当地は積雪するほど冷え込みますからね)。

見た目は無色透明なのですが、浴槽内の岩は赤銅色に染まっており、そのビジュアルから受ける予想通りに、お湯を口にすると弱い金気の味と匂いが感じられました。あっさりとした癖のないお湯が多い筋湯温泉にあって、このような個性ある金気のお湯は珍しいかもしれませんね。

どのような理由で現状のような姿となり、なぜその存在が案内類から消えてしまったのか、その辺りの事情はよくわかりませんが、ひとまず「せんしゃくの湯」は今でも存在しており、しかもお湯もきちんと張られ続けていることが確認できました。今後この浴場はどのような運命をたどるのでしょうか。このまま本当に幻の湯となってしまうのでしょうか。


温泉分析表掲示なし

大分県玖珠郡九重町大字湯坪
(地図による場所の特定は、念のため控えさせていただきます)

私の好み:今回は評価せず


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2 コメント

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どうも。 (辛川理彩)
2016-04-17 22:19:24
どうも、辛川です。持ち主の孫です。私でも今まで知らなかったことをシェアしていただき、ありがとうございます。私も子供の頃はあの別荘辺りを探検していたのですが。また、行ってみたいなーと思います。ところで、2014年、、本館ももう閉まっていましたよ、私たちが住んでいただけで(笑)
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Unknown (K-I)
2016-04-17 23:27:08
辛川さん、コメントをありがとうございます。まさか親族の方からかつてのお話を伺えるとは思わず、大変うれしく思っております。小さなころはあの辺りで遊んでいらしたんですね。都会育ちの私にとっては、子供時代の生活と温泉がリンクしている想い出って、とっても羨ましいです(隣の芝生は青く見える、ということなのかもしれませんが)。

>本館
あれ、そうでしたか。いい加減なことを書いてしまって失礼しました。訂正しておきます(汗)
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